華の剣士

小夜時雨

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新たな任務

話を聞いて 弐

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「ヘウォンから聞きました。あなたも宴会に参加されるんですね。」

  最近予定に公務を詰め込みすぎていたリョンヤンに、ついに宰相も耐えきれなくなったらしい。ヘウォンの公務を一切請け負うので、休息をとるようにと執務室から追い出された。
  そんなこんなでハヨンとリョンヤンは珍しく、中庭に出てゆっくりとした時間を過ごしていた。

「そうですが、私はただ、護衛する身として、そして刺客を欺くためにいるだけです。ですので酒も飲みませんし、食事もほんの少ししか口にしませんよ。」
「そうなんですか。てっきり私は私の親族があなたを気に入ったかと思っていたのですが。」

  リョンヤンは自信の指先にとまる小鳥を撫でながら、穏やかに笑っている。

(普段はそんな力とか見たことなかったけど、やっぱり伝説は本当なんだよね…。)

  彼の手に乗っている小鳥は、彼が呼び出して飛んできたものだ。10年前にある王子に助けられた時にも見たので、これで2度目である。しかし、やはり思い通りに獣を扱うというのは見慣れないものなので、奇妙な気分だ。

「気に入られるってそんなまさか。」
「いやいや、父上はあなたのことを大した者だとお褒めになっておられましたよ。それに、リョンヘとも仲が良いではありませんか。ですからてっきり誰かに招待されたものだと…」
「リョンヘ様と…!そんな、誤解ですよ。」

  ハヨンは声が少し上ずり、なんて白々しいと自分に心のなかで舌打ちした。

「ふふっ、そんな慌てずとも。リョンヘもあなたには気を許しているようで、私はうれしいんですよ。」

  リョンと二人で、友達ということは隠しておこうと決めていたが、リョンヤンにはどれ程見透かされているのか。ハヨンは冷や汗が止まらなかった。

「そういえば、女性で兵士とは珍しいとは思っていましたが、なぜ兵士を目指したのか訳を教えてはくれませんか?前から聞きたいとは思っていたのですが、そんな機会がなくて、今さらというような感じですが。」

  王族と関わりを持ちたいなら、女性の場合、女官が多いですし。とリョンヤンは先程の会話から頭の中でそちらに興味が移っていたようだった。

(本当のことを話してもいいだろうか。もしかしたら気を悪くなさるかもしれない。それに、誰かというのが確定しない今ではなんとも言えないし…。リョンヤン様とリョンヘ様は私が助けてもらった方によく似ていらっしゃる。もしかしたら…。)

ハヨンの迷いに気づいたのか、リョンヤンは

「ハヨン、どうかしましたか?もしかすると、私にその話をするのは嫌ですか?」

と尋ねてくる。

「嫌ではないのです。ただ、少し申し上げにくいことなのです。もしかするとお気にさわるかもしれません。それでも構いませんか?」
「いいですよ、あなたはいつも礼儀正しい人です。今日のちょっとしたこと位、目を瞑れます。それに、あなたは悪意のあることは出来ない人です。私はあなたを信じています。」

  リョンヤンは優しくて包容力のある人だ。彼なら怒らないかもしれない、と見越して許可を願ったが、上手くいって良かったとハヨンはほっとした。

「今から10年ほど前になります。私の母が流行病(はやりやまい)に倒れて、私は貧しいながらも必死に薬を手に入れました。そしてその道すがら、容姿の珍しさからか人買いに拐われそうになりまして。その時にある方に助けていただいたのです。その方は王家の剣を携え、獣を操る私とそう年の変わらない方でした。」

  リョンヤンの驚きが、ハヨンに伝わってくる。何と返されるだろう、と高鳴る鼓動を息を吸って鎮めながら話を続ける。

「私は母の命と私の身を守ってくださった方に感謝しております。その方にご恩を返すために白虎に身を置くことにしたのです。」
「…ハヨンはその少年を誰と見当をつけているのです?」

リョンヤンの言葉に、ハヨンはさらに緊張が高まった。

「まだわかりません。10年という歳月は重いです。人の様々なものを変えるで、誰とは本人から教えていただくまではなんとも…。」
「すみません、多分その少年はとりあえず私でもリョンヘでも無いことは請け合います。」
「…そうなんですか…。」

  二人の容貌はあの少年の面影がかいまみえたので、この二人のどちらかでは、とハヨンは期待していたのだが、そう聞いて少し落胆してしまった。









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