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おもてなし
到来
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滓の第二王子の訪問の日、リョンヤンとハヨンを含めた専属護衛の3人がリョンヤンの執務室に集まっていた。
「今日は気を引き締めていきましょう。」
「はい」
リョンヤンの専属護衛であるハヨンたち3人は、威勢良く応える。滓国の第二王子は今のこの燐の国ではとても重要人物だ。何としてでも、この国に対して良い印象を持ってもらいたい。
その上、敬愛する主人であるリョンヤンが主に彼をもてなすのだ。彼の接待が上手く行くように励まなければ、と三人共が意気込んでいた。
ハヨンは専属護衛の中でも特別に、接待の一人としてリョンヤンに付き従うこととなっている。あまりにも重要な役目で、昨夜は緊張のあまり、なかなか寝付けなかった。
(あまりにも緊張していたら、足元を見られてしまうかな…)
ハヨンはそのようなことが起きないようにと様々な場面を想定して、どのように対処するのか考えてきたが、やはりそんなものでは緊張はおさまらない。
「誰だって初めては必ず経験します。それがあなたの場合早かっただけです。それにあなたは私の立派な護衛です。十分この役割を全うできます。心配いりませんよ。」
ハヨンの青い顔を見たからか、リョンヤンがそういいながら笑いかけた。緊張していたことを知られて、少し恥ずかしい。ハヨンとリョンヤンはそう歳も変わらないのに、この落ち着きはどう身についたのだろうか。
「はい。」
ハヨンは思わず顔を赤くてしまい、耳が熱い。
「では行きましょう。昼食が終わったら交代ですので、忘れないでくださいね。」
一人はハヨンと共にリョンヤンについて行き、他の警備を任されていたもう一人の隊員にリョンヤンは声をかける。
「はい」
そして、その専属護衛の1人の彼はハヨンとすれ違い様に肩に手を置き、
「頑張れよ。お前ならやれる。」
と声をかけた。
「はいっ。ありがとうございます」
いつもは無愛想な先輩だったが、心優しい面をちらほらと見せてくれる時がある。ハヨンはそれがとてもうれしい。
(…頑張ろう。)
ハヨンはリョンヤンと共に王子を迎えるために城の門へと出向く。
ジンホ王子を出迎える門は、勿論城の正門で、最も大きい。縁起のいいとされている朱塗りの門は、太陽に照らされて光っている。
ジンホ王子一行を出迎える城の者たちは、門から城までの間に整列している。来客の通る邪魔にならぬよう、間隔を空けて、きっちりと並ぶ様は、物々しい雰囲気を醸し出していた。
ハヨンは門から整列した人々の一番奥の、リョンヤンの斜め後ろに立っているので、全体がよく見える。
(王族の方がご覧になってる景色は、こんな感じなのか…)
ハヨンとしてはこのような光景は慣れないし、人々がきちんと並んでいるのは異様にも思える。これを毎日見ていれば、慣れてしまうのだろうか。そんなことを考えていると、遠くから馬の嘶く音が聞こえた。ハヨンははっとして、居住まいを正す。
(来た…)
ゆっくりと扉が開かれ、現れた一団は、皆体格が良く、屈強な男たちばかりだった。馬が隊列をなし、歩調を少しも乱さずに歩く姿は美しかった。
そのような中でも一番目を引いたのは、やはりジンホ王子だ。滓国の正装なのだろうか。異国風で、深い海の色を思い浮かべるような呉須色の服はジンホの精悍な顔つきを際立たせていた。そしてジンホの乗る白い馬は、その衣に良く映えた。
「ようこそお越しくださいました。ジンホ殿。」
馬から降り立った滓の第二王子にリョンヤンはそう出迎える。王子ならば疲れぬよう牛車などで訪れてもおかしくは無いのだが、馬に乗ってやって来たのは、やはり武術の盛んな国だからだろうか。
「いえ、こちらこそお招きいただきまことにありがとうございます。」
ジンホの固い言葉と表示に、ハヨンはリョンヤンには無いものを感じる。
リョンヤンは柔らかい雰囲気を纏っており、人びとの争いをやんわりといさめたり、波風立てること無く物事を進めるので、穏和な印象だ。
逆にジンホは体格もよく、よく日焼けした顔はまさに戦士の顔そのものといった様子だ。その上何があったのかは知らないが、彼の右腕に白い古傷が走っている。
二人とも正反対の性格のように思えるのでハヨンはこの二人の馬があうようには思えなかった。
「はい。まず長旅でお疲れでしょう。部屋を用意いたしましたので、疲れをおとりください。」
そうリョンヤンは笑顔を見せながら言うと、ジンホは
「少し失礼。」
と言って彼の後ろに控える一団のもとへ向かう。
王子の話をた断ち切ってまで話すこととは何だ、と側に控えていたリョンヤンの従者達が少しいぶかしげな表情に変わるのをハヨンは見てしまう。
少ししてソンホが戻ってきたとき、
「他の者にも尋ねましたが、誰も疲れておりません。もしよろしければ予定を早めてはいただけ無いだろうか。」
この言葉にリョンヤン側の従者達は面食らった。お互いに顔を見合わせて、何か言いたげに、少し口を開く。しかし、何といえばいいのかわからなかったのだろう。そのまま再び口を閉ざした。
いつもハヨンに嫌味を言う文官その中にもいたので、その間の抜けた表情を見て、ハヨンはくすりと笑いそうになってしまう。慌てて表情を引き締めた。
「今回の訪問は、ただの視察ではない。リョンヤン殿と話し合いたいことがある。申し訳ないのだが、予定通りに進めることは難しい」
どうやら一波乱有りそうな様子で、燐の国側の従者の皆が不安な様子を見せるのだった。
「今日は気を引き締めていきましょう。」
「はい」
リョンヤンの専属護衛であるハヨンたち3人は、威勢良く応える。滓国の第二王子は今のこの燐の国ではとても重要人物だ。何としてでも、この国に対して良い印象を持ってもらいたい。
その上、敬愛する主人であるリョンヤンが主に彼をもてなすのだ。彼の接待が上手く行くように励まなければ、と三人共が意気込んでいた。
ハヨンは専属護衛の中でも特別に、接待の一人としてリョンヤンに付き従うこととなっている。あまりにも重要な役目で、昨夜は緊張のあまり、なかなか寝付けなかった。
(あまりにも緊張していたら、足元を見られてしまうかな…)
ハヨンはそのようなことが起きないようにと様々な場面を想定して、どのように対処するのか考えてきたが、やはりそんなものでは緊張はおさまらない。
「誰だって初めては必ず経験します。それがあなたの場合早かっただけです。それにあなたは私の立派な護衛です。十分この役割を全うできます。心配いりませんよ。」
ハヨンの青い顔を見たからか、リョンヤンがそういいながら笑いかけた。緊張していたことを知られて、少し恥ずかしい。ハヨンとリョンヤンはそう歳も変わらないのに、この落ち着きはどう身についたのだろうか。
「はい。」
ハヨンは思わず顔を赤くてしまい、耳が熱い。
「では行きましょう。昼食が終わったら交代ですので、忘れないでくださいね。」
一人はハヨンと共にリョンヤンについて行き、他の警備を任されていたもう一人の隊員にリョンヤンは声をかける。
「はい」
そして、その専属護衛の1人の彼はハヨンとすれ違い様に肩に手を置き、
「頑張れよ。お前ならやれる。」
と声をかけた。
「はいっ。ありがとうございます」
いつもは無愛想な先輩だったが、心優しい面をちらほらと見せてくれる時がある。ハヨンはそれがとてもうれしい。
(…頑張ろう。)
ハヨンはリョンヤンと共に王子を迎えるために城の門へと出向く。
ジンホ王子を出迎える門は、勿論城の正門で、最も大きい。縁起のいいとされている朱塗りの門は、太陽に照らされて光っている。
ジンホ王子一行を出迎える城の者たちは、門から城までの間に整列している。来客の通る邪魔にならぬよう、間隔を空けて、きっちりと並ぶ様は、物々しい雰囲気を醸し出していた。
ハヨンは門から整列した人々の一番奥の、リョンヤンの斜め後ろに立っているので、全体がよく見える。
(王族の方がご覧になってる景色は、こんな感じなのか…)
ハヨンとしてはこのような光景は慣れないし、人々がきちんと並んでいるのは異様にも思える。これを毎日見ていれば、慣れてしまうのだろうか。そんなことを考えていると、遠くから馬の嘶く音が聞こえた。ハヨンははっとして、居住まいを正す。
(来た…)
ゆっくりと扉が開かれ、現れた一団は、皆体格が良く、屈強な男たちばかりだった。馬が隊列をなし、歩調を少しも乱さずに歩く姿は美しかった。
そのような中でも一番目を引いたのは、やはりジンホ王子だ。滓国の正装なのだろうか。異国風で、深い海の色を思い浮かべるような呉須色の服はジンホの精悍な顔つきを際立たせていた。そしてジンホの乗る白い馬は、その衣に良く映えた。
「ようこそお越しくださいました。ジンホ殿。」
馬から降り立った滓の第二王子にリョンヤンはそう出迎える。王子ならば疲れぬよう牛車などで訪れてもおかしくは無いのだが、馬に乗ってやって来たのは、やはり武術の盛んな国だからだろうか。
「いえ、こちらこそお招きいただきまことにありがとうございます。」
ジンホの固い言葉と表示に、ハヨンはリョンヤンには無いものを感じる。
リョンヤンは柔らかい雰囲気を纏っており、人びとの争いをやんわりといさめたり、波風立てること無く物事を進めるので、穏和な印象だ。
逆にジンホは体格もよく、よく日焼けした顔はまさに戦士の顔そのものといった様子だ。その上何があったのかは知らないが、彼の右腕に白い古傷が走っている。
二人とも正反対の性格のように思えるのでハヨンはこの二人の馬があうようには思えなかった。
「はい。まず長旅でお疲れでしょう。部屋を用意いたしましたので、疲れをおとりください。」
そうリョンヤンは笑顔を見せながら言うと、ジンホは
「少し失礼。」
と言って彼の後ろに控える一団のもとへ向かう。
王子の話をた断ち切ってまで話すこととは何だ、と側に控えていたリョンヤンの従者達が少しいぶかしげな表情に変わるのをハヨンは見てしまう。
少ししてソンホが戻ってきたとき、
「他の者にも尋ねましたが、誰も疲れておりません。もしよろしければ予定を早めてはいただけ無いだろうか。」
この言葉にリョンヤン側の従者達は面食らった。お互いに顔を見合わせて、何か言いたげに、少し口を開く。しかし、何といえばいいのかわからなかったのだろう。そのまま再び口を閉ざした。
いつもハヨンに嫌味を言う文官その中にもいたので、その間の抜けた表情を見て、ハヨンはくすりと笑いそうになってしまう。慌てて表情を引き締めた。
「今回の訪問は、ただの視察ではない。リョンヤン殿と話し合いたいことがある。申し訳ないのだが、予定通りに進めることは難しい」
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