2 / 221
剣士への一歩
試験の概要
しおりを挟む
「受験者の皆、よくここまで来られたな。さて、皆もよく知っておるとは思うが、ここはどの部隊よりも1段と試験が過酷と言われる白虎だ。だがここの試験はどこの試験よりも単純明快。何か難しい問題が出されるわけではない。」
白虎の隊長、ヘウォンが整列している、試験を受けに来た者達に快活に話す。その受験者の中に、勿論ハヨンの姿もあった。
「それはどんな手を使ってもいい…。この隊長俺に勝つことだ。」
ハヨンの周りに立っている受験者達はざわめいた。
「そんな無茶な!白虎最強のヘウォン様に勝つなんて…。」
「みんなすぐに伸されちまうだろ…!」
「静かに」
ヘウォンが咳払いと共にそう一言注意するだけで受験者達はシンと静まり返った。ヘウォンはそれほどに一目置かれている武人なのだ。
「さっきも言っただろう。どんな手を使ってもいい、と。お前らが持ってる剣なり槍なり何でもいい。そいつら使って俺を倒せ。つってもお互い重傷になったら入隊試験の意味がねぇから、どちらかが戦闘意欲を失うか、膝をつくまでな。」
ハヨンはその言葉を聞いて、自分が腰から提げている刀の柄をぎゅっと握る。
(父さんの刀を使うときがきた…。)
ハヨンは高揚した心を鎮めるように目を閉じた。
「まぁ、さすがにこれだけじゃあお前らが不利だ。だから俺は…。弱点を作る。」
ヘウォンの言葉に受験者達は首を傾げた。
「俺はある部分を使わないで戦う。だから、そこをいち速く見つけて戦えばお前らは勝算が上がる。」
それでもぴんとこない者たちがいたので、へウォンは付け加える。
「例えば…俺が右手を使わないようにして戦っているとしたら、お前らが左手も使えないようにすれば俺は手での攻撃が不可能だろう?」
皆が一様に納得した顔になった。
「ちなみに、ヘウォン様の作る弱点は…。」
一人の受験者がおそるおそると手を挙げて質問する。
「勿論教えるわけが無いだろう!そこまで言っちまえば俺は攻撃され放題だ。」
そうヘウォンに豪快に笑いながら返された彼はがっくりとうなだれた。
「じゃあまずはお前からな。こっちに来い。」
ヘウォンと右端の一番先頭に並んでいた者が手招きされ、白虎の間に入って右側にある武道場へと姿を消した。
ヘウォンが姿を消したとたん、受験者達は囁いて話始める。やはり緊張すると人は誰かと話したくなるらしい。
「なぁ、ヘウォン様が作る弱点って何だと思う?」
「さぁな。でもさっき右手を例に挙げてたから右手は無いんじゃねぇか?」
「なぁ、あんたはどう思う?」
そう話題を振られて、静かに作戦を練っていたハヨンは彼らに目を合わせる。
「そんなの実際に手合わせしないとわからないでしょう。だから私は自分の持ってる武器をどう使うかを考えることにした。あなた達もそっちを考えたら?だってそんなにも素敵な武器を持っているもの。」
彼らは白虎に入るために応援として家族から新しい剣をもらったらしい。真新しい剣を腰から吊るしていた。
彼女の返事を聞いて彼らは顔を見合わせる。ハヨンは再び精神統一に集中し、自分の世界へと入り込んでしまった。
「なぁ、あいつ女か?」
あきらかに女の口調で返事をされたので、彼らも面食らったようだった。
「んなわけねぇだろう!ここの試験受けに来たやつらはただえさえ勇者と言われて一族から称えられるくらい難しいのに女なんかが受けに来るわけねぇだろう。」
「だ、だよなぁ。」
奇妙なやつだ、とふたりで囁きあっている横で、ハヨンはなに食わぬ顔で立っていた。
白虎の隊長、ヘウォンが整列している、試験を受けに来た者達に快活に話す。その受験者の中に、勿論ハヨンの姿もあった。
「それはどんな手を使ってもいい…。この隊長俺に勝つことだ。」
ハヨンの周りに立っている受験者達はざわめいた。
「そんな無茶な!白虎最強のヘウォン様に勝つなんて…。」
「みんなすぐに伸されちまうだろ…!」
「静かに」
ヘウォンが咳払いと共にそう一言注意するだけで受験者達はシンと静まり返った。ヘウォンはそれほどに一目置かれている武人なのだ。
「さっきも言っただろう。どんな手を使ってもいい、と。お前らが持ってる剣なり槍なり何でもいい。そいつら使って俺を倒せ。つってもお互い重傷になったら入隊試験の意味がねぇから、どちらかが戦闘意欲を失うか、膝をつくまでな。」
ハヨンはその言葉を聞いて、自分が腰から提げている刀の柄をぎゅっと握る。
(父さんの刀を使うときがきた…。)
ハヨンは高揚した心を鎮めるように目を閉じた。
「まぁ、さすがにこれだけじゃあお前らが不利だ。だから俺は…。弱点を作る。」
ヘウォンの言葉に受験者達は首を傾げた。
「俺はある部分を使わないで戦う。だから、そこをいち速く見つけて戦えばお前らは勝算が上がる。」
それでもぴんとこない者たちがいたので、へウォンは付け加える。
「例えば…俺が右手を使わないようにして戦っているとしたら、お前らが左手も使えないようにすれば俺は手での攻撃が不可能だろう?」
皆が一様に納得した顔になった。
「ちなみに、ヘウォン様の作る弱点は…。」
一人の受験者がおそるおそると手を挙げて質問する。
「勿論教えるわけが無いだろう!そこまで言っちまえば俺は攻撃され放題だ。」
そうヘウォンに豪快に笑いながら返された彼はがっくりとうなだれた。
「じゃあまずはお前からな。こっちに来い。」
ヘウォンと右端の一番先頭に並んでいた者が手招きされ、白虎の間に入って右側にある武道場へと姿を消した。
ヘウォンが姿を消したとたん、受験者達は囁いて話始める。やはり緊張すると人は誰かと話したくなるらしい。
「なぁ、ヘウォン様が作る弱点って何だと思う?」
「さぁな。でもさっき右手を例に挙げてたから右手は無いんじゃねぇか?」
「なぁ、あんたはどう思う?」
そう話題を振られて、静かに作戦を練っていたハヨンは彼らに目を合わせる。
「そんなの実際に手合わせしないとわからないでしょう。だから私は自分の持ってる武器をどう使うかを考えることにした。あなた達もそっちを考えたら?だってそんなにも素敵な武器を持っているもの。」
彼らは白虎に入るために応援として家族から新しい剣をもらったらしい。真新しい剣を腰から吊るしていた。
彼女の返事を聞いて彼らは顔を見合わせる。ハヨンは再び精神統一に集中し、自分の世界へと入り込んでしまった。
「なぁ、あいつ女か?」
あきらかに女の口調で返事をされたので、彼らも面食らったようだった。
「んなわけねぇだろう!ここの試験受けに来たやつらはただえさえ勇者と言われて一族から称えられるくらい難しいのに女なんかが受けに来るわけねぇだろう。」
「だ、だよなぁ。」
奇妙なやつだ、とふたりで囁きあっている横で、ハヨンはなに食わぬ顔で立っていた。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない
もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。
……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる