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三章 中央区
対立する者達 16
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それから、俺達もそれぞれ食べ物と飲み物とって来て、宴会に加わる。俺も折角なので酒を少しずつ飲みながら、周囲の様子を眺める。
爺さんの周りには既に酒の空き缶が散らばり、満足そうな顔をしている。早瀬はケーキを食べ終え、でかいアイスを大きなスプーンで掬って口に運び満面の笑み。荻菜さんはケーキをつまみに赤ワインを飲み、頬が赤く染まり妖艶な雰囲気を出していた。
孝と一緒にいた連中は久々のちゃんとした食事なのか、それぞれ食事を採り、中には目に涙を浮かべている者もいた。
今の状況では……食べたい物を食べる。これだけで幸せなんだろうな。俺も最初に領域を支配した時、どれだけ普通の食事に感動したか……。
「おい、一人で黄昏てないで一緒に飲もうぜ」
そう言って酒の缶を持ちながら近寄り、俺の前に座る。
「ああ……一月以上ぶりの満腹だ。本当に暁門には感謝しきれないな」
城悟と一緒に来た孝はジュースの缶を片手に座る。
「……そうだな。じゃあ、一人足りないが……腐れ縁の久々の再会を祝って乾杯でもするか」
「あいつもきっと生きてるさ。オレ達だってこうやって再会したんだ、きっと……何処かでまた会える」
「忙しないあいつの事だ。ゴブリンに慌ててスマホを落としたんだろう」
そう言う二人は浮かない表情をしている。
……俺が余計な事を言った。今は一応お祝いの場だ、そこで湿っぽい話をしたのは失敗だったな。
俺は缶を持ち、上へと掲げる。その俺の動作を見た二人も、慌てて缶を上げた。
「悪い、余計な事を言った。今は俺達の再会を祝うぞ」
二人はそのまま俺を見据える。
「そして、これからもよろしくな。城悟、孝。それじゃ——」
「「「乾杯!」」」
俺達は飲み物の缶をぶつけ合い、互いの再会を心から喜びあう。
世界がこんな状況でも、今この時だけは昔と変わることはない。こらから何が起きようが——この関係は続けていきたい、俺はそう思った。
「そう言えば、何故城悟は避難所を離れた?俺があれだけ言っても拒否していただろう?」
「あー……孝。聞いてくれよ。俺が絶対に離れないって言ったらよ、暁門の奴が——」
城悟が、再会した時の俺の行動について語る。それを聞いて、孝は顔を引き攣らせる。
「……暁門、お前やりすぎだろう。見捨てた俺が言うのもなんだが、流石に引くぞ」
「手段なんてどうでもいいだろ。後の結果が大事なんだ結果が。こうして二人が話してるのは誰のお陰だと思ってるんだ?」
「それは……」
「くっ……」
「それにしても怖い世界だよなあ。十年以上の友人が、たった一ヶ月程度で仲違いするんだぜ?」
言い返せない二人を見ながら、俺は話を続ける。
「それに、その原因となった考えが甘過ぎて駄目な所だらけと来たもんだ。そんな意見の食い違いで喧嘩とか笑うしか無いよな。なあ、二人はどう思う?」
俺がそう言って二人に目を向けると、城悟も孝も目を逸らした。
「何もしない奴らを守っても、仲良く共倒れするのがオチだ。『ホープ』持ちだけで集まるのは一時的には良いかもしれないが、そんな人間は何人居るんだ?結果集まらなくて戦力も増やせず、細々と生きるしか無いぞ?流石に極端過ぎるだろ」
俺は話を続ける。
「生きたいと心から願い、その為なら例え嫌な事でもやれる者。そういった人なら少なくは無い筈だ。俺はそういった連中を集めて、他に絶対に負けない集団を作りたい。この考え、二人はどう思う?」
二人は、暫く考える様子を見せる。そして、先に口を開いたのは、孝だった。
「俺はその考えに賛同しよう。俺の仲間達だって、元は自分達だけが危険な目に合うのが嫌だったから俺について来た。きっと納得してくれる筈だ」
そして城悟。
「……正直、オレはまだ避難所の事が引っかかってる。上の連中は殴りたい程に嫌いだが、避難していた人達を見捨てるのが……」
城悟はまだ割り切れないか。俺が無理矢理連れて来たし、それも無理は無いと思う。
だが、完全にでは無いが城悟の気持ちを汲む方法が有る。むしろ、俺はその為にこの領域を支配した。
「見捨てて死なれたら、オレは恐らくずっと悔やむ事になる。なあ、暁門。オレがお前について行く事は良い。だが、何かいい方法は無いのか?」
俺はそこでニヤリと笑う。
「そうだな。俺の考えはさっき言った通りで、全員を保護するつもりは無い。だが、今回は城悟に任せようと思う」
俺の言葉に城悟は首を傾げる。
「オレに任せる……?何をだ?」
「無理矢理連れてきたお詫びに、この領域は城悟にやるよ。避難所の連中をここに入れても良いし、食糧を分けてやっても良い。全て城悟の自由にしろ」
俺がここを支配した理由。それは——笹山高校の避難所の人達をここで保護する為だった。そうしなければ、城悟はずっと後悔する事になり、今後の行動にも差し支える事になると思った。
だから、俺に出来る事として考え、このような形にした。
後は……全て城悟次第だ。出来れば、割り切って行動してくれる事を願う。
爺さんの周りには既に酒の空き缶が散らばり、満足そうな顔をしている。早瀬はケーキを食べ終え、でかいアイスを大きなスプーンで掬って口に運び満面の笑み。荻菜さんはケーキをつまみに赤ワインを飲み、頬が赤く染まり妖艶な雰囲気を出していた。
孝と一緒にいた連中は久々のちゃんとした食事なのか、それぞれ食事を採り、中には目に涙を浮かべている者もいた。
今の状況では……食べたい物を食べる。これだけで幸せなんだろうな。俺も最初に領域を支配した時、どれだけ普通の食事に感動したか……。
「おい、一人で黄昏てないで一緒に飲もうぜ」
そう言って酒の缶を持ちながら近寄り、俺の前に座る。
「ああ……一月以上ぶりの満腹だ。本当に暁門には感謝しきれないな」
城悟と一緒に来た孝はジュースの缶を片手に座る。
「……そうだな。じゃあ、一人足りないが……腐れ縁の久々の再会を祝って乾杯でもするか」
「あいつもきっと生きてるさ。オレ達だってこうやって再会したんだ、きっと……何処かでまた会える」
「忙しないあいつの事だ。ゴブリンに慌ててスマホを落としたんだろう」
そう言う二人は浮かない表情をしている。
……俺が余計な事を言った。今は一応お祝いの場だ、そこで湿っぽい話をしたのは失敗だったな。
俺は缶を持ち、上へと掲げる。その俺の動作を見た二人も、慌てて缶を上げた。
「悪い、余計な事を言った。今は俺達の再会を祝うぞ」
二人はそのまま俺を見据える。
「そして、これからもよろしくな。城悟、孝。それじゃ——」
「「「乾杯!」」」
俺達は飲み物の缶をぶつけ合い、互いの再会を心から喜びあう。
世界がこんな状況でも、今この時だけは昔と変わることはない。こらから何が起きようが——この関係は続けていきたい、俺はそう思った。
「そう言えば、何故城悟は避難所を離れた?俺があれだけ言っても拒否していただろう?」
「あー……孝。聞いてくれよ。俺が絶対に離れないって言ったらよ、暁門の奴が——」
城悟が、再会した時の俺の行動について語る。それを聞いて、孝は顔を引き攣らせる。
「……暁門、お前やりすぎだろう。見捨てた俺が言うのもなんだが、流石に引くぞ」
「手段なんてどうでもいいだろ。後の結果が大事なんだ結果が。こうして二人が話してるのは誰のお陰だと思ってるんだ?」
「それは……」
「くっ……」
「それにしても怖い世界だよなあ。十年以上の友人が、たった一ヶ月程度で仲違いするんだぜ?」
言い返せない二人を見ながら、俺は話を続ける。
「それに、その原因となった考えが甘過ぎて駄目な所だらけと来たもんだ。そんな意見の食い違いで喧嘩とか笑うしか無いよな。なあ、二人はどう思う?」
俺がそう言って二人に目を向けると、城悟も孝も目を逸らした。
「何もしない奴らを守っても、仲良く共倒れするのがオチだ。『ホープ』持ちだけで集まるのは一時的には良いかもしれないが、そんな人間は何人居るんだ?結果集まらなくて戦力も増やせず、細々と生きるしか無いぞ?流石に極端過ぎるだろ」
俺は話を続ける。
「生きたいと心から願い、その為なら例え嫌な事でもやれる者。そういった人なら少なくは無い筈だ。俺はそういった連中を集めて、他に絶対に負けない集団を作りたい。この考え、二人はどう思う?」
二人は、暫く考える様子を見せる。そして、先に口を開いたのは、孝だった。
「俺はその考えに賛同しよう。俺の仲間達だって、元は自分達だけが危険な目に合うのが嫌だったから俺について来た。きっと納得してくれる筈だ」
そして城悟。
「……正直、オレはまだ避難所の事が引っかかってる。上の連中は殴りたい程に嫌いだが、避難していた人達を見捨てるのが……」
城悟はまだ割り切れないか。俺が無理矢理連れて来たし、それも無理は無いと思う。
だが、完全にでは無いが城悟の気持ちを汲む方法が有る。むしろ、俺はその為にこの領域を支配した。
「見捨てて死なれたら、オレは恐らくずっと悔やむ事になる。なあ、暁門。オレがお前について行く事は良い。だが、何かいい方法は無いのか?」
俺はそこでニヤリと笑う。
「そうだな。俺の考えはさっき言った通りで、全員を保護するつもりは無い。だが、今回は城悟に任せようと思う」
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俺がここを支配した理由。それは——笹山高校の避難所の人達をここで保護する為だった。そうしなければ、城悟はずっと後悔する事になり、今後の行動にも差し支える事になると思った。
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