30 / 221
城内警備
初任務 弐
しおりを挟む
「では私たちは奥で準備を…」
「団長!待ってください!ヒョヌンの姿がありません!」
「なにっ!あいつどこに行った…。」
どうやら誰か楽団の一人がいないようだ。しかし、そんなことに気をとられている場合ではない。自分の仕事は皆の命を守ることなのだから。そう考え直して、当たりに視線を巡らす。
「おや、どうかされたのですか?」
どうやら王子と来賓の一行は到着してしまったようだ。
「申し訳ありません!我々の到着が遅れてしまったのです。その上どうやら踊り手がいないようで…。」
団長が慌てて説明をする。
「いやはや、リョンヤン殿下。どうされますかな?」
異国の衣を纏った、来賓らしき者が、端整な顔立ちの青年に声をかける。どうやら彼がリョンヤン王子のようだ。
「踊り手がいなくとも、演奏はできるでしょう。彼が来るまでは演奏だけでお願いします。」
リョンヤン王子がそう言った時だった。ハヨンは何かの気配を察した。しかしそれが何かはわからない。
ハヨンがはっと我に返ったとき、ハヨンはリョンヤン王子の前に立ち、どこからか飛んできた矢を刀で弾き返した後だった。
「…!侵入者か!」
一瞬静まり返った後、辺りは騒然となる。
「どこからだ!」
「あの高さから見ると、地面から二間(約3m60㎝)以上の高さからいられたぞ!」
(ここ辺りで二間…。)
そのとき強風が吹き、ハヨンの目の端に映る大木に何かがひらりと動いた。周りの者もそれを見逃すはずがない。警備についたものが一斉に大木を取り囲んだ。しかし彼らが手にしている武器は槍や刀で、大木でも随分と上の方に居座る敵には届かない。かといって木登りをして上に行こうとすれば、殺されかねない。どうしたものかと皆が頭を抱えた。
(あれなら届くかな…。)
懐に入れて常に持ち歩いていた、ヨウから貰った四角い暗器にそっと触れる。時間を見つけては練習していたので、なんとか正確に投げることはできるようになった。しかし今回は的ではない。人間なので、弾き返すこともあるし、避けることもある。
ハヨンは目を閉じて集中した。
「すみません、危ないですよっ!」
と他の兵士に声をかけながら暗器を2つ続けて投げる。
1つ目は弾き返されたが、どうやら2つ目は反応が遅れたらしい。
「うっ」
と呻き声が聞こえた。そしてこのまま木の上に居座り続けるのも危険だと思ったらしい。木の上から飛び下り、一目散に駆けていく。手負いのはずなのになかなかの速度で走っていて、ハヨンは舌を巻いた。
「ヒョンジェ、ギュシャ、ウンユン、追いかけろ!奴は手負いだ。絶対に追い付け!」
「はい!」
三人が一斉に追いかけるなか、ここの警備隊の責任者であるガドンは避難させていた王子と来賓達に近づき、
「お怪我はありませんか。」
と尋ねた。
「ええ、私たちは無傷ですよ。彼女のおかげでね。」
リョンヤン王子がにっこりと笑うのを見て、ハヨンは役に立てた実感が沸き、嬉しくなる。
「しかし顔が少ししか見えなかったが、誰かあの者を知っている人はいませんか。」
リョンヤンの問に楽団の団長が決まり悪そうに手を挙げる。
「申し訳ありません、今の衣の色から判断すると、彼が踊り手のヒョヌンです。最近入ったばかりだったのですが、上手かったので今回初めて連れてきたのです。まさか彼がそんなことをするなんて…。」
「団長!待ってください!ヒョヌンの姿がありません!」
「なにっ!あいつどこに行った…。」
どうやら誰か楽団の一人がいないようだ。しかし、そんなことに気をとられている場合ではない。自分の仕事は皆の命を守ることなのだから。そう考え直して、当たりに視線を巡らす。
「おや、どうかされたのですか?」
どうやら王子と来賓の一行は到着してしまったようだ。
「申し訳ありません!我々の到着が遅れてしまったのです。その上どうやら踊り手がいないようで…。」
団長が慌てて説明をする。
「いやはや、リョンヤン殿下。どうされますかな?」
異国の衣を纏った、来賓らしき者が、端整な顔立ちの青年に声をかける。どうやら彼がリョンヤン王子のようだ。
「踊り手がいなくとも、演奏はできるでしょう。彼が来るまでは演奏だけでお願いします。」
リョンヤン王子がそう言った時だった。ハヨンは何かの気配を察した。しかしそれが何かはわからない。
ハヨンがはっと我に返ったとき、ハヨンはリョンヤン王子の前に立ち、どこからか飛んできた矢を刀で弾き返した後だった。
「…!侵入者か!」
一瞬静まり返った後、辺りは騒然となる。
「どこからだ!」
「あの高さから見ると、地面から二間(約3m60㎝)以上の高さからいられたぞ!」
(ここ辺りで二間…。)
そのとき強風が吹き、ハヨンの目の端に映る大木に何かがひらりと動いた。周りの者もそれを見逃すはずがない。警備についたものが一斉に大木を取り囲んだ。しかし彼らが手にしている武器は槍や刀で、大木でも随分と上の方に居座る敵には届かない。かといって木登りをして上に行こうとすれば、殺されかねない。どうしたものかと皆が頭を抱えた。
(あれなら届くかな…。)
懐に入れて常に持ち歩いていた、ヨウから貰った四角い暗器にそっと触れる。時間を見つけては練習していたので、なんとか正確に投げることはできるようになった。しかし今回は的ではない。人間なので、弾き返すこともあるし、避けることもある。
ハヨンは目を閉じて集中した。
「すみません、危ないですよっ!」
と他の兵士に声をかけながら暗器を2つ続けて投げる。
1つ目は弾き返されたが、どうやら2つ目は反応が遅れたらしい。
「うっ」
と呻き声が聞こえた。そしてこのまま木の上に居座り続けるのも危険だと思ったらしい。木の上から飛び下り、一目散に駆けていく。手負いのはずなのになかなかの速度で走っていて、ハヨンは舌を巻いた。
「ヒョンジェ、ギュシャ、ウンユン、追いかけろ!奴は手負いだ。絶対に追い付け!」
「はい!」
三人が一斉に追いかけるなか、ここの警備隊の責任者であるガドンは避難させていた王子と来賓達に近づき、
「お怪我はありませんか。」
と尋ねた。
「ええ、私たちは無傷ですよ。彼女のおかげでね。」
リョンヤン王子がにっこりと笑うのを見て、ハヨンは役に立てた実感が沸き、嬉しくなる。
「しかし顔が少ししか見えなかったが、誰かあの者を知っている人はいませんか。」
リョンヤンの問に楽団の団長が決まり悪そうに手を挙げる。
「申し訳ありません、今の衣の色から判断すると、彼が踊り手のヒョヌンです。最近入ったばかりだったのですが、上手かったので今回初めて連れてきたのです。まさか彼がそんなことをするなんて…。」
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる