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武闘会
決勝戦
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(だからと言って私も勝ちを譲りたくはない…。)
その時、鐘の音が聞こえる。もう少しで試合が始まるという合図だ。試合会場にたどり着いたハヨンは木刀を強く握りしめる。
(私も国とかそんな大きな規模では考えてはいなかったけれど、あの人に恩を返すために来たんだから…)
邪魔になる袖口をめくり、髪をもう一度ほどけないように結い直す。彼の方を見ると、彼は準備運動をしていた。特に緊張しているようでもなく、心理戦に持ち込むのは難しそうである。
審判がハヨンとベクホの二人が準備を終えたのを確認し、二人に位置につくように指示する。
「よおい」
神経を尖らせているせいか、ハヨンはぴーんという音が聞こえるような気がした。
「はじめっ!」
ハヨンが構えていた木刀を横に滑らせようとしたとき、ベクホは剣を大きく振りかぶろうとしていた。
(まずいっ!)
慌ててベクホの木刀を受け止める。
「悪いね、ハヨン。君の弱点を攻めさせていただくことにしたよ。」
ベクホはハヨンの受け止めている木刀にさらに力を加える。
(…!力わざで私を抑える気だ。)
女性にはどうしても補えない腕力で仕掛けてくるようだった。
「…っく」
まともに刀を受け止めるなんていつぶりだろうか。今までの戦いかたは力勝負にならないよう、注意を払いながら攻撃するという方法だった。
ハヨンの記憶が正しければ、ヨウに手合わせをしてもらって以来だ。ヘウォンに入隊試験の際にもこのようにされたが、あれは手首の力を抜いていたからか、ベクホのものよりも軽かった。
(どうしたものか…。)
ハヨンがそうこう考えているうちに、少しずつベクホの刀は沈んでくる。上段から狙われたことが一番大きな痛手だ。これで力を加えられると、ハヨンは膝をつかなければならない。そうすれば自然と失格の判定が出るだろう。
(…!でも、まだ手段はある…!!)
ハヨンは歯を食いしばり、刀を両手の力のみで支える。そして左足を軸にして、彼の腿を勢いよく蹴った。彼は大きく体を後退させたが、蹴りが弱かったようだ。彼はまだ立っている。
「…っ。まだまだ…。」
ハヨンは次々に刀をベクホに打ち込み、彼が怯んだすきに渾身の力で先ほどとは反対の腿を蹴った。
「…!」
彼は倒れこみ、そのまま立ち上がれなくなったようだった。上半身は動くものの、下半身は全く動かないようだ。
審判がハヨンの勝利を告げた。
「な、何でだ…。」
ベクホは自由の効かない自身の体に思わずそう洩らした。
「ごめん、腿は強く蹴られたりすると歩けなくなる急所があるの。でも、一時的なものだから安心して」
ハヨンはベクホの前に座り込む。
「…。結構えげつないことするな、ハヨン。」
ベクホは少し呆れたような表情を見せる。
「だってそうでもしないと力負けしちゃうじゃない。」
「…。あんたのやり方は把握した。次は絶対負けないからな。」
そう言ったあと、ハヨンは担架に乗せられていったベクホを見送った。彼がハヨンを責めなかったのは、実際の戦いは決して急所を狙ったりすることを責めたりはできないと知っているからだ。
戦場ではどんな手を使ってでも生き延びる根性がなければ死ぬ。お互いに武道における礼儀などに構ってなどいられないのだ。
(これは、街でいかに生き延びるかにも似ているよね…。)
街でも私腹を肥やし、のうのうと生きている者の大半は汚いやり口で利益を得ている者だった。戦いでは無いので、もちろんハヨンはそんな汚いやり口はしていなかったが。
(それにしても…。やっとだ、やっと夢への一歩が掴めた。)
この武闘会の優勝者は出世を約束されている。これは、他の新兵の中でも一番有利な位置についたとも言えるのだ。この事に浮かれずに気を引き締めていかなければ、とハヨンは自身の緩んだ頬を戒めた。
その時、鐘の音が聞こえる。もう少しで試合が始まるという合図だ。試合会場にたどり着いたハヨンは木刀を強く握りしめる。
(私も国とかそんな大きな規模では考えてはいなかったけれど、あの人に恩を返すために来たんだから…)
邪魔になる袖口をめくり、髪をもう一度ほどけないように結い直す。彼の方を見ると、彼は準備運動をしていた。特に緊張しているようでもなく、心理戦に持ち込むのは難しそうである。
審判がハヨンとベクホの二人が準備を終えたのを確認し、二人に位置につくように指示する。
「よおい」
神経を尖らせているせいか、ハヨンはぴーんという音が聞こえるような気がした。
「はじめっ!」
ハヨンが構えていた木刀を横に滑らせようとしたとき、ベクホは剣を大きく振りかぶろうとしていた。
(まずいっ!)
慌ててベクホの木刀を受け止める。
「悪いね、ハヨン。君の弱点を攻めさせていただくことにしたよ。」
ベクホはハヨンの受け止めている木刀にさらに力を加える。
(…!力わざで私を抑える気だ。)
女性にはどうしても補えない腕力で仕掛けてくるようだった。
「…っく」
まともに刀を受け止めるなんていつぶりだろうか。今までの戦いかたは力勝負にならないよう、注意を払いながら攻撃するという方法だった。
ハヨンの記憶が正しければ、ヨウに手合わせをしてもらって以来だ。ヘウォンに入隊試験の際にもこのようにされたが、あれは手首の力を抜いていたからか、ベクホのものよりも軽かった。
(どうしたものか…。)
ハヨンがそうこう考えているうちに、少しずつベクホの刀は沈んでくる。上段から狙われたことが一番大きな痛手だ。これで力を加えられると、ハヨンは膝をつかなければならない。そうすれば自然と失格の判定が出るだろう。
(…!でも、まだ手段はある…!!)
ハヨンは歯を食いしばり、刀を両手の力のみで支える。そして左足を軸にして、彼の腿を勢いよく蹴った。彼は大きく体を後退させたが、蹴りが弱かったようだ。彼はまだ立っている。
「…っ。まだまだ…。」
ハヨンは次々に刀をベクホに打ち込み、彼が怯んだすきに渾身の力で先ほどとは反対の腿を蹴った。
「…!」
彼は倒れこみ、そのまま立ち上がれなくなったようだった。上半身は動くものの、下半身は全く動かないようだ。
審判がハヨンの勝利を告げた。
「な、何でだ…。」
ベクホは自由の効かない自身の体に思わずそう洩らした。
「ごめん、腿は強く蹴られたりすると歩けなくなる急所があるの。でも、一時的なものだから安心して」
ハヨンはベクホの前に座り込む。
「…。結構えげつないことするな、ハヨン。」
ベクホは少し呆れたような表情を見せる。
「だってそうでもしないと力負けしちゃうじゃない。」
「…。あんたのやり方は把握した。次は絶対負けないからな。」
そう言ったあと、ハヨンは担架に乗せられていったベクホを見送った。彼がハヨンを責めなかったのは、実際の戦いは決して急所を狙ったりすることを責めたりはできないと知っているからだ。
戦場ではどんな手を使ってでも生き延びる根性がなければ死ぬ。お互いに武道における礼儀などに構ってなどいられないのだ。
(これは、街でいかに生き延びるかにも似ているよね…。)
街でも私腹を肥やし、のうのうと生きている者の大半は汚いやり口で利益を得ている者だった。戦いでは無いので、もちろんハヨンはそんな汚いやり口はしていなかったが。
(それにしても…。やっとだ、やっと夢への一歩が掴めた。)
この武闘会の優勝者は出世を約束されている。これは、他の新兵の中でも一番有利な位置についたとも言えるのだ。この事に浮かれずに気を引き締めていかなければ、とハヨンは自身の緩んだ頬を戒めた。
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