27 / 221
武闘会
ベクホという男
しおりを挟む
「すげえなぁハヨン、ついに決勝じゃねぇか。」
ハヨンが休憩所に立ち寄った時、ガンハンとドマンが真っ先に声をかけてきた。
「うん、頑張ってくるね。ところで二人はベクホってどんな人か知ってる?」
どうやらハヨンの対戦相手はその人物なのだが、同期ではガンハンとドマンしか交流を持っていないので、何も情報を持っていなかった。
「えっ、逆に知らないの。ハヨン。結構噂になってるよ、あいつのこと。」
ドマンが驚いたように言う。
「ばか、ハヨンは寄宿舎の場所がちげえから、そういうの届きにくいんだよ」
首を傾げているドマンにガンハンが焦ったようにつっこむ。ハヨンは微妙に気まずい思いをした。
「とりあえずだな、やつは将来有望で、いつかは隊長になれるだろうって噂されてんだ。」
二人の話によれば、貴族出身で容姿端麗、頭脳明晰、おまけに武術も朱雀の新入隊員の中で一番と言われる強者らしい。
(確かに、それは将来を約束されたも同然だな…。)
朱雀の隊長もそれはそれは彼のことを目にかけているようだ。
「彼の武器は何か知ってる?」
「刀だよ。俺、第一試合で当たって、たたきのめされちまった。」
各隊の中でも優秀な白虎にいるガンハンでさえその状況なのだから、彼がいかに強いかがうかがい知れた。
(刀か…。)
自分の十八番(おはこ)であり、彼の十八番でもある武器。これはそう簡単に先行きは読めなかった。
しばらくガンハンとドマンと3人で談笑していたが、彼らは同じく先に敗れてしまった隊員と観客席に行くこととなり、別れる。ハヨンはここで精神統一でもして心を落ち着かせようと考えていた時に、声をかけられた。
「お前がハヨンだよな?俺はベクホ。お前の次の対戦相手だ。」
決勝戦ということで、観客も多く集まるからか、会場を再度設営しなおすために、ハヨンはかなり長い休みをとっていた。
「そう。私がハヨン。よろしくね。」
ベクホに手を差し出されたので、素直に握手をした。
(…ずいぶんと鍛えてるんだな。)
握った彼の手はまめができていたり、何年も剣の練習をしていたのか、手の皮が人よりもずいぶんと固かった。
「俺はあんたには負けられないんだ。だから下見がてらにあんたに話しかけた。」
「随分はっきりと言うんだね。」
「それは俺がお前を認めているからだ。はじめに女が白虎の入隊を志願したと聞いたときは物好きがいるものだ。どうせすぐに辞めていくだろうと思っていたんだが、今日の試合を見て考えが変わった。あんたは俺にとって一番危ない人物だ。」
(彼には私がそんなに異常者に見えるんだろうか…。)
あけすけに、しかも自分のことを危険と言われてしまっては、さすがにハヨンも少しへこんだ。ハヨンが少し落ち込んだ様子をみせたせいかベクホは慌ててつけ加える。
「俺が言いたいのは、俺は少しでもはやく王に認められたいが、あんたはそれを妨げる大きな要因になるってことだ。別にあんたのことを変人と言っているわけではない。」
「ベクホは…。どうして王に認められたいの?」
「それは…。あまり多くは言えないが、近隣の国が最近不穏な動きを見せている。だから俺はそれをはやく抑えたいんだ。それにはできるだけ上の立場にならなければならない。」
だからお前に勝ちは譲れないんだ。そう言った彼の目は、燃えているような強い光を持っていた。地位が欲しい、富が欲しいと言って目指すものや、何となく入隊したものとは違う、真面目そうな雰囲気だ。少し無遠慮な物言いだが、ハヨンには好ましく見えた。
ハヨンが休憩所に立ち寄った時、ガンハンとドマンが真っ先に声をかけてきた。
「うん、頑張ってくるね。ところで二人はベクホってどんな人か知ってる?」
どうやらハヨンの対戦相手はその人物なのだが、同期ではガンハンとドマンしか交流を持っていないので、何も情報を持っていなかった。
「えっ、逆に知らないの。ハヨン。結構噂になってるよ、あいつのこと。」
ドマンが驚いたように言う。
「ばか、ハヨンは寄宿舎の場所がちげえから、そういうの届きにくいんだよ」
首を傾げているドマンにガンハンが焦ったようにつっこむ。ハヨンは微妙に気まずい思いをした。
「とりあえずだな、やつは将来有望で、いつかは隊長になれるだろうって噂されてんだ。」
二人の話によれば、貴族出身で容姿端麗、頭脳明晰、おまけに武術も朱雀の新入隊員の中で一番と言われる強者らしい。
(確かに、それは将来を約束されたも同然だな…。)
朱雀の隊長もそれはそれは彼のことを目にかけているようだ。
「彼の武器は何か知ってる?」
「刀だよ。俺、第一試合で当たって、たたきのめされちまった。」
各隊の中でも優秀な白虎にいるガンハンでさえその状況なのだから、彼がいかに強いかがうかがい知れた。
(刀か…。)
自分の十八番(おはこ)であり、彼の十八番でもある武器。これはそう簡単に先行きは読めなかった。
しばらくガンハンとドマンと3人で談笑していたが、彼らは同じく先に敗れてしまった隊員と観客席に行くこととなり、別れる。ハヨンはここで精神統一でもして心を落ち着かせようと考えていた時に、声をかけられた。
「お前がハヨンだよな?俺はベクホ。お前の次の対戦相手だ。」
決勝戦ということで、観客も多く集まるからか、会場を再度設営しなおすために、ハヨンはかなり長い休みをとっていた。
「そう。私がハヨン。よろしくね。」
ベクホに手を差し出されたので、素直に握手をした。
(…ずいぶんと鍛えてるんだな。)
握った彼の手はまめができていたり、何年も剣の練習をしていたのか、手の皮が人よりもずいぶんと固かった。
「俺はあんたには負けられないんだ。だから下見がてらにあんたに話しかけた。」
「随分はっきりと言うんだね。」
「それは俺がお前を認めているからだ。はじめに女が白虎の入隊を志願したと聞いたときは物好きがいるものだ。どうせすぐに辞めていくだろうと思っていたんだが、今日の試合を見て考えが変わった。あんたは俺にとって一番危ない人物だ。」
(彼には私がそんなに異常者に見えるんだろうか…。)
あけすけに、しかも自分のことを危険と言われてしまっては、さすがにハヨンも少しへこんだ。ハヨンが少し落ち込んだ様子をみせたせいかベクホは慌ててつけ加える。
「俺が言いたいのは、俺は少しでもはやく王に認められたいが、あんたはそれを妨げる大きな要因になるってことだ。別にあんたのことを変人と言っているわけではない。」
「ベクホは…。どうして王に認められたいの?」
「それは…。あまり多くは言えないが、近隣の国が最近不穏な動きを見せている。だから俺はそれをはやく抑えたいんだ。それにはできるだけ上の立場にならなければならない。」
だからお前に勝ちは譲れないんだ。そう言った彼の目は、燃えているような強い光を持っていた。地位が欲しい、富が欲しいと言って目指すものや、何となく入隊したものとは違う、真面目そうな雰囲気だ。少し無遠慮な物言いだが、ハヨンには好ましく見えた。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない
もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。
……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる