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三章 中央区

対立する者達 10 ダンジョンへ

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 そして翌日になり——俺達七人と孝達五人が、業務用スーパー近くに集まる形となった。各々の武器を持ち、ゴブリンの襲撃に備えている。

 孝達はそれぞれ鉄パイプや鉈、包丁といった武器、それに剣道や野球のキャッチャー用のプロテクターを身につけていた。その中でも武器を持たない者は『ホープ』で攻撃する手段が有るのだろう。
 俺達は魔石銃を持ち、腰に鉄パイプか刀、予備武器に拳銃。そして、そんな装備を見て孝達が口をぽかんと開けていた。

「お、おい……それ本物の拳銃か?」

 孝が恐る恐る、といった感じで俺に聞いてくる。

「いや?本物とは違うな」

 実際は魔石銃のエアガンでも拳銃並で、拳銃は遥かに高い威力を持っているのだが……驚かせるのに敢えて黙っていようと思う。
 本物とは違う。嘘は言ってないぞ?

「それじゃ、孝達は後ろで見ててくれ。撃ち漏らしは無いと思うが、もし来たら対応してくれ」

「ああ……分かった」

 俺は爺さん達六人に向き直し、指示を出す。

「駐車場は扇状に広がって進む。それぞれ配置について目についた敵を撃って良いぞ」

 そうして俺は人の配置を決めていく。一番前となる中央には早瀬、その隣に荻菜さんと城悟、更に外に二人。中には俺と爺さんが居て、それぞれのフォローへと回る。
 何故こんな布陣にしているかといえば、単に見栄えの問題だ。駐車場のゴブリンを蹴散らすだけなら、俺と爺さんが突っ込めばすぐ終わるが、他の連中も役に立つと分からせたかったのでやめておいた。

「あ、あのー……」

 早瀬が手を挙げて質問する。

「何だ早瀬?」

「何で私が中央なんですか!もっと強い、他の人にするべきだと思います!」

「え、何となく。別に危険じゃ無いし良いだろ」

 よく分からない事を言う早瀬は置いておいて、それぞれが配置につく。後は早瀬に合わせて進めば良いだけ。昨日軽く打ち合わせしただけだが、まあ何とかなるだろ。

「うう……も、もう!じゃあ行きますよ!」

 早瀬は追い詰められればちゃんと仕事をするタイプだ。銃の腕自体は別に悪くないし、後は本人のやる気の問題なんだが……。

 そうして、一糸乱れずとはいかないものの、何とか陣形を維持したまま駐車場へと侵入する。すると、すぐにゴブリン達が俺達を見つけ、襲ってくる。だが近づく前に魔弾の餌食となり、一発受けただけで次々と倒れていく。そして、俺達は車を避けつつそのまま進む。
 俺はやる事もなく、早瀬の発射した弾数を数えていた。そして二十発になった所で、指示を出す。

「荻菜さんと城悟以外は魔石を交換。二人は周囲警戒」

 俺の指示に従い、それぞれが指示通りに動く。そして三人の魔石の交換が終わると、次の指示。

「それじゃ交代。早瀬、ちゃんと見ろよ」

「分かってますって!」

 ゴブリンが寄ってくる様子も無く、そのまま魔石の交換が終わる。既に入り口の渦までは半分を切っているので、これで最後まで行けるだろう。

「マジかよ……」
「甘く見てたわ……」
「あの銃、何?」

 背後から孝達の呟きが聞こえるが無視。俺達はまた渦を目指して進み始める。
 そして——やはり前の所に比べれば駐車場が狭くてゴブリンの数も少なく、すぐに渦へと到着した。

「よし、休憩。俺と爺さんで監視」

 そう言うと、他の五人が腰を下ろす。まあ特に疲れては居ないだろうが念のため。中に入れば休めない可能性も有るからな。



 そして、俺達の行動を一通り見ていた孝が、俺に話しかけて来た。

「暁門……お前達が強いのは充分伝わった。その銃を作り出すのがお前の『ホープ』なんだろ?その強さはもう分かった、だから俺達はお前に……」

「おい孝待てよ。まだ目的の途中だぞ?最後まで見てから決めてくれよ」

 俺は孝の言葉を食い気味に遮る。

「最後まで?お、おい……まさか中に入るつもりか!?」

 孝が驚き目を見開き叫ぶ。俺からしてみれば今更?と言う思いなんだが……。まさか、駐車場の敵を倒して終わりな訳無いだろうが。

「当然だ。今日はその為にここに来たんだぞ?このまま、このダンジョン化した業務用スーパーを攻略するつもりだ」

 俺の言葉に驚愕する孝達……と爺さん以外の奴ら。
 おい、何でお前らまで驚いてんだ。昨日俺が言っただろ?……あれ?言ったよな?

「お前らまで何で驚いてるんだ?昨日確かに……」

 そこで早瀬が苦笑いしながら、声を上げる。

「灰間さんは敵を蹴散らすぞ、としか言ってませんよ!ちょっと待って!攻略するとか聞いてないです!」

 荻菜さんもため息を吐いてから話す。

「私も一言も聞いてないわ。そもそも攻略なんて、暁門君と柳さん以外経験してないじゃない。流石に前もって伝えて欲しいわ」

 爺さんは顎髭を弄り笑いながら話す。

「ハッハッハ!儂は薄々勘づいておったが、やはりのう。灰間の小僧はいつも言葉が足らん」

 城悟は慌てながら、顔を青くしている。

「お、おい!暁門大丈夫なんだろうな!?こんな適当な感じで突っ込んで死にたく無いぞ!?」

 ……どうやら言って無かったようだ。仲間からの批判が凄い。まあ、元々俺と爺さんだけで攻略するつもりだった。怪我されても困るしな。

「仕方ない。じゃあお前達は入り口で待ってて良いぞ。俺と爺さんだけでボスを倒すから見てろ」

 先程までの連帯感は無くなり、仲間達からはため息。孝達はそれを見て苦笑いしている。お互いの距離感は縮まったように思えるから、結果的には良かったんじゃないか?

 そうして、微妙な雰囲気が漂う中、俺達は二つ目となるダンジョンの攻略へと望むこととなった。
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