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差し伸べられた手
ゆかりある人
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「ハヨンさん、訓練の最中に申し訳ないんですが、よろしいですか。」
この城で生活を始めてもう何度も聞いてきた言葉。しかし、今回はいつもと違う人物が声をかけてきた。剣の手合わせを順番に見てもらうため、並んでいたハヨンに、ここ数日忙しくて姿すら見かけていなかったハイルが話しかけてきたのである。
「はい、なんでしょう。」
隊員が次々と挨拶をするなかで話をするのは落ち着かないものだ。ハヨンは少し戸惑う。
「あなたにお客様です。至急いらしてください」
「…は、はい。わかりました。」
事態を呑み込めないまま、ハヨンは了承する。
(私に会うようなお客っていったい誰なんだろう…)
ハイルがその場で訓練の指導をしていた先輩隊員に訳を話すのを見ながら、ハヨンは考えを巡らせる。
(お母さん?それともヨウさん?何か家であったのかな。)
ハヨンの頭の中で様々な憶測が浮かんでは消えた。
「では、参りましょう。」
しかしハイルの落ち着いた様子を見て、どうやらそういう訳でも無いらしいことがわかってきた。
ハヨンの通された部屋は、城でもそこそこの地位のある者の応接間として使われる花の間だった。
「ドゥナ様、お連れしました。」
「ありがとう、ハイル。」
ハイルに返事をした声は明らかに女性のもので、そんな身分の高い女性の知り合いなどいたことのないハヨンは仰天する。
ハイルに促されるままに花の間に足を踏み入れると、
「待っていたわ、ハヨン」
と母とそう歳の違わない女性が立っていた。
「ええと、あなたは…。」
「あら、ごめんなさいね。私はドゥナ。貴方の叔母にあたるのよ。」
しかしハヨンの覚えている限り、母のチャンヒは一人娘で、兄弟はいないはずだ。
(となるとこの人は…。)
「ドゥナ様は父方の叔母にあたる、ということでしょうか。」
「その通りよ。最近、チュ家の名を名乗る者が白虎に入隊したと聞いてね。探りを入れていたらハイルから知らせが届いたのよ。」
ハヨンは父の生前、一度もチュ家の人に会わせてもらっていなかったので、チュ家の人達とは全く関わりがない。
ハヨンやチャンヒのことは認識していないのではと思っていたのだが、そういう訳でもなかったようだ。ハヨンの名も、父の娘であることも知っているようだった。
「ドゥナ様。今日はそれでどのような用件で…。」
チュ家を名乗ることが気に食わないのだろうか、と考えながらハヨンはドゥナの様子を伺う。
「お兄様が死んでからどうやらあなたとチャンヒさん、だいぶん苦労しているようじゃない。お兄様は生前、拒否していたけれど、あなたたち、正式にチュ家に入る気はないかしら?」
ドゥナの言葉にハヨンは唖然としていた。父がどういった経緯でチュ家を出て、職人階級の母と結婚したのか。そしてどうして実家から絶縁もされず過ごしていたのか。様々な疑問があったのだが、この言葉で、ハヨンはいったい父が何をしてきたのか急に気になり始めていた。
この城で生活を始めてもう何度も聞いてきた言葉。しかし、今回はいつもと違う人物が声をかけてきた。剣の手合わせを順番に見てもらうため、並んでいたハヨンに、ここ数日忙しくて姿すら見かけていなかったハイルが話しかけてきたのである。
「はい、なんでしょう。」
隊員が次々と挨拶をするなかで話をするのは落ち着かないものだ。ハヨンは少し戸惑う。
「あなたにお客様です。至急いらしてください」
「…は、はい。わかりました。」
事態を呑み込めないまま、ハヨンは了承する。
(私に会うようなお客っていったい誰なんだろう…)
ハイルがその場で訓練の指導をしていた先輩隊員に訳を話すのを見ながら、ハヨンは考えを巡らせる。
(お母さん?それともヨウさん?何か家であったのかな。)
ハヨンの頭の中で様々な憶測が浮かんでは消えた。
「では、参りましょう。」
しかしハイルの落ち着いた様子を見て、どうやらそういう訳でも無いらしいことがわかってきた。
ハヨンの通された部屋は、城でもそこそこの地位のある者の応接間として使われる花の間だった。
「ドゥナ様、お連れしました。」
「ありがとう、ハイル。」
ハイルに返事をした声は明らかに女性のもので、そんな身分の高い女性の知り合いなどいたことのないハヨンは仰天する。
ハイルに促されるままに花の間に足を踏み入れると、
「待っていたわ、ハヨン」
と母とそう歳の違わない女性が立っていた。
「ええと、あなたは…。」
「あら、ごめんなさいね。私はドゥナ。貴方の叔母にあたるのよ。」
しかしハヨンの覚えている限り、母のチャンヒは一人娘で、兄弟はいないはずだ。
(となるとこの人は…。)
「ドゥナ様は父方の叔母にあたる、ということでしょうか。」
「その通りよ。最近、チュ家の名を名乗る者が白虎に入隊したと聞いてね。探りを入れていたらハイルから知らせが届いたのよ。」
ハヨンは父の生前、一度もチュ家の人に会わせてもらっていなかったので、チュ家の人達とは全く関わりがない。
ハヨンやチャンヒのことは認識していないのではと思っていたのだが、そういう訳でもなかったようだ。ハヨンの名も、父の娘であることも知っているようだった。
「ドゥナ様。今日はそれでどのような用件で…。」
チュ家を名乗ることが気に食わないのだろうか、と考えながらハヨンはドゥナの様子を伺う。
「お兄様が死んでからどうやらあなたとチャンヒさん、だいぶん苦労しているようじゃない。お兄様は生前、拒否していたけれど、あなたたち、正式にチュ家に入る気はないかしら?」
ドゥナの言葉にハヨンは唖然としていた。父がどういった経緯でチュ家を出て、職人階級の母と結婚したのか。そしてどうして実家から絶縁もされず過ごしていたのか。様々な疑問があったのだが、この言葉で、ハヨンはいったい父が何をしてきたのか急に気になり始めていた。
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