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二章 領域と支配
領域支配 16
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俺は支配領域について分かった事を爺さんへと説明した。
聞いていた爺さんは商品棚の説明では喜んだ様子を見せたが、支配の点数や順位の箇所の説明には全く興味を示さなかった。
「一位になれば、もしかしたら世界を掌握出来るかもしれないぞ?」
「そんなもの興味が無いのう。それに、どうせ儂はその前に死んでおる」
「そこは曲げないんだな。なあ、爺さん。死ぬのはやめて、俺と一緒に日本全てを支配するのを目指さないか?」
俺の言葉に爺さんは意外そうな顔をした。
「なんだ、小僧は支配とやらに興味があるのか?……てっきり好きなおなごの事しか考えておらんのかと思ったわ」
「それが一番の目的なのは変わりない。だが、力を付けていくのなら支配領域に関しては避けて通れないと思う。だから、どうせやるんなら一番を目指しても良いんじゃないか?」
爺さんはため息を吐く。
「おなごのついでに世界征服か。それに巻き込まれた連中が不憫でしょうがないのう……」
「俺に協力するなら、それが誰だろうと悪いようにはしないつもりだ。だが敵対する奴には容赦するつもりは無いし、この後に及んで働かない奴も見捨てる」
「……割り切っとるのう。小僧はこの世界に随分と適応しておる」
「色々と嫌な思いをしたから、それで開き直っただけだ」
「それでも今を生き抜くには必要な事じゃ。すぐに諦めた儂とは違い、それを乗り越え糧としたお主は強い」
「戦ったら爺さんの方が強いと思うんだが……」
「はぁ……そういう意味では無い。ま、もういい。忘れろ」
……爺さんが死に場所を探すって決意は固く、どうやら変わらないようだ。それなら、俺はその邪魔をしてやればいい。爺さんにはまだまだ教えて貰うことが有るし死なれては困る。
なあ、爺さん。死ぬのが怖くて泥水を啜りながらでも生きるのと、死を受け入れて最後を飾る事を考えるのは、どちらが難しい選択なんだろうな。
——俺は、後者の方が余程強い人間に思えるんだ。俺は必死に足掻いているだけ。爺さんが思うような強い人間じゃない。
♦︎
俺達は話を終え、入り口に有る渦の前にやって来た。その目的は支配領域の確認。
「情報通りなら、外は安全になってて人も魔物も入ってこられない筈だ」
「ふむ。一つ疑問何じゃが、ここが小僧の支配下なら、儂は何で弾かれておらんのだろうな?」
爺さんの言葉に俺は顎に手を当てて首を傾げる。
「共闘してたから、システムのようなものが仲間と判断したんじゃ無いか?それか、俺が爺さんを仲間と判断しているのを何かしらの手段で読み取った……?」
「……意外と曖昧な所も有るんじゃな。注意しないとシステムとやらを利用される可能性もあるのう」
確かに支配領域を何としてでも奪い取ろうと考える奴らは出てくるだろう。その前にシステムについて検証しておかないとダメだな。
「ま、それは落ち着いてからにしよう。爺さん、念のため先に出てくれるか?」
「了解した」
そう言って爺さんは渦へと入っていく。俺はそれを見送ってから一呼吸置いた後、それを追って渦の中へと入った。
そうして俺が外へ出ると、外はまだ昼過ぎだった。空は雲も少なく、気持ちのいい青空が広がっている。
だがそこに有る筈の爺さんの姿は無く、荒れた駐車場の光景だけが広がっていた。
「あれ……もしかして……」
俺は一つの可能性が頭に過ぎる。支配下に置かれた直後のダンジョン内では、許可していない人間も弾き出される事が無い、という可能性。
「……柳 道唯が支配領域に入ることを許可する」
そう呟いて、俺はその場に胡座をかいて座る。そして、待つ事一分程。
「小僧!外へ出たら物凄い速度で領域外まで弾かれたんじゃが!さっきいってた仲間とは何だったんじゃ!」
そう叫びながら、ご立腹な様子の爺さんの姿が見え始める……どうやら俺の考えは当たっていたらしい。
近くに来た爺さんを眺めながら俺は笑う。
「はっはっは。どうやら爺さんは俺の仲間じゃ無かったらしい」
「……ほう。あれだけ老人を盾にしておいて良く言えるのう……」
爺さんの額に青筋が浮かび始めるのが分かる。
これはまずい、と思った俺は慌ててフォローを入れようとする。
「ちょっと待て!爺さん、今のは冗談だ!ちゃんと許可しただろうが!」
「何、システムの検証じゃよ。もし支配した者が居なくなったら支配領域はどうなるのかのう……」
「そ、それは知りたいが……いや、そうじゃ無い!爺さん刀を納めろ!」
その後、俺は散々爺さんに仕返しを受ける。
それは結局俺がオブジェクト化した食事を思い出し、爺さんの気を逸らすまで数分続いた。
俺は解放されたが疲労感が酷い。爺さんは渦の中へと走って既に姿を消している。
まぁ……丁度良いし、オブジェクト化した商品棚のテストを行う事にするか。消費期限、大丈夫だよな?
聞いていた爺さんは商品棚の説明では喜んだ様子を見せたが、支配の点数や順位の箇所の説明には全く興味を示さなかった。
「一位になれば、もしかしたら世界を掌握出来るかもしれないぞ?」
「そんなもの興味が無いのう。それに、どうせ儂はその前に死んでおる」
「そこは曲げないんだな。なあ、爺さん。死ぬのはやめて、俺と一緒に日本全てを支配するのを目指さないか?」
俺の言葉に爺さんは意外そうな顔をした。
「なんだ、小僧は支配とやらに興味があるのか?……てっきり好きなおなごの事しか考えておらんのかと思ったわ」
「それが一番の目的なのは変わりない。だが、力を付けていくのなら支配領域に関しては避けて通れないと思う。だから、どうせやるんなら一番を目指しても良いんじゃないか?」
爺さんはため息を吐く。
「おなごのついでに世界征服か。それに巻き込まれた連中が不憫でしょうがないのう……」
「俺に協力するなら、それが誰だろうと悪いようにはしないつもりだ。だが敵対する奴には容赦するつもりは無いし、この後に及んで働かない奴も見捨てる」
「……割り切っとるのう。小僧はこの世界に随分と適応しておる」
「色々と嫌な思いをしたから、それで開き直っただけだ」
「それでも今を生き抜くには必要な事じゃ。すぐに諦めた儂とは違い、それを乗り越え糧としたお主は強い」
「戦ったら爺さんの方が強いと思うんだが……」
「はぁ……そういう意味では無い。ま、もういい。忘れろ」
……爺さんが死に場所を探すって決意は固く、どうやら変わらないようだ。それなら、俺はその邪魔をしてやればいい。爺さんにはまだまだ教えて貰うことが有るし死なれては困る。
なあ、爺さん。死ぬのが怖くて泥水を啜りながらでも生きるのと、死を受け入れて最後を飾る事を考えるのは、どちらが難しい選択なんだろうな。
——俺は、後者の方が余程強い人間に思えるんだ。俺は必死に足掻いているだけ。爺さんが思うような強い人間じゃない。
♦︎
俺達は話を終え、入り口に有る渦の前にやって来た。その目的は支配領域の確認。
「情報通りなら、外は安全になってて人も魔物も入ってこられない筈だ」
「ふむ。一つ疑問何じゃが、ここが小僧の支配下なら、儂は何で弾かれておらんのだろうな?」
爺さんの言葉に俺は顎に手を当てて首を傾げる。
「共闘してたから、システムのようなものが仲間と判断したんじゃ無いか?それか、俺が爺さんを仲間と判断しているのを何かしらの手段で読み取った……?」
「……意外と曖昧な所も有るんじゃな。注意しないとシステムとやらを利用される可能性もあるのう」
確かに支配領域を何としてでも奪い取ろうと考える奴らは出てくるだろう。その前にシステムについて検証しておかないとダメだな。
「ま、それは落ち着いてからにしよう。爺さん、念のため先に出てくれるか?」
「了解した」
そう言って爺さんは渦へと入っていく。俺はそれを見送ってから一呼吸置いた後、それを追って渦の中へと入った。
そうして俺が外へ出ると、外はまだ昼過ぎだった。空は雲も少なく、気持ちのいい青空が広がっている。
だがそこに有る筈の爺さんの姿は無く、荒れた駐車場の光景だけが広がっていた。
「あれ……もしかして……」
俺は一つの可能性が頭に過ぎる。支配下に置かれた直後のダンジョン内では、許可していない人間も弾き出される事が無い、という可能性。
「……柳 道唯が支配領域に入ることを許可する」
そう呟いて、俺はその場に胡座をかいて座る。そして、待つ事一分程。
「小僧!外へ出たら物凄い速度で領域外まで弾かれたんじゃが!さっきいってた仲間とは何だったんじゃ!」
そう叫びながら、ご立腹な様子の爺さんの姿が見え始める……どうやら俺の考えは当たっていたらしい。
近くに来た爺さんを眺めながら俺は笑う。
「はっはっは。どうやら爺さんは俺の仲間じゃ無かったらしい」
「……ほう。あれだけ老人を盾にしておいて良く言えるのう……」
爺さんの額に青筋が浮かび始めるのが分かる。
これはまずい、と思った俺は慌ててフォローを入れようとする。
「ちょっと待て!爺さん、今のは冗談だ!ちゃんと許可しただろうが!」
「何、システムの検証じゃよ。もし支配した者が居なくなったら支配領域はどうなるのかのう……」
「そ、それは知りたいが……いや、そうじゃ無い!爺さん刀を納めろ!」
その後、俺は散々爺さんに仕返しを受ける。
それは結局俺がオブジェクト化した食事を思い出し、爺さんの気を逸らすまで数分続いた。
俺は解放されたが疲労感が酷い。爺さんは渦の中へと走って既に姿を消している。
まぁ……丁度良いし、オブジェクト化した商品棚のテストを行う事にするか。消費期限、大丈夫だよな?
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