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宴にて交わされるのは杯か思惑か
得体の知れない敵 弐
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「私は他にも気になることがあるのですが、彼はなぜ火傷を負っていたのですか?誰も発火物となるようなものはなかったでしょう?」
黙りこくって、この怪奇の気味悪さを感じていると、ハイルがハヨンに問いを投げかけた。
従者が発火物を持ち込んで、自ら火を浴びたのであれば、捨て身での計画で自殺するつもりだったのだと説明がつく。しかし、彼は王に献上する宝刀と自身の主人を守る刀しか携えていなかった。何も火種は無かったにも関わらず、彼が火傷を負ったのはなぜだったのか。
「いえ、それが急に辺りが眩しくなって思わず目を閉じてしまったんです。そのあと目を開けたら彼は火傷を負って意識を失っていました。辺りに火種となるものも焦げたような跡もなく、彼だけに火が触れたようです。」
「おかしなことだらけだな。そしてその光というのは?」
「わかりません。」
またもや三人とも黙りこんだ。
「今回のことは謎が多すぎる。よく不可解な事件が起こるが、一向に謎が解けない。」
ヘウォンは難しいことは嫌いだ、と頭をかきむしる。そのことを聞いて、ハヨンはリョンヤンが言っていた、奇妙な事件がよくあるという言葉を思い出した。
「何か大きなものが裏で動いているとしか思えませんね。」
ハイルは静かに答えた。
ハヨンはふと、光をみたときあまりの眩しさに驚きはしたが、何か懐かしい気持ちがあったことを思い出した。
(なぜだろうあんなに眩しくて怪しいものだったのに…。)
「…四獣のご加護か。」
ヘウォンは暫くの間黙りこんで考えていたが、そう呟く。ハヨンとハイルは突然のことだったので首をかしげた。
「四獣とは、あの朱雀、玄武、白虎、青龍のことですか。」
国の神話として知られている神の友である獣。この国の王を守るために地に降り立ち、そのまま姿をくらました伝説の生き物だと教えられてきた。
「ああ。」
ぶっ、とハイルが吹き出す。ハヨンは思い切り笑っているハイルの姿が物珍しかった。
「まさかヘウォンさん、本気であの神話信じてるんですか?」
ハイルがついに堰を切ったように笑いだした。ヘウォンはその反応に不満げな顔を隠しきれていない。
「逆に聞くけどなんでお前はあの話を信じていないんだ?」
「…なんでって?だってあまりにも現実味が無いじゃないですか。」
ハイルの声は笑いをこらえているのか震えていた。どうやら笑いすぎたらしく涙を拭いていた。もともと温和な印象はあったが、こんなに笑い上戸なのは初めて見たので、ハヨンは印象を改めねば、と考える。
「現実味が無いだって?じゃあ、陛下達が獣を操っているのはどう思っているんだ?」
「あれは操る技術みたいな物が伝承されているのではないんですか?もしくは獣の習性をわきまえて、何かを使って操るとか。」
(なるほど、そういう考えもできるのか…)
ハヨンは今まで、神話について深く考えたことがなかった。四獣を深く信仰し、国教に近いものも存在している。四獣は特に信じている・信じていないなどのように深く考えたことはないが、王族は獣を操る不思議な力を持っているというのは信じている。
(だって七つくらいのときに動物の生態を知っていて操れる人なんているのかなぁ。)
とハヨンは自身が助けられた過去のことを思い出して、ハイルに異を唱えたかったが、王族の関わることなので秘密にしておこうと黙っておく。
「とりあえずだ!俺は城には王族や城を守るために四獣がどこかに潜んでいると思う。お前は笑うかもしれんが、これでやつが火傷を負うことも説明がつくだろう?」
「…それはまぁ、そうですが。」
なんとも突飛な結論ですね、と苦虫を噛んだような顔をするハイル。彼はどこまでも現実的に物事を考えたい性格のようだ。
三人で話し合ったが、結局その光は王族に害をなすものでないということで一致した。
気がつくと窓からさす光が蜜色に変化し、ハヨンたちの顔を優しく照らしている。
「おっと、そろそろ宿舎に戻る時間だな。」
ヘウォンが立ち上がったので、二人もそれにならう。
「よくわからないこともあったが、ただ一つ言えることは、お前達がよくやったと言うことだ。」
部屋の寝台に寝かされている二人の隊員とハヨンを優しく見ながらヘウォンはそう笑った。ハヨンは謎が多いこの襲撃によって、自身が役目を果たせたという実感があまり無かったのだが、ヘウォンの言葉で少し達成感が湧いてきた。
「なんせ死人がでなかった上に、俺たちの究極の使命である暗殺者が王族の方達に指一本触れさせられないようにできたからな。」
よくやったとハヨンはヘウォンに頭を勢い良く頭を撫でられ、髪が酷く乱れる。しかし彼の手は温かく大きかった。
(父さんが生きていたらこんなことをしてくれただろうか)
ハヨンは十年前にこの世を去った父のことを咄嗟に思い浮かべたのだった。
黙りこくって、この怪奇の気味悪さを感じていると、ハイルがハヨンに問いを投げかけた。
従者が発火物を持ち込んで、自ら火を浴びたのであれば、捨て身での計画で自殺するつもりだったのだと説明がつく。しかし、彼は王に献上する宝刀と自身の主人を守る刀しか携えていなかった。何も火種は無かったにも関わらず、彼が火傷を負ったのはなぜだったのか。
「いえ、それが急に辺りが眩しくなって思わず目を閉じてしまったんです。そのあと目を開けたら彼は火傷を負って意識を失っていました。辺りに火種となるものも焦げたような跡もなく、彼だけに火が触れたようです。」
「おかしなことだらけだな。そしてその光というのは?」
「わかりません。」
またもや三人とも黙りこんだ。
「今回のことは謎が多すぎる。よく不可解な事件が起こるが、一向に謎が解けない。」
ヘウォンは難しいことは嫌いだ、と頭をかきむしる。そのことを聞いて、ハヨンはリョンヤンが言っていた、奇妙な事件がよくあるという言葉を思い出した。
「何か大きなものが裏で動いているとしか思えませんね。」
ハイルは静かに答えた。
ハヨンはふと、光をみたときあまりの眩しさに驚きはしたが、何か懐かしい気持ちがあったことを思い出した。
(なぜだろうあんなに眩しくて怪しいものだったのに…。)
「…四獣のご加護か。」
ヘウォンは暫くの間黙りこんで考えていたが、そう呟く。ハヨンとハイルは突然のことだったので首をかしげた。
「四獣とは、あの朱雀、玄武、白虎、青龍のことですか。」
国の神話として知られている神の友である獣。この国の王を守るために地に降り立ち、そのまま姿をくらました伝説の生き物だと教えられてきた。
「ああ。」
ぶっ、とハイルが吹き出す。ハヨンは思い切り笑っているハイルの姿が物珍しかった。
「まさかヘウォンさん、本気であの神話信じてるんですか?」
ハイルがついに堰を切ったように笑いだした。ヘウォンはその反応に不満げな顔を隠しきれていない。
「逆に聞くけどなんでお前はあの話を信じていないんだ?」
「…なんでって?だってあまりにも現実味が無いじゃないですか。」
ハイルの声は笑いをこらえているのか震えていた。どうやら笑いすぎたらしく涙を拭いていた。もともと温和な印象はあったが、こんなに笑い上戸なのは初めて見たので、ハヨンは印象を改めねば、と考える。
「現実味が無いだって?じゃあ、陛下達が獣を操っているのはどう思っているんだ?」
「あれは操る技術みたいな物が伝承されているのではないんですか?もしくは獣の習性をわきまえて、何かを使って操るとか。」
(なるほど、そういう考えもできるのか…)
ハヨンは今まで、神話について深く考えたことがなかった。四獣を深く信仰し、国教に近いものも存在している。四獣は特に信じている・信じていないなどのように深く考えたことはないが、王族は獣を操る不思議な力を持っているというのは信じている。
(だって七つくらいのときに動物の生態を知っていて操れる人なんているのかなぁ。)
とハヨンは自身が助けられた過去のことを思い出して、ハイルに異を唱えたかったが、王族の関わることなので秘密にしておこうと黙っておく。
「とりあえずだ!俺は城には王族や城を守るために四獣がどこかに潜んでいると思う。お前は笑うかもしれんが、これでやつが火傷を負うことも説明がつくだろう?」
「…それはまぁ、そうですが。」
なんとも突飛な結論ですね、と苦虫を噛んだような顔をするハイル。彼はどこまでも現実的に物事を考えたい性格のようだ。
三人で話し合ったが、結局その光は王族に害をなすものでないということで一致した。
気がつくと窓からさす光が蜜色に変化し、ハヨンたちの顔を優しく照らしている。
「おっと、そろそろ宿舎に戻る時間だな。」
ヘウォンが立ち上がったので、二人もそれにならう。
「よくわからないこともあったが、ただ一つ言えることは、お前達がよくやったと言うことだ。」
部屋の寝台に寝かされている二人の隊員とハヨンを優しく見ながらヘウォンはそう笑った。ハヨンは謎が多いこの襲撃によって、自身が役目を果たせたという実感があまり無かったのだが、ヘウォンの言葉で少し達成感が湧いてきた。
「なんせ死人がでなかった上に、俺たちの究極の使命である暗殺者が王族の方達に指一本触れさせられないようにできたからな。」
よくやったとハヨンはヘウォンに頭を勢い良く頭を撫でられ、髪が酷く乱れる。しかし彼の手は温かく大きかった。
(父さんが生きていたらこんなことをしてくれただろうか)
ハヨンは十年前にこの世を去った父のことを咄嗟に思い浮かべたのだった。
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