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一章 見捨てられた地方都市と『希望の力』

トリセツ

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 俺は自宅へと戻り、玄関のドアに背をつけて座り込んでいた。
 
 俺が手に入れた『希望の力ホープ

 まだ実感は湧かないが、あの瞬間……俺は確かに無から銃を作り出した。死を間近に感じて時間の流れが緩やかになった時、瞬時に武器を作りだせると理解した。

 俺は二枚のメモ用紙を見つめる。これはゴブリンとの戦いが終わった後に地面に落ちていた物だ。
 一枚目にはパソコンで打たれたような文字でこう書かれている。

ーーーーーー

兵器取扱説明書

武器タイプ/エアガン
特性/『威力マイト』『衝撃インパクト
弾/BB弾(最大30発)

補足/特性指示が無かった為『衝撃インパクト』はランダム特性となります。

本日の作成可能数(1/2)

ーーーーーー

「随分親切な能力だな」

 作り出した兵器の能力が書いてあるのは有り難い。これがあれば比較も出来て、能力の検証も行える。作成可能数はそのままの意味で、一日に二個作れるって事だろう。

「それにしても……エアガンかよ」

 あの時俺がイメージしたのは警官が持っているような拳銃だった。それなのに出てきたのはトカレフのエアガン。
 いや、確か昔に同じようなエアガンを持ってたけどさ。

 能力に条件でも有って、強い武器は作り出せないのか?もしそうなら一気に使えない能力に格下げになるが……。

 もう一枚のメモ用紙へと視線を移す。そしてそこに書かれていた最初の文字に目を奪われてしまう。

「能力取扱説明書!?」

 まさかの超親切設計だ。俺は食い入るようにメモ用紙を眺め、文字に目を走らせる。

ーーーーーー

能力取扱説明書

 パンパカパーン!ご主人様、能力の覚醒おめでとうございます!
 わたしはあなたのサポートをする取扱説明書です!これからトリセツちゃんって呼んで下さいね!

ーーーーーー

 ここまで読んで軽く目眩がする。
 
「え、何で取扱説明書が喋ってんの?いや喋っては無いけど、取扱説明書が何で自我持ってんの!?」

 取扱説明書にツッコミを入れつつ、先に読み進める。

ーーーーーー

 ふっふっふ。ご主人様はどうやら驚いているようですね!そうです!わたし、自分で考えて文字書けちゃうんです!

ーーーーーー

「俺の行動を先読みすんじゃねえ!」

ーーーーーー

 あ、ごめんなさい。これ以上話してると文字数足りなくなるので、説明に入らせて頂きます。

ーーーーーー

「急に真面目になるなよ……てか話してるのかよ……」

 数行読んだだけで既に疲れたんだが。

ーーーーーー

 ご主人様の能力、ホープって呼んでいるものはですね、『兵器作成ウェポンクリエイト』という能力です。
 既に経験したので理解していると思いますが、ズバリ!イメージした武器や軍事施設を作れちゃう能力なんです!すごい!拍手!


 ただーし!『兵器作成ウェポンクリエイト』には条件が有って、作れるようになるにはその条件をクリアしないといけません!

 ひとつ!ベースとなる物は今まで触れた事が無いと作れません!ご主人様は本物の拳銃を触った事が無いので、触れたことがあるエアガンになってしまったんですね!

 ふたつ!能力が成長しないと強い物や便利な物作れません!いっぱい作ってレベルアップして下さい!あ、本物の拳銃なんてまだまだ先ですよ!先は長い!

 みっつ!作れる物は戦いに使うような武器、施設に限ります!食べ物や便利な道具は頑張って自力で探して下さいね!


 あ、文字数が!本当はまだまだ伝える事がいっぱいあるんですが、最後に一番大事な事を言っておきます!
 わたしがこうして話せるのは能力が成長した時だけです!ご主人様が寂しくなってもすぐに会えないんです!残念ですか?残念ですよね?
 
 あ、もう文字数が限界です!以上!あ・な・た・のトリセツちゃんでし

ーーーーーー

「おい、最後文字切れてんぞ」

 最後くらいちゃんと締めろよ。他に削るところ有るだろ。

 俺のサポートと名乗るトリセツ。どうやら自己主張が非常に強い、曲者のようだ。何でだよ取扱説明書なのに。
 けれど能力の説明が有ったのは本当に助かった。そこだけは感謝しておこう。ウザイし、ちゃんなんて絶対に付けないけどな。

「というかこれ、明らかに説明しきれて無いだろ。兵器取扱説明書に載ってる作成可能数の説明も無かったし、特性についての説明も無い。おい、トリセツ。ちゃんと仕事しろよ!」

 一人で取扱説明書に怒っていると考えると非常に虚しい。
 怒るだけ無駄だな。飯にして休憩しよう。

 ……なんだか戦いよりも疲れた気がする。
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