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軍事同盟
異なる文化
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岩造りでできた厳しい門をくぐるとすぐに、広場のような開けた場所があった。その広場も岩を加工して、地面に敷き詰めており、燐の王城とは趣が全く異なっている。
「ようこそお越しくださいました。予定としては、本日はもう日も暮れそうなので、ゆっくりお休みになられてください。」
ジンホと従者達は、広場に整列していた。武器は有していないものの、正装に身を固めた体格のいい者たちが、石畳と堅牢な城が後ろにそびえ立つ景色は、凄まじく威圧を感じる。
「これから世話になります」
輿からおりたリョンへは、その雰囲気に呑まれもせず、にこやかに返す。リョンへの姿で笑顔を見せるのは、今までのことを考えると珍しいことかもしれない。
「ハヨン殿もよく来られた。また一度手合わせ願おうか」
「はい、よろしくお願いします」
ジンホの後ろに控える従者の中にはハヨンを珍しそうに見ている者もいた。ハヨンの印象次第で、この国の女人の対応もまた変わってくるのだ、と気がついた。しっかりと自身の役目を果たし、この国の女性が過ごしやすいようにして欲しいと考えると、しゃんと背筋が伸びる。
その後は、案内された部屋に各々が入り、休むことになったが、なんとハヨンは同行した兵士とは棟の違う、貴族や貴族と同等の身分を持つ来賓の部屋があてがわれていた。その上リョンへとは隣の部屋である。リョンへの護衛がしやすい場所だからだろう。
荷物を置き、護衛をするためにリョンへの部屋へ急いで向かう。ハヨンが部屋にいるあいだ見張りを頼んでいた入り口にいた兵士に礼を言い、ハヨンは戸を叩く。
「リョンへ様。ハヨンが参りました。入ってもよろしいでしょうか。」
「かまわない。入れ」
ハヨンが入ると、リョンへは物珍しそうに部屋のあちこちを見て回っていた。さすがにハヨンの部屋よりも何倍も豪華で、部屋の彫刻一つ一つが精巧な技術で彫られており、この国の技術の高さを物語っている。
「やはり同じ大陸とは言えど、国の境を跨げば趣が全く違うな」
友好な関係を築いている国といえど、どこで誰が聞いているかわからない。ましてや他国なので、リョンへは一切口調を和らげることはない。ハヨンもリョンへにあわせる。
「そうですね。町の家屋も少し違っていましたし、興味がつきません」
部屋のあちこちを見て回る彼の姿は純粋な子供のようで、彼の幼いおりを垣間見た気持ちになった。
(なんだろう、何かみたことがあるな)
ハヨンはそんな不思議な思いにとらわれたがその原因が何かはわからなかった。
しかし、彼が部屋の様子を見ていくうちに、だんだんと表情は硬いものとなった。
「ハヨン、私たちは滓のほんの一部を垣間見ただけだ。しかし、それだけでも滓は軍事の技術が抜きん出ていることや、痩せた土地でも工業で生きていけることがわかる…。いくら隣国のこととして学んで知っていたことは言え、実際に見るのとでは大違いだ。」
リョンヘは、不作が続いている燐との違いを身に染みて感じているのだろう。ハヨンも城に入る前の生活と、この国の様子を見れば、滓の方が人々の身なりも良いように思える。
「しかし、この国は軍事によって栄えていますよね…?燐はそういった特色が無いように思うんですが…。」
「ああ、滓のように特出したものが栄えている国では無い。それぞれの気候に応じて、農業や漁業、商業がほぼ均整に栄えている。ただ、最近は皆知っていると思うが、旱魃のせいで不作で、それに応じて商業も落ちている。」
ハヨンは近年の異常気象で、作物がほとんど取れない地域があることは知っていたが、商業にも影響が出ているのは知らなかった。しかし、確かに考えてみれば、その作物を売る商業がともに衰退するのは自然なことだ。
「逆に滓はほとんどの地域で作物は実らない。ただ、鉱物は豊富だ。それに、どこの国も、軍事というのは重要だ。だから、武器などを作って他国に売ることで利益を得ている。しかも、鉱物というのは他国では貴重だから、売値も高い。」
ハヨンはなるほど、と頷いた。確かに、鎧や刀も高価で、ほとんどの平民は城から戦の際に支給されるものしか持っていない。そんな代物を大量に作って、他国に売りつけられるのだから、収入は多いだろう。
「燐は何か他国に売りにできるものは無いのですか?」
「酒などは人気で、よく他国に行商に行く者もいる。ただ、そういったものは全て、作物がな…。」
ハヨンはそう聞いて、少し気落ちした。自身の国を愛しているからこそ、他国と張り合えるような何かを持って欲しかった、と思ってしまうのだ。もしかすると、リョンヘもそんなことを考えていて、表情が暗かったのかもしれない。
「これから、何か他にも売りに出来るものがないか、帰ったら調べる必要があるかもしれませんね。」
ハヨンがそう言うと、リョンヘがああ、と頷く。異国の文化に触れることで、新たな発見があったのは、リョンヘにも燐の民のためにも良いことなので、明日もリョンヘがしっかりと滓のことを知れるように、護衛をしなければ、とハヨンは気合を入れ直すのだった。
「ようこそお越しくださいました。予定としては、本日はもう日も暮れそうなので、ゆっくりお休みになられてください。」
ジンホと従者達は、広場に整列していた。武器は有していないものの、正装に身を固めた体格のいい者たちが、石畳と堅牢な城が後ろにそびえ立つ景色は、凄まじく威圧を感じる。
「これから世話になります」
輿からおりたリョンへは、その雰囲気に呑まれもせず、にこやかに返す。リョンへの姿で笑顔を見せるのは、今までのことを考えると珍しいことかもしれない。
「ハヨン殿もよく来られた。また一度手合わせ願おうか」
「はい、よろしくお願いします」
ジンホの後ろに控える従者の中にはハヨンを珍しそうに見ている者もいた。ハヨンの印象次第で、この国の女人の対応もまた変わってくるのだ、と気がついた。しっかりと自身の役目を果たし、この国の女性が過ごしやすいようにして欲しいと考えると、しゃんと背筋が伸びる。
その後は、案内された部屋に各々が入り、休むことになったが、なんとハヨンは同行した兵士とは棟の違う、貴族や貴族と同等の身分を持つ来賓の部屋があてがわれていた。その上リョンへとは隣の部屋である。リョンへの護衛がしやすい場所だからだろう。
荷物を置き、護衛をするためにリョンへの部屋へ急いで向かう。ハヨンが部屋にいるあいだ見張りを頼んでいた入り口にいた兵士に礼を言い、ハヨンは戸を叩く。
「リョンへ様。ハヨンが参りました。入ってもよろしいでしょうか。」
「かまわない。入れ」
ハヨンが入ると、リョンへは物珍しそうに部屋のあちこちを見て回っていた。さすがにハヨンの部屋よりも何倍も豪華で、部屋の彫刻一つ一つが精巧な技術で彫られており、この国の技術の高さを物語っている。
「やはり同じ大陸とは言えど、国の境を跨げば趣が全く違うな」
友好な関係を築いている国といえど、どこで誰が聞いているかわからない。ましてや他国なので、リョンへは一切口調を和らげることはない。ハヨンもリョンへにあわせる。
「そうですね。町の家屋も少し違っていましたし、興味がつきません」
部屋のあちこちを見て回る彼の姿は純粋な子供のようで、彼の幼いおりを垣間見た気持ちになった。
(なんだろう、何かみたことがあるな)
ハヨンはそんな不思議な思いにとらわれたがその原因が何かはわからなかった。
しかし、彼が部屋の様子を見ていくうちに、だんだんと表情は硬いものとなった。
「ハヨン、私たちは滓のほんの一部を垣間見ただけだ。しかし、それだけでも滓は軍事の技術が抜きん出ていることや、痩せた土地でも工業で生きていけることがわかる…。いくら隣国のこととして学んで知っていたことは言え、実際に見るのとでは大違いだ。」
リョンヘは、不作が続いている燐との違いを身に染みて感じているのだろう。ハヨンも城に入る前の生活と、この国の様子を見れば、滓の方が人々の身なりも良いように思える。
「しかし、この国は軍事によって栄えていますよね…?燐はそういった特色が無いように思うんですが…。」
「ああ、滓のように特出したものが栄えている国では無い。それぞれの気候に応じて、農業や漁業、商業がほぼ均整に栄えている。ただ、最近は皆知っていると思うが、旱魃のせいで不作で、それに応じて商業も落ちている。」
ハヨンは近年の異常気象で、作物がほとんど取れない地域があることは知っていたが、商業にも影響が出ているのは知らなかった。しかし、確かに考えてみれば、その作物を売る商業がともに衰退するのは自然なことだ。
「逆に滓はほとんどの地域で作物は実らない。ただ、鉱物は豊富だ。それに、どこの国も、軍事というのは重要だ。だから、武器などを作って他国に売ることで利益を得ている。しかも、鉱物というのは他国では貴重だから、売値も高い。」
ハヨンはなるほど、と頷いた。確かに、鎧や刀も高価で、ほとんどの平民は城から戦の際に支給されるものしか持っていない。そんな代物を大量に作って、他国に売りつけられるのだから、収入は多いだろう。
「燐は何か他国に売りにできるものは無いのですか?」
「酒などは人気で、よく他国に行商に行く者もいる。ただ、そういったものは全て、作物がな…。」
ハヨンはそう聞いて、少し気落ちした。自身の国を愛しているからこそ、他国と張り合えるような何かを持って欲しかった、と思ってしまうのだ。もしかすると、リョンヘもそんなことを考えていて、表情が暗かったのかもしれない。
「これから、何か他にも売りに出来るものがないか、帰ったら調べる必要があるかもしれませんね。」
ハヨンがそう言うと、リョンヘがああ、と頷く。異国の文化に触れることで、新たな発見があったのは、リョンヘにも燐の民のためにも良いことなので、明日もリョンヘがしっかりと滓のことを知れるように、護衛をしなければ、とハヨンは気合を入れ直すのだった。
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