38 / 221
リョンヤン王子
1日を終えて
しおりを挟む
「ハヨン!お疲れ様、どうだった?専属護衛。」
今日割り当てられたリョンヤン王子の護衛を終えて、白虎の武道場に戻ると、ドマンが開口一番そう尋ねてきた。
「うーん、初日だからかリョンヤン王子の講義を受けておられる時間だけだったから、特にたいしたことは…。」
「なんか不服そうだな。」
「そりゃそうだよ!だってほぼリョンヤン様の講義を見学していたようなものだもの。」
ガンハンの言葉にハヨンはくってかかるように応える。
「でも最初の仕事はそんなものだよ。俺達が入隊したときは掃除ばっかりだったようにね。」
ドマンはまぁまぁ、となだめにかかった。ハヨンはふてくされながらも、周りをみると、この時間の割には人が多く、暇をもて余しているようにも見える。
「ねえ、今日何かあるの?」
「ああ、俺達新隊員は、少しの間、各領主のもとに行って、実地訓練するんだ。多分、既に専属護衛することになったハヨンは違うと思うけど。」
「…白虎って王族の専属護衛と、城内警備だよね?なんでまた地方に…。」
そんな話、誰からも聞いていなかった。もしかするとハヨンがリョンヤンの専属護衛となったために、各部隊の長などに報告するなどで慌ただしかったからかもしれない。
「将来護衛として王族の方と領主様のところに訪問する場合があるだろう?その時、反乱や他国が攻め入ったとき逃げるための経路を確認したり、そのついでにその地方の様子を伝えることになってるんだ。逃げるときには山道を使うとか、わかってる方が断然いいし、領主が人民に信頼されているかも知っといた方がいいからな。」
ガンハンが丁寧に教えてくれる。あまりにも淀みなく話すので、ハヨンは感心した。
「ガンハンって、滅多にない座学、結構楽しんでいるよね。もしかして役人の方が向いてるんじゃない?」
ドマンがそう言うと、ガンハンは馬鹿を言え、と返す。
「これは白虎に関係あるから覚えられるんだ。もし役人のあの難しい試験…なんだったっけ?」
「科挙。」
確かに軍関係はからきしらしい。ほぼ常識と言えるようなことを忘れていたので、ハヨンとドマンは呆れながら一緒に答えた。
「そう、それだ。それに受かる気もしないし、政治のことを難しく言われてもわかんねぇならなぁ。座学なら、やる気も出るんだけど…。」
「でももしかしたらガンハン、座学が強かったら、将来どこに衛兵の数を割くかとか考えるの強くなりそうだね。もしかしたら指揮官とかむいてるかもよ。」
ヘウォンの補佐をしながら共に作戦を練る彼の姿を思い浮かべる。
「指揮官ねぇ…」
ガンハンもまんざらではないようだ。
「でもまずはお前に追い付くことが先だな。」
「そうだよね、同期に先を越されるのは悔しい!」
ドマンも同意する。
「それに全然昇進できなかったら、2年目でも3年目でも研修に行くことになるからね。」
言われてみれば、ハヨンよりも年上の隊員が大半で、ハヨンが専属護衛となれたのは幸運だったことが改めて思い知らされた。
「いつか、一緒に護衛できる日が来たらいいな。」
「できるよ、ドマンなら。」
熱を込めて話すドマンに、ハヨンは頷いてみせた。ガンハンのように体格が恵まれている訳でもないが、器用なドマンは、体術、剣術に優れている。ハヨンは何度も彼が居残って練習している姿を見てきた。彼ならきっと、己の夢を叶えることができるだろう。
「みんな集まっているかー。」
その時、ヘウォンがガラリと武道場の戸を開けた。みな一斉に喋るのを止め、姿勢を正す。
「じゃあ一週間後の実地訓練について説明するぞ。」
みなは、ヘウォンの説明に聞き入り始めた。
今日割り当てられたリョンヤン王子の護衛を終えて、白虎の武道場に戻ると、ドマンが開口一番そう尋ねてきた。
「うーん、初日だからかリョンヤン王子の講義を受けておられる時間だけだったから、特にたいしたことは…。」
「なんか不服そうだな。」
「そりゃそうだよ!だってほぼリョンヤン様の講義を見学していたようなものだもの。」
ガンハンの言葉にハヨンはくってかかるように応える。
「でも最初の仕事はそんなものだよ。俺達が入隊したときは掃除ばっかりだったようにね。」
ドマンはまぁまぁ、となだめにかかった。ハヨンはふてくされながらも、周りをみると、この時間の割には人が多く、暇をもて余しているようにも見える。
「ねえ、今日何かあるの?」
「ああ、俺達新隊員は、少しの間、各領主のもとに行って、実地訓練するんだ。多分、既に専属護衛することになったハヨンは違うと思うけど。」
「…白虎って王族の専属護衛と、城内警備だよね?なんでまた地方に…。」
そんな話、誰からも聞いていなかった。もしかするとハヨンがリョンヤンの専属護衛となったために、各部隊の長などに報告するなどで慌ただしかったからかもしれない。
「将来護衛として王族の方と領主様のところに訪問する場合があるだろう?その時、反乱や他国が攻め入ったとき逃げるための経路を確認したり、そのついでにその地方の様子を伝えることになってるんだ。逃げるときには山道を使うとか、わかってる方が断然いいし、領主が人民に信頼されているかも知っといた方がいいからな。」
ガンハンが丁寧に教えてくれる。あまりにも淀みなく話すので、ハヨンは感心した。
「ガンハンって、滅多にない座学、結構楽しんでいるよね。もしかして役人の方が向いてるんじゃない?」
ドマンがそう言うと、ガンハンは馬鹿を言え、と返す。
「これは白虎に関係あるから覚えられるんだ。もし役人のあの難しい試験…なんだったっけ?」
「科挙。」
確かに軍関係はからきしらしい。ほぼ常識と言えるようなことを忘れていたので、ハヨンとドマンは呆れながら一緒に答えた。
「そう、それだ。それに受かる気もしないし、政治のことを難しく言われてもわかんねぇならなぁ。座学なら、やる気も出るんだけど…。」
「でももしかしたらガンハン、座学が強かったら、将来どこに衛兵の数を割くかとか考えるの強くなりそうだね。もしかしたら指揮官とかむいてるかもよ。」
ヘウォンの補佐をしながら共に作戦を練る彼の姿を思い浮かべる。
「指揮官ねぇ…」
ガンハンもまんざらではないようだ。
「でもまずはお前に追い付くことが先だな。」
「そうだよね、同期に先を越されるのは悔しい!」
ドマンも同意する。
「それに全然昇進できなかったら、2年目でも3年目でも研修に行くことになるからね。」
言われてみれば、ハヨンよりも年上の隊員が大半で、ハヨンが専属護衛となれたのは幸運だったことが改めて思い知らされた。
「いつか、一緒に護衛できる日が来たらいいな。」
「できるよ、ドマンなら。」
熱を込めて話すドマンに、ハヨンは頷いてみせた。ガンハンのように体格が恵まれている訳でもないが、器用なドマンは、体術、剣術に優れている。ハヨンは何度も彼が居残って練習している姿を見てきた。彼ならきっと、己の夢を叶えることができるだろう。
「みんな集まっているかー。」
その時、ヘウォンがガラリと武道場の戸を開けた。みな一斉に喋るのを止め、姿勢を正す。
「じゃあ一週間後の実地訓練について説明するぞ。」
みなは、ヘウォンの説明に聞き入り始めた。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説


【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる