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軍事同盟
二国の未来
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「では、食後に運動というのもなんですし、しばらくしてから手合わせ願いましょうか」
食事を終え、王が執務室に向かってしまってから、ジンホはリョンへに提案した。
「そうだな。ではそれまでは…」
「私とお話をいたしませんか」
どうすべきか、とこれからの予定を考えていたリョンヘを、ジンホは再び誘う。少しずつではあるが、ハヨンはジンホの人柄について少しわかってきたような気がする。慣れてくると、彼は割と積極的に関わりを持とうとする質のようだ。
「そうだな。特にすることもないし…。ハヨンはどうする」
「私は…お供してもよろしいですか?」
ハヨンも他の兵士達との打ち合わせなどもないし、リョンへの護衛が第一の仕事なので、二人の邪魔にならないかと一瞬気が引けたが、おずおずと申し出た。
「構わない。この面々ならば武道について語り合うことができるな」
ジンホは微笑んだ。その表情は随分と柔らかく、ハヨンも嬉しくなる。彼のことを知れば知るほど、知りたいという気持ちが沸いてくる。こういった性質は、もしかすると民を導く者にとって大事なことかもしれない。
「では私の執務室でも構わないか?」
「ああ。」
「失礼いたします」
ハヨンたちはジンホの後について行く。廊下は少しひんやりしていた。先程の広間は暖かく工夫されていたが、廊下は窓も小さい上に石造りなので、日が差し込みにくく、真冬になれば寒さが厳しいだろう。しかし床は深紅の絨毯が敷かれており、そんな雰囲気に相対する形になっている。どこか異国からの物なのか金色の刺繍で独特な模様が施されていた。
「ここが私の執務室だ。」
ジンホが足を止め、そう告げる。彼の前には大きな岩でできた扉があった。
(豪華な造りだけど…。重くはないのかな。)
その岩の扉は、大自然にそびえ立つ、大岩のようにごつごつとしている。もしや彼の腕力の秘訣は、この扉のおかげなのかも知れない。などと、ハヨンは妙な考えが頭の中に浮かんだ。
ジンホに続いて執務室に入ると、彼の執務室も、岩壁がむき出しの状態だった。燐の城の、王子の執務室などはとても色彩華やかなのだが、ここは一切そういったものがない。執務室には調度品などもあまり置かれておらず、剣が何振りか壁に掛けられている。少し殺風景にも見えたが、無駄な物がない、彼らしいとも言える内装だ。
「ホン、椅子を三つ出してくれ」
「かしこまりました」
ジンホが執務室に控えていた側仕えに運ぶよう指示する。ジンホとリョンヤンの二人が椅子に座り、ハヨンは立って話を聞こうとした。
「ハヨン殿も座ったらどうだ。」
「いや…。私は王子を護る護衛ですので、お気になさらず。」
もし座ったとしても、ハヨンは王子に混じって話すことになり、落ち着かないので、こうやって後ろに控えながら話を聞いた方が良い。
二人から一歩下がったところに立っていると、窓から夏を告げる、草の匂いが混じった爽やかな風が通り抜け、ハヨンの頬に涼やかな空気が当たる。この国の気候は割と涼しい地域のようで、とても過ごしやすい。
「この国は今の季節が一番快適なんだな。風が気持ち良い」
「ああ、そうだな。他国の豪商や貴族の奥方などが時折避暑に来たりする。」
「それは驚いた。なら、滓は観光も栄えているのだな。」
ハヨンも父が生きていた頃はそれなりに裕福ではあったが、そのような時間はなかったし、母と二人で暮らしていた頃は、旅をして回るような金の余裕は全くと言ってなかったため、そのような人もいるのだ、と驚いた。
「いや。これが、夏場はいいのだが、冬場はここ一帯雪が積もるからな。」
「それもそうだ。年中同じ気候の国など、珍しいしな。」
「しかし、我が国と交易のある国のいくつかには、年中暑いところもあるらしい。」
「それは、滓へ避暑に来る人達には、行きにくい国だな」
リョンヘがにやりと笑みを浮かべてそう言った。どうやらそこ避暑する奥方たちが、常夏の国へ行ったところを想像したのだろう。
ハヨンは初めてそのような場所があるのを知り、この世には己が想像もできないような国が存在しているのかと、想いを馳せる。きっと、文化も何もかもが違う国なのだろう。
「逆に訊きたいのだが、燐についてはどう思う?」
にやにやと笑うのをやめたリョンヘが、ジンホに尋ねる。軽い口ぶりではあったものの、目は真剣な光を宿している。燐に対する客観的な意見を聴きたいのだろう。
ハヨン自身も、他国の王子がこの国をどう思っているのかは気になっていたので、少し緊張した。ハヨンにとっては燐の国が全てで、故郷だ。
「知っての通り、先日私は初めて燐を訪れたが…。荒れた土地などもあるにはあったが、自然を愛し、生きる姿を見て、美しい国だと思った。王都では塵一つ落ちていなかったし、親を失くした子犬を気にかけている者がいたり、動物を狩りすぎないよう、国全体で法があるのも知った。」
そのジンホの口ぶりから、彼は燐を訪れた際、この国にとても興味を持ち、民の生活までしっかりと見ようとしていたことがわかった。
ちらりとリョンヘを見ると、彼の表情は柔らかで、彼もハヨン同様、嬉しいのだと見て取れた。
食事を終え、王が執務室に向かってしまってから、ジンホはリョンへに提案した。
「そうだな。ではそれまでは…」
「私とお話をいたしませんか」
どうすべきか、とこれからの予定を考えていたリョンヘを、ジンホは再び誘う。少しずつではあるが、ハヨンはジンホの人柄について少しわかってきたような気がする。慣れてくると、彼は割と積極的に関わりを持とうとする質のようだ。
「そうだな。特にすることもないし…。ハヨンはどうする」
「私は…お供してもよろしいですか?」
ハヨンも他の兵士達との打ち合わせなどもないし、リョンへの護衛が第一の仕事なので、二人の邪魔にならないかと一瞬気が引けたが、おずおずと申し出た。
「構わない。この面々ならば武道について語り合うことができるな」
ジンホは微笑んだ。その表情は随分と柔らかく、ハヨンも嬉しくなる。彼のことを知れば知るほど、知りたいという気持ちが沸いてくる。こういった性質は、もしかすると民を導く者にとって大事なことかもしれない。
「では私の執務室でも構わないか?」
「ああ。」
「失礼いたします」
ハヨンたちはジンホの後について行く。廊下は少しひんやりしていた。先程の広間は暖かく工夫されていたが、廊下は窓も小さい上に石造りなので、日が差し込みにくく、真冬になれば寒さが厳しいだろう。しかし床は深紅の絨毯が敷かれており、そんな雰囲気に相対する形になっている。どこか異国からの物なのか金色の刺繍で独特な模様が施されていた。
「ここが私の執務室だ。」
ジンホが足を止め、そう告げる。彼の前には大きな岩でできた扉があった。
(豪華な造りだけど…。重くはないのかな。)
その岩の扉は、大自然にそびえ立つ、大岩のようにごつごつとしている。もしや彼の腕力の秘訣は、この扉のおかげなのかも知れない。などと、ハヨンは妙な考えが頭の中に浮かんだ。
ジンホに続いて執務室に入ると、彼の執務室も、岩壁がむき出しの状態だった。燐の城の、王子の執務室などはとても色彩華やかなのだが、ここは一切そういったものがない。執務室には調度品などもあまり置かれておらず、剣が何振りか壁に掛けられている。少し殺風景にも見えたが、無駄な物がない、彼らしいとも言える内装だ。
「ホン、椅子を三つ出してくれ」
「かしこまりました」
ジンホが執務室に控えていた側仕えに運ぶよう指示する。ジンホとリョンヤンの二人が椅子に座り、ハヨンは立って話を聞こうとした。
「ハヨン殿も座ったらどうだ。」
「いや…。私は王子を護る護衛ですので、お気になさらず。」
もし座ったとしても、ハヨンは王子に混じって話すことになり、落ち着かないので、こうやって後ろに控えながら話を聞いた方が良い。
二人から一歩下がったところに立っていると、窓から夏を告げる、草の匂いが混じった爽やかな風が通り抜け、ハヨンの頬に涼やかな空気が当たる。この国の気候は割と涼しい地域のようで、とても過ごしやすい。
「この国は今の季節が一番快適なんだな。風が気持ち良い」
「ああ、そうだな。他国の豪商や貴族の奥方などが時折避暑に来たりする。」
「それは驚いた。なら、滓は観光も栄えているのだな。」
ハヨンも父が生きていた頃はそれなりに裕福ではあったが、そのような時間はなかったし、母と二人で暮らしていた頃は、旅をして回るような金の余裕は全くと言ってなかったため、そのような人もいるのだ、と驚いた。
「いや。これが、夏場はいいのだが、冬場はここ一帯雪が積もるからな。」
「それもそうだ。年中同じ気候の国など、珍しいしな。」
「しかし、我が国と交易のある国のいくつかには、年中暑いところもあるらしい。」
「それは、滓へ避暑に来る人達には、行きにくい国だな」
リョンヘがにやりと笑みを浮かべてそう言った。どうやらそこ避暑する奥方たちが、常夏の国へ行ったところを想像したのだろう。
ハヨンは初めてそのような場所があるのを知り、この世には己が想像もできないような国が存在しているのかと、想いを馳せる。きっと、文化も何もかもが違う国なのだろう。
「逆に訊きたいのだが、燐についてはどう思う?」
にやにやと笑うのをやめたリョンヘが、ジンホに尋ねる。軽い口ぶりではあったものの、目は真剣な光を宿している。燐に対する客観的な意見を聴きたいのだろう。
ハヨン自身も、他国の王子がこの国をどう思っているのかは気になっていたので、少し緊張した。ハヨンにとっては燐の国が全てで、故郷だ。
「知っての通り、先日私は初めて燐を訪れたが…。荒れた土地などもあるにはあったが、自然を愛し、生きる姿を見て、美しい国だと思った。王都では塵一つ落ちていなかったし、親を失くした子犬を気にかけている者がいたり、動物を狩りすぎないよう、国全体で法があるのも知った。」
そのジンホの口ぶりから、彼は燐を訪れた際、この国にとても興味を持ち、民の生活までしっかりと見ようとしていたことがわかった。
ちらりとリョンヘを見ると、彼の表情は柔らかで、彼もハヨン同様、嬉しいのだと見て取れた。
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