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三章 中央区
対立する者達 14 能力の発展
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かなりの速度で近づく狼と犬の大群に、俺は『連射』が付与された魔石銃に持ち替えて連射する。一丁三十発の弾が放射状に発射される様子は、サブマシンガンにも劣らないんじゃ無いだろうか。
それに加えて城悟や早瀬、荻菜さん達も撃つ。すぐに補充可能な俺とは違い魔石の交換に間隔が大きく空いてしまうが、銃弾の雨は着実にその数を削っていく。
その結果、後数十メートルの距離で半数以上は銃の餌食となっていた。
しかし、状況は悪化する。
「おい!向こうからも来るぞ!」
孝が叫ぶと同時に、別方向の通路へと目を向ける。すると、そちらからも犬の大群がやってきているのが視認できる。
そちらへの対応にも人数を割かなければならない。だが、紫の狼側を放置すると爺さんが死角からの傷を負いかねない。
そこで、俺は決断する。
「増援の方は全て俺が対応する!皆は爺さんへのフォローに回れ!間違っても撃つなよ!」
「「暁門、任せたぞ!」」
俺の声に返したのは城悟と孝。あいつら……声が被ってるぞ。
だが、俺はそれに少し嬉しくなり、フッと笑う。こうして城悟や孝と共に戦う日が来るとは夢にも思わなかったが、案外悪く無いのかもしれないな。
俺は増援側へと走り、皆から五十メートル程離れた所で狼達を待ち構える。離れたのは、狼達の攻撃を全て俺に向けるため。
右手には刀、左手と宙に浮かぶのは魔石銃。相手は——数十もの犬の群れ。
「これは……骨が折れそうだな」
俺はそう呟いて、魔石銃の引き金を引いた。
♦︎
※城悟視点
くそッ!情けねえ!何が『ホープ』持ちだ!結局、暁門と柳の爺さんに任せきりじゃねえか!
今のオレの強さじゃ、二人の影に隠れて銃を撃つしか出来ない。紫の狼なんて、見ているだけで背筋が凍りそうだった。
もっと……もっと違う力がが欲しい!二人に任せきりなんてのは、オレは御免だ!
※孝視点
再会した暁門は……俺の手が届かない程の強さを持っていた。
それは『ホープ』だけじゃ無い。あの身体能力や行動の速さは、俺には真似できないものだ。
いつかは追いついてやろうとは思うが、まずは今の状況どうするかだ。今の俺に何が出来る?『現状把握』で敵の数なんて調べても何の役にも立たない。
もっと……何か別な力が欲しい。暁門とあの爺さん、二人の手助けが出来る、何かが……!
♦︎
※柳(爺さん)視点
「これは……中々……っ、」
周囲には紫の狼と、八匹の犬。儂はそれぞれの動きを察知しながら、二本の刀で攻撃を受け流し続けていた。常に目と体を全力で使っている事で、額には汗が滲んできているのが分かる。
これ程苦労したのは、アカグロ以来じゃのう……あの時でもここまで疲れる事は無かったんじゃが。
このままだとその内、見逃して攻撃を受けてしまう。じゃが……攻撃に回るほどの余裕は無い。周囲の援護も儂に当たるのを恐れてか、かなり控えめだしのう……。
灰間の小僧であれば、儂に当たりそうな位置でも容赦無く撃ってくるんじゃが……。
儂がそんな事を考えた時、右手の側面に見逃した犬がいる事に気付く。
……ッ!いつの間に居たんじや!
気付いた時には既に犬は儂に飛びかかろうとしていた。これは……間に合わん。
傷を負うのを覚悟した時。堅持の小僧の叫び声が聞こえた。
「緊急援護!」
その瞬間、飛びかかろうとしていた犬の姿が消え、代わりに堅持の小僧の姿が見えた。その手には鉄パイプを持ち、振り抜いたかのような体勢になっている。
「ギャゥン!」
犬の叫び声が後方から聞こえ、儂は察する。堅持の小僧……こやつ、瞬時に場所を移動して狼を殴り飛ばしおった。これも、こやつの能力かのう?
儂はそこで後方へと跳躍し、狼達から距離を取る。
だが、堅持の小僧は引かずに儂の居た場所に移動する。儂はその行動を見て声を上げる。
「な……っ!何をしとる!」
だが、あやつはそのまま防御の体勢を取った。顔の前で両手を交差し、次に来る攻撃に備えたのだ。
堅持の小僧に襲いかかる、犬の牙や爪。だが——それらの攻撃は全て、堅持の小僧に届くことは無かった。
見えない壁に阻まれるかのように狼達は弾かれていく。そして、それは紫の狼も同様。
「全員正面を撃て!城悟は気にするな!」
そして聞こえたのは御渡の小僧の声。儂がそちらに目を向けると、その目が赤く光っているように見えた。
その直後、声に反応した他の者達が一斉に銃を発射し、犬の群れを次々と撃ち抜いていく。
それは、まるで最適な瞬間を見計らったかのような、狼達が避ける事の出来ない見事なタイミングじゃった。
「爺さん!ボスを!」
儂はその御渡の小僧の声にハッとし、地面を強く蹴り堅持の小僧の脇を抜ける。その先に、残っていたのは紫の狼のみ。儂は攻撃に怯み無防備となったその体に刀を振り下ろした。
「ギャウゥゥッ!」
手に伝わる肉を斬る感触。これは確実に大きな傷を負わせた筈じゃ。
「『最善手』……爺さん、このまま押し切れ!」
儂はその声を信用し、二振りの刀を全力で斬りつける。紫の狼は先程の一撃で弱ったのか逃げようとしているが、儂はそれに喰らい付く。
「これで……最後じゃ!」
左手の刀を捨て、右手の刀を両手に持ち替える。そして、足で地面を強く踏み締め、紫の狼の首へと全力の一撃。
振り下ろされた刀には抵抗を感じるが、その刀はそのまま振り抜かれ、床にまで到達する。
そして——斬り落とされた紫の狼の首が飛び、断面からは紫の血が噴き出し始める。
その直後、その体は横に倒れ、首を無くした体は……床に横たわり動かなくなった。
「悔しいが……これは助けられたかのう……」
儂がそう呟き振り返ると、堅持と御渡の小僧達は澄み切った顔で笑みを浮かべていた。
儂はそれを見てフッと笑う。
灰間の小僧……お主、調子に乗っておると此奴らに追い抜かれるかもしれんぞ?
♦︎
それに加えて城悟や早瀬、荻菜さん達も撃つ。すぐに補充可能な俺とは違い魔石の交換に間隔が大きく空いてしまうが、銃弾の雨は着実にその数を削っていく。
その結果、後数十メートルの距離で半数以上は銃の餌食となっていた。
しかし、状況は悪化する。
「おい!向こうからも来るぞ!」
孝が叫ぶと同時に、別方向の通路へと目を向ける。すると、そちらからも犬の大群がやってきているのが視認できる。
そちらへの対応にも人数を割かなければならない。だが、紫の狼側を放置すると爺さんが死角からの傷を負いかねない。
そこで、俺は決断する。
「増援の方は全て俺が対応する!皆は爺さんへのフォローに回れ!間違っても撃つなよ!」
「「暁門、任せたぞ!」」
俺の声に返したのは城悟と孝。あいつら……声が被ってるぞ。
だが、俺はそれに少し嬉しくなり、フッと笑う。こうして城悟や孝と共に戦う日が来るとは夢にも思わなかったが、案外悪く無いのかもしれないな。
俺は増援側へと走り、皆から五十メートル程離れた所で狼達を待ち構える。離れたのは、狼達の攻撃を全て俺に向けるため。
右手には刀、左手と宙に浮かぶのは魔石銃。相手は——数十もの犬の群れ。
「これは……骨が折れそうだな」
俺はそう呟いて、魔石銃の引き金を引いた。
♦︎
※城悟視点
くそッ!情けねえ!何が『ホープ』持ちだ!結局、暁門と柳の爺さんに任せきりじゃねえか!
今のオレの強さじゃ、二人の影に隠れて銃を撃つしか出来ない。紫の狼なんて、見ているだけで背筋が凍りそうだった。
もっと……もっと違う力がが欲しい!二人に任せきりなんてのは、オレは御免だ!
※孝視点
再会した暁門は……俺の手が届かない程の強さを持っていた。
それは『ホープ』だけじゃ無い。あの身体能力や行動の速さは、俺には真似できないものだ。
いつかは追いついてやろうとは思うが、まずは今の状況どうするかだ。今の俺に何が出来る?『現状把握』で敵の数なんて調べても何の役にも立たない。
もっと……何か別な力が欲しい。暁門とあの爺さん、二人の手助けが出来る、何かが……!
♦︎
※柳(爺さん)視点
「これは……中々……っ、」
周囲には紫の狼と、八匹の犬。儂はそれぞれの動きを察知しながら、二本の刀で攻撃を受け流し続けていた。常に目と体を全力で使っている事で、額には汗が滲んできているのが分かる。
これ程苦労したのは、アカグロ以来じゃのう……あの時でもここまで疲れる事は無かったんじゃが。
このままだとその内、見逃して攻撃を受けてしまう。じゃが……攻撃に回るほどの余裕は無い。周囲の援護も儂に当たるのを恐れてか、かなり控えめだしのう……。
灰間の小僧であれば、儂に当たりそうな位置でも容赦無く撃ってくるんじゃが……。
儂がそんな事を考えた時、右手の側面に見逃した犬がいる事に気付く。
……ッ!いつの間に居たんじや!
気付いた時には既に犬は儂に飛びかかろうとしていた。これは……間に合わん。
傷を負うのを覚悟した時。堅持の小僧の叫び声が聞こえた。
「緊急援護!」
その瞬間、飛びかかろうとしていた犬の姿が消え、代わりに堅持の小僧の姿が見えた。その手には鉄パイプを持ち、振り抜いたかのような体勢になっている。
「ギャゥン!」
犬の叫び声が後方から聞こえ、儂は察する。堅持の小僧……こやつ、瞬時に場所を移動して狼を殴り飛ばしおった。これも、こやつの能力かのう?
儂はそこで後方へと跳躍し、狼達から距離を取る。
だが、堅持の小僧は引かずに儂の居た場所に移動する。儂はその行動を見て声を上げる。
「な……っ!何をしとる!」
だが、あやつはそのまま防御の体勢を取った。顔の前で両手を交差し、次に来る攻撃に備えたのだ。
堅持の小僧に襲いかかる、犬の牙や爪。だが——それらの攻撃は全て、堅持の小僧に届くことは無かった。
見えない壁に阻まれるかのように狼達は弾かれていく。そして、それは紫の狼も同様。
「全員正面を撃て!城悟は気にするな!」
そして聞こえたのは御渡の小僧の声。儂がそちらに目を向けると、その目が赤く光っているように見えた。
その直後、声に反応した他の者達が一斉に銃を発射し、犬の群れを次々と撃ち抜いていく。
それは、まるで最適な瞬間を見計らったかのような、狼達が避ける事の出来ない見事なタイミングじゃった。
「爺さん!ボスを!」
儂はその御渡の小僧の声にハッとし、地面を強く蹴り堅持の小僧の脇を抜ける。その先に、残っていたのは紫の狼のみ。儂は攻撃に怯み無防備となったその体に刀を振り下ろした。
「ギャウゥゥッ!」
手に伝わる肉を斬る感触。これは確実に大きな傷を負わせた筈じゃ。
「『最善手』……爺さん、このまま押し切れ!」
儂はその声を信用し、二振りの刀を全力で斬りつける。紫の狼は先程の一撃で弱ったのか逃げようとしているが、儂はそれに喰らい付く。
「これで……最後じゃ!」
左手の刀を捨て、右手の刀を両手に持ち替える。そして、足で地面を強く踏み締め、紫の狼の首へと全力の一撃。
振り下ろされた刀には抵抗を感じるが、その刀はそのまま振り抜かれ、床にまで到達する。
そして——斬り落とされた紫の狼の首が飛び、断面からは紫の血が噴き出し始める。
その直後、その体は横に倒れ、首を無くした体は……床に横たわり動かなくなった。
「悔しいが……これは助けられたかのう……」
儂がそう呟き振り返ると、堅持と御渡の小僧達は澄み切った顔で笑みを浮かべていた。
儂はそれを見てフッと笑う。
灰間の小僧……お主、調子に乗っておると此奴らに追い抜かれるかもしれんぞ?
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