兵器創造のエリアルーラー 〜崩壊し領域が現れた現代、俺は『兵器』と『特性』を駆使して世界一の支配者を目指す〜

飛楽ゆらる

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二章 領域と支配

支配後 8 地元を離れて

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 翌日俺は領域内の人々を集めて移動する事について話していた。

「——という事で、俺について来る奴は手を挙げてくれ。これについては強制は無しだ」

 手を挙げたのは早瀬、荻菜さん、それと魔石回収班の二人。それ以外はこの場に留まる事を希望したようだ。

 この領域は暫くは安全だろうが、いつ狙われるかも分からない。それについて話はしたが、結果がこうなった事に別に疑問は無い。
 安定した暮らしを求めて変化を恐れるのは人として自然な事だと思うし、移動で危険が伴うために決めかねた人も多いのだろう。

「……分かった。中央区を目指すのは俺と爺さんを含めて六人。残る人達はこれから安田さんの指示に従って生活してくれ。だが俺が居なくなる以上、これから新たな武器は期待出来ない。だから今よりは生活は厳しいものになるだろうが……皆、協力して生き残ってくれ」

 俺が言うのはここまでだ。領域に人を集めたのは俺で、本来なら責任が有ると思っている。集めたけどやっぱり見捨てる、というのは割り切ったつもりでも流石に心苦しい。
 後残る人々に俺に出来ることは、出来る限りの武器を残していく事。それに関して魔石銃を作ることが出来たのは幸いだった。

 そしてその場を解散した後、安田夫妻を呼び出した。そこで俺が領域について知っている事を話し、それから領域へ入る為の許可を出せる権限を二人に与えた。
 安田夫妻両方に渡したのは、片方に何かが有ったとしても運営を行えるようにする為だ。何も無いのが一番だが、この環境では何が起こるかなんて分からない。
 だが今後この二人は領域を維持する為の生命線となる。もし二人が死んでしまえば、領域の中は衰退するしか無くなってしまう。これは安田さんを守る事にも繋がる筈だ。

「了解だ。そして灰間君、私達を迎え入れてくれた事、本当に感謝している」

「娘も居た事で断られるんじゃ無いかって、私達はそう思っていたの。友則さんの話では……その……灰間君は手段を選ばないような怖い人だって聞いていたから」

「俺は利益を優先しただけだ。安田さんが役に立つと思った、それだけだ」

 安田さん夫妻はそんな俺の言葉を聞いても微笑んでいる。

「灰間君。確かに君が利益だけを考えて私達を迎えたのだとしても、その結果私達は救われて感謝しているんだ。君の思惑がどうであれ、君はここに居る人達を救ったことにかわりないんだよ」

 安田さんは続ける。

「もし私達が生き残り君の事を伝えるのであれば、逃げ惑う人々に救いの手を差し伸べた英雄だろうね」

「……やめてくれ。俺はそんな風に言われるような事は何もしていない」

「君がどんな悪い事や自分本意な行動をしたとしても、それに感謝する人が居ればその人にとってそれは善意。それだけは分かっていて欲しいんだ」

 俺はいかに強くなるかと領域を増やすかしか考えて居ないんだが……。安田さんはあれだけこき使ったのに、まさか感謝の言葉を言われるとは思わなかった。
 ここまで感謝されるなんて一度も無かったから何だかむず痒い。思ってもみなかったから尚更だ。

「あーもう、この話は終わりだ。もし俺の事を伝えるなら自分勝手で好き勝手に命令してきた奴が居た、位にしてくれ」

 安田さん夫妻は俺の様子を見て笑う。俺はそれにため息を吐き、その後に真面目な顔に戻す。




「……安田さん。この領域の後の事はお願いします。正直、俺としても見捨てるようで後味が悪いんです」

「誰も見捨てたなんて思わないだろう。元々の目的は聞いていたし、むしろ裏切ったのは我々の方だ」

「それは仕方ないと思っています。そう思っているからこそ、俺と関わった人達には長く生きて欲しいんです」

「大丈夫だ。私達に任せてくれ。もし君が戻った時にはもっと大所帯となったこの場所を見せるさ」

「戻るかどうかは約束出来ませんが……そうですね。せめて元気な姿を見せて下さい」

 そこで俺と安田さんは握手を交わす。

「それより……その口調が灰間君の本当の姿なのかな?変貌振りに驚いたよ」

「さあ?どうでしょうかね?」

 安田さんの質問に俺は笑って誤魔化した。強くなろうと自己中心的で口が悪い俺と、今の安田さんと敬語で話している俺。どちらも本当の俺なのは、間違い無いのだから。




♦︎



 そして、更にその翌日。俺達六人は出発する為に旅支度を整えて渦の外に居た。それを残る人達全員が見送りに来ており、何だか不思議な感覚だ。

「それじゃ、行くぞ」



 俺の声と共に俺達は歩き始めた。この領域から離れ、もっと恵まれた環境を求めに。
 俺はそこで新たな拠点を作り、どこにも負けないような集団を組織する。そして支配領域を増やし、その報酬とやらでいつかトリセツに命令している奴を問い詰めてやる。

 ——俺がそうしていく内に、いつか沙生さんとの再会の時が訪れる。俺はそう信じていた。
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