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剣士の休日
医術師の彼 弐
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「任務の関係かあんまり仕事について文には書いていなかったが、どうだ?」
「うーん、それが恐ろしいぐらいに順調なんです。今はリョンヤン王子の専属護衛をしてます」
ヒョンテの淹れた茶が入った茶器を眺めながら話す。まだ茶は淹れたてのためか、啜る程度にしか飲めない。
「リョンヤン様はお体が少し弱い方なんですが、あまり視察や他国に訪問できないかわりに城内でのことを良く仕切っていらっしゃいますよ。宰相と一緒に」
「へぇ。そう言えばリョンヘ様の顔は何度か見たことがあるが。リョンヤン様は一度も拝見したことがないなぁ。」
リョンヘはリョンとしてだけでなく、王子としてもよく町の視察に来ているので、町の人々からもよく知られていた。
だからリョンヤンは城内での支持が、リョンヘは平民達からの支持が厚い。そのためか両者の支持者がいがみ合い、リョンヘの支持者が有力貴族の暗殺計画をしたり、リョンヘの支持者が多い町を治める貴族が町の人々に重い税をかけたり、リョンヤンへの忠誠を誓わせようと重圧をかけたりすることも珍しくはない。
二人は双子でしかもお互いを大事に思っているのとは裏腹に、自分達の支持者が原因でお互いの命を脅かしてしまうのだ。
「ヒョンテさんはどちらの王子の支持をするんですか?」
「うーん、俺は特には決めていないな。なるべくしてなる者がなるんだろ。じゃあ一番近くで王子を見ていらっしゃる王が一番わかっていらっしゃるんだから、俺達が決めることではないしな。」
ハヨンはほっとした。どちらが王位継承者としてふさわしいか、皆が議論する様子を見ていると、なぜもやもやと悩んでしまうのかもヒョンテの言葉で理解した。そうだ、この国の王は、先代の王によって決められるのだ。
「私もそう思います。政策が関わってくると立場などは違ってきますが、お二人はとても良いお方なんです。だからお二人が危険な目に遭うたびに悲しくなるんです。」
武術や城から縁遠いヒョンテだったからか、ハヨンは勢いよく城ではあまり口に出せないようなことも言ってしまった。
「…そうか。お前は本当に自分の主を大事に思っているんだな。ただの雇い主と割りきって、城での自分の仕事に関係の無いことには首つっこまないか、もしくは主は二の次で自分の目当てのものにがめつく行くやつも多いのにな。」
「関係の無いこと?」
ハヨンにとって、リョンヘとリョンヤンの立場については、関係のないことではなかった。
ヒョンテの言葉は、思わず怒ってしまいそうになる。しかし、彼は時折言葉選びが悪い時があり、その上悪気はないので、しっかりと真意を聴かなければならないのだ。そのことを覚えていたため、ハヨンは問い返す。
「そうだ。お前はリョンヤン様の警護をするという表向きの契約は結んでいるが、リョンヘ様のことは口約束なんだろ?本当はそんなのリョンヤン様にはちゃんとやっているように誤魔化して、適当にやったって証拠が無いから誰にも文句言われたりしない。それでもお前がどちらの警護をしようとするのは、リョンヤン様が大事で、頼まれたことを守りたいし、リョンヘ様のことも大事だからだろ?」
そして相変わらず説明を求めるとこの男は長々と話す。ハヨンはその膨大な言葉を聞いて考える。
「うーん、そうですね。それにリョンヘ様とも個人的に繋がりがあるので、もしかしたら頼まれなくても守ろうと考えたかもしれないです」
リョンヘが奇妙な事件に巻き込まれやすい質なのはいずれ知れただろうし、自分の友人を守れないのは歯痒い。リョンヤンがリョンヘのことを早く教えてくれたので、ハヨンはリョンヤンに感謝していた。
「でもあまりしょいこみ過ぎるなよ。自分の容量を超えたらすべての事が手につかなくなる。」
「はい。」
そうやって心配する所は、なんだかヨウと似ていてハヨンは心の中で微笑む。ヨウは頭より先に体が動く男なので、ヒョンテとは全く違った人なのだと思っていたが、大事に思っていてくれる人は同様に心配するらしい
「もしもだぞ、もし仮にお前がけがをしたら、その時一回だけただで診てやる。まぁ無いことを願うがな。」
帰り際、ヒョンテはそう冗談めかしてそう言った。
「ありがとうございます。せいぜい怪我をしないよう頑張ります。」
ハヨンはそう言って笑いながらヒョンテの元を去ったのだった。
「うーん、それが恐ろしいぐらいに順調なんです。今はリョンヤン王子の専属護衛をしてます」
ヒョンテの淹れた茶が入った茶器を眺めながら話す。まだ茶は淹れたてのためか、啜る程度にしか飲めない。
「リョンヤン様はお体が少し弱い方なんですが、あまり視察や他国に訪問できないかわりに城内でのことを良く仕切っていらっしゃいますよ。宰相と一緒に」
「へぇ。そう言えばリョンヘ様の顔は何度か見たことがあるが。リョンヤン様は一度も拝見したことがないなぁ。」
リョンヘはリョンとしてだけでなく、王子としてもよく町の視察に来ているので、町の人々からもよく知られていた。
だからリョンヤンは城内での支持が、リョンヘは平民達からの支持が厚い。そのためか両者の支持者がいがみ合い、リョンヘの支持者が有力貴族の暗殺計画をしたり、リョンヘの支持者が多い町を治める貴族が町の人々に重い税をかけたり、リョンヤンへの忠誠を誓わせようと重圧をかけたりすることも珍しくはない。
二人は双子でしかもお互いを大事に思っているのとは裏腹に、自分達の支持者が原因でお互いの命を脅かしてしまうのだ。
「ヒョンテさんはどちらの王子の支持をするんですか?」
「うーん、俺は特には決めていないな。なるべくしてなる者がなるんだろ。じゃあ一番近くで王子を見ていらっしゃる王が一番わかっていらっしゃるんだから、俺達が決めることではないしな。」
ハヨンはほっとした。どちらが王位継承者としてふさわしいか、皆が議論する様子を見ていると、なぜもやもやと悩んでしまうのかもヒョンテの言葉で理解した。そうだ、この国の王は、先代の王によって決められるのだ。
「私もそう思います。政策が関わってくると立場などは違ってきますが、お二人はとても良いお方なんです。だからお二人が危険な目に遭うたびに悲しくなるんです。」
武術や城から縁遠いヒョンテだったからか、ハヨンは勢いよく城ではあまり口に出せないようなことも言ってしまった。
「…そうか。お前は本当に自分の主を大事に思っているんだな。ただの雇い主と割りきって、城での自分の仕事に関係の無いことには首つっこまないか、もしくは主は二の次で自分の目当てのものにがめつく行くやつも多いのにな。」
「関係の無いこと?」
ハヨンにとって、リョンヘとリョンヤンの立場については、関係のないことではなかった。
ヒョンテの言葉は、思わず怒ってしまいそうになる。しかし、彼は時折言葉選びが悪い時があり、その上悪気はないので、しっかりと真意を聴かなければならないのだ。そのことを覚えていたため、ハヨンは問い返す。
「そうだ。お前はリョンヤン様の警護をするという表向きの契約は結んでいるが、リョンヘ様のことは口約束なんだろ?本当はそんなのリョンヤン様にはちゃんとやっているように誤魔化して、適当にやったって証拠が無いから誰にも文句言われたりしない。それでもお前がどちらの警護をしようとするのは、リョンヤン様が大事で、頼まれたことを守りたいし、リョンヘ様のことも大事だからだろ?」
そして相変わらず説明を求めるとこの男は長々と話す。ハヨンはその膨大な言葉を聞いて考える。
「うーん、そうですね。それにリョンヘ様とも個人的に繋がりがあるので、もしかしたら頼まれなくても守ろうと考えたかもしれないです」
リョンヘが奇妙な事件に巻き込まれやすい質なのはいずれ知れただろうし、自分の友人を守れないのは歯痒い。リョンヤンがリョンヘのことを早く教えてくれたので、ハヨンはリョンヤンに感謝していた。
「でもあまりしょいこみ過ぎるなよ。自分の容量を超えたらすべての事が手につかなくなる。」
「はい。」
そうやって心配する所は、なんだかヨウと似ていてハヨンは心の中で微笑む。ヨウは頭より先に体が動く男なので、ヒョンテとは全く違った人なのだと思っていたが、大事に思っていてくれる人は同様に心配するらしい
「もしもだぞ、もし仮にお前がけがをしたら、その時一回だけただで診てやる。まぁ無いことを願うがな。」
帰り際、ヒョンテはそう冗談めかしてそう言った。
「ありがとうございます。せいぜい怪我をしないよう頑張ります。」
ハヨンはそう言って笑いながらヒョンテの元を去ったのだった。
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