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リョンヤン王子
専属護衛として
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寅時(午前3時から5時ごろのこと)、ハヨンはいつも通りの時間に目覚めた。食事や朝の訓練の前に、自主練習をするためだ。そしていつもの通り中庭を通ってぐるりと城内を1周しようと走り始める。
(今日からリョンヤン王子の専属護衛か…。実感がわかない…。)
専属護衛と言えど、王以外の王族は大抵二人は専属護衛がいる。ハヨンは新人の上、もともとリョンヤン王子には二人の専属護衛がついていたので、三人目である。
今日一日の予定を確認しながら走っていると、後ろから誰かが走っている足音がした。
「誰だ!」
警戒して振り返ると、悪戯っぽい笑みを浮かべたリョンだった。
「久しぶりだな、ハヨン。相変わらずあんたは俺のことを侵入者扱いするんだな?」
「…怪しい動きをするリョンが悪い。それにしても新しい恋人でもできたの?この前から全然姿を見てなかったのは、恋人にふられたからと思っていたけど。」
もしかすると何か怪しいことをしていたのかもしれない。少し困らせてやろうと尋ねるが、リョンは顔色一つ変えなかった。
「ちがうちがう。ある地方の領主様に招待されてね。そこで俺の演奏を披露していたのさ。」
その上喋り終えた後の、この羨ましいだろう?といった余裕のある表情に、私は尋問に向いていないのかな、とハヨンは自信をなくす。
「それにしても俺がいない間にあんた、大活躍だったらしいな。俺の耳にも届いた。」
「相変わらず耳が速いのね。」
「そりゃそうさ。俺の手にかかれば誰だってくちが軽くなって話してしまうんだからな。」
とハヨンが話術が下手だと気にしていたことを、ついてくるようなことを言ってくるので、ハヨンは彼を1発殴ってもいいだろうか、と暴力的な考えがちらとよぎった。
「それにしてもそうかそうかー。リョンヤン王子の専属護衛の座に登るなんて大出世だなぁ。」
感無量と言わんばかりに、リョンはうんうんとうなずいているが、ハヨンはある疑問を持った。
「リョン、なんで重要事項だから各隊の上層部と、王族しか知らない、しかも昨日決まったことを知っているの?」
これはさすがに見逃せないことだ。
「まさか恋人って王族の人だなんてことは…。」
「まさか!そんなことないよ。ただ、知り合いが教えてくれたんだ。」
それは随分と口の軽い知り合いね、とハヨンが言えば、リョンは少し焦った表情を見せた。何しろこんな機密情報を迂闊に話したとなれば、罰せられる可能性もあるのだ。これは、リョンが初めて見せたぼろかもしれない。
「ま、まぁ!それは置いておいて。これからまた、あんたへの周りからの当たりが強くなるかもしれない。気をつけろよ。」
「…。それ、どう言うこと?」
隊の先輩達からの嫌がらせも無くなり、むしろ認められていると最近感じていたのに。ハヨンにはさっぱりわからない話だ。
「今まで女官達はなにもしてこなかったか?」
「うん。と言うかほとんど関わりないし。」
食事や風呂が一緒になる程度で、他に行動を共にすることは何もない。会っても挨拶を交わす程度だ。そういったことをリョンに告げる。
「ふーん、何もなかったのなら逆に怖いな。」
「ねえ、なんで私が嫌がらせを受けることがさも決まってるように言うの。」
「ん?そりゃ、女の嫉妬ってのは怖いからだよ。」
リョンの言葉に、どこかで彼は女の嫉妬を受けるようなことをしたのだろう、とハヨンは眉をひそめた。
(今日からリョンヤン王子の専属護衛か…。実感がわかない…。)
専属護衛と言えど、王以外の王族は大抵二人は専属護衛がいる。ハヨンは新人の上、もともとリョンヤン王子には二人の専属護衛がついていたので、三人目である。
今日一日の予定を確認しながら走っていると、後ろから誰かが走っている足音がした。
「誰だ!」
警戒して振り返ると、悪戯っぽい笑みを浮かべたリョンだった。
「久しぶりだな、ハヨン。相変わらずあんたは俺のことを侵入者扱いするんだな?」
「…怪しい動きをするリョンが悪い。それにしても新しい恋人でもできたの?この前から全然姿を見てなかったのは、恋人にふられたからと思っていたけど。」
もしかすると何か怪しいことをしていたのかもしれない。少し困らせてやろうと尋ねるが、リョンは顔色一つ変えなかった。
「ちがうちがう。ある地方の領主様に招待されてね。そこで俺の演奏を披露していたのさ。」
その上喋り終えた後の、この羨ましいだろう?といった余裕のある表情に、私は尋問に向いていないのかな、とハヨンは自信をなくす。
「それにしても俺がいない間にあんた、大活躍だったらしいな。俺の耳にも届いた。」
「相変わらず耳が速いのね。」
「そりゃそうさ。俺の手にかかれば誰だってくちが軽くなって話してしまうんだからな。」
とハヨンが話術が下手だと気にしていたことを、ついてくるようなことを言ってくるので、ハヨンは彼を1発殴ってもいいだろうか、と暴力的な考えがちらとよぎった。
「それにしてもそうかそうかー。リョンヤン王子の専属護衛の座に登るなんて大出世だなぁ。」
感無量と言わんばかりに、リョンはうんうんとうなずいているが、ハヨンはある疑問を持った。
「リョン、なんで重要事項だから各隊の上層部と、王族しか知らない、しかも昨日決まったことを知っているの?」
これはさすがに見逃せないことだ。
「まさか恋人って王族の人だなんてことは…。」
「まさか!そんなことないよ。ただ、知り合いが教えてくれたんだ。」
それは随分と口の軽い知り合いね、とハヨンが言えば、リョンは少し焦った表情を見せた。何しろこんな機密情報を迂闊に話したとなれば、罰せられる可能性もあるのだ。これは、リョンが初めて見せたぼろかもしれない。
「ま、まぁ!それは置いておいて。これからまた、あんたへの周りからの当たりが強くなるかもしれない。気をつけろよ。」
「…。それ、どう言うこと?」
隊の先輩達からの嫌がらせも無くなり、むしろ認められていると最近感じていたのに。ハヨンにはさっぱりわからない話だ。
「今まで女官達はなにもしてこなかったか?」
「うん。と言うかほとんど関わりないし。」
食事や風呂が一緒になる程度で、他に行動を共にすることは何もない。会っても挨拶を交わす程度だ。そういったことをリョンに告げる。
「ふーん、何もなかったのなら逆に怖いな。」
「ねえ、なんで私が嫌がらせを受けることがさも決まってるように言うの。」
「ん?そりゃ、女の嫉妬ってのは怖いからだよ。」
リョンの言葉に、どこかで彼は女の嫉妬を受けるようなことをしたのだろう、とハヨンは眉をひそめた。
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