7 / 221
遥か昔に起きしこと
古の祈り
しおりを挟む
もう何百年前なのか数えられないほど昔…。
現在の燐の国一帯を治めていた靖という王朝は長い間繁栄したが遂に衰退し、人々は荒れていった。暴力、強奪、殺人…。そんな犯罪に手を染めるもの達で王都周辺は溢れ返っていた。
そして靖の国に今までに体験したことの無い大干ばつ、それによる大飢饉が起こる。食糧の奪い合いにより大きな争いが絶えず起こり、王都のみならず農村や漁村まで気がつけば靖の国のほぼ全てが争いの地となり、地は血で染められるありさまとなった。
しかし、王には争いを止める力はもう残っておらず、かと言って民を救う手だてもなく、国の内紛により大きな力を持った集団に城を焼かれ、逃げ惑っていた姿を発見され、呆気なく殺された。
そんな無法地帯となった国の中で、一部だけ干ばつをまぬがれ、争いを好まぬ一族がひっそりと暮らす山があった。
ありとあらゆるものを欲したもの達は、最後の豊かな土地を我が物にしようとした。武装し、人々を蹂躙するもの達が方々から集り、森に住む一族の身に危険が迫った。
そんな時、森の中に住んでいた一族の長、ソンドクは天に祈った。
神よどうかお助けください。私には愛する妻と息子そして一族の民がいます。皆を守り、慎ましく、ささやかでも争わず、穏やかな日々を過ごすことが私にとっては何よりの幸せなのです。私は皆を守り、自然を傷つけない力が欲しい。
と。長い間靖の国の争いを憂いていた神はその言葉を耳にし、こう返した。
ならばそなたに私の力の一部を与えよう。それは獣を従える力であり、獣達はそなたの命令には必ずそむけぬ。そして、私の友の四獣を遣わそう。彼らはそなたらを守り、そして国中の自然を蘇らせるであろう。
そうしてソンドクのもとに朱雀、青龍、白虎、玄武が遣わされた。
人々が森に入り、ソンドクの一族を皆殺しにしようとしたとき、ソンドクは神から与えられた力を使い、森の獣や四獣と力を合わせて守りきった。人々はしだいに人を越えた力を持つソンドクに敬服し、神と崇め、しだいに戦いは終結へと向かっていった。
国の混乱が収まりつつあった時、偉大な力を持つソンドクに是非王にと言った。
ソンドクは荒れた世を直すためにそれを受け入れた。そしてソンドクの誠実な心を見てとった神は、ソンドクやその子孫達に永久にその力を与えることを約束した。
四獣達はソンドクの善き友として未来永劫共に力を合わせることを誓い、燐の国の創設に尽力した。しかしソンドクは他国から攻められた時に共に戦っていた獣の身代わりとして毒矢を受け、死に行く定めとなる。
ソンドクがこの世を去った後は、四獣達はこの国を守るために四方に散り、燐の国の守り神として海、山、街、草原に身をやつして眠っているという。
現在の燐の国一帯を治めていた靖という王朝は長い間繁栄したが遂に衰退し、人々は荒れていった。暴力、強奪、殺人…。そんな犯罪に手を染めるもの達で王都周辺は溢れ返っていた。
そして靖の国に今までに体験したことの無い大干ばつ、それによる大飢饉が起こる。食糧の奪い合いにより大きな争いが絶えず起こり、王都のみならず農村や漁村まで気がつけば靖の国のほぼ全てが争いの地となり、地は血で染められるありさまとなった。
しかし、王には争いを止める力はもう残っておらず、かと言って民を救う手だてもなく、国の内紛により大きな力を持った集団に城を焼かれ、逃げ惑っていた姿を発見され、呆気なく殺された。
そんな無法地帯となった国の中で、一部だけ干ばつをまぬがれ、争いを好まぬ一族がひっそりと暮らす山があった。
ありとあらゆるものを欲したもの達は、最後の豊かな土地を我が物にしようとした。武装し、人々を蹂躙するもの達が方々から集り、森に住む一族の身に危険が迫った。
そんな時、森の中に住んでいた一族の長、ソンドクは天に祈った。
神よどうかお助けください。私には愛する妻と息子そして一族の民がいます。皆を守り、慎ましく、ささやかでも争わず、穏やかな日々を過ごすことが私にとっては何よりの幸せなのです。私は皆を守り、自然を傷つけない力が欲しい。
と。長い間靖の国の争いを憂いていた神はその言葉を耳にし、こう返した。
ならばそなたに私の力の一部を与えよう。それは獣を従える力であり、獣達はそなたの命令には必ずそむけぬ。そして、私の友の四獣を遣わそう。彼らはそなたらを守り、そして国中の自然を蘇らせるであろう。
そうしてソンドクのもとに朱雀、青龍、白虎、玄武が遣わされた。
人々が森に入り、ソンドクの一族を皆殺しにしようとしたとき、ソンドクは神から与えられた力を使い、森の獣や四獣と力を合わせて守りきった。人々はしだいに人を越えた力を持つソンドクに敬服し、神と崇め、しだいに戦いは終結へと向かっていった。
国の混乱が収まりつつあった時、偉大な力を持つソンドクに是非王にと言った。
ソンドクは荒れた世を直すためにそれを受け入れた。そしてソンドクの誠実な心を見てとった神は、ソンドクやその子孫達に永久にその力を与えることを約束した。
四獣達はソンドクの善き友として未来永劫共に力を合わせることを誓い、燐の国の創設に尽力した。しかしソンドクは他国から攻められた時に共に戦っていた獣の身代わりとして毒矢を受け、死に行く定めとなる。
ソンドクがこの世を去った後は、四獣達はこの国を守るために四方に散り、燐の国の守り神として海、山、街、草原に身をやつして眠っているという。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない
もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。
……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる