VRMMOを始めただけなのに、何故世界の危機に巻き込まれたのだろうか?

飛楽ゆらる

文字の大きさ
上 下
84 / 85
5.神域解放

80.無限回廊 2

しおりを挟む
 オレ、リリー、さら、佐山さん、鈴さんの五人は無限回廊の中へと転送される。
 入り口の立て札には51階の文字。どうやら問題なく階層スキップチケットが使えたようだ。

「序盤は消耗品の温存を優先で。恐らく70階位から使わざるを得なくなるから」

 オレの言葉にそれぞれが返事をする。
 こうして指示を出してるオレも、実は80層までしか行ったことがない。その時は一階からだったので、残念ながら佐山さんの時間切れとなってしまった。

(だが今回はリチャードさんから90階までの情報も入手した…!)

 オレは今回の攻略を少しでも楽にする為に81階から90階までの情報をリチャードさんから買った。
 情報はとても大事だ。時にそれは大金にも繋がる。
 ……リチャードさんが要求した代金は、オレの所持していた神装備。お金で考えると大金だが、独占された攻略情報には変えられない。
 だがリチャードさんに吹っ掛けられてたと分かったのは、手渡した後だった。

(何としてでも元を取らねば…!)

 いつにも増して気合いが入る。神との戦い以外でこんなにやる気なのは初めてだ。
 そんなオレを他のパーティーメンバーは不思議そうな目で見ている。

 51階から59階までは普通のモンスターしか出ず、サラと佐山さんの範囲攻撃でサクサク攻略していく。
 だが10の倍数の階にはランダムに強敵が出る。つまりこの60階でも厄介な敵が出る可能性が高い。
 敵を確認する為オレが先行し、ゆっくりと先へ進む。

(相性の良い敵なら良いんだけど…)

 そこに居たのは…3メートル以上有る緑の巨体と頭には金色に輝く大きな王冠。オークの王"オークキング"だった。
 オレは待っている四人の元へと戻り作戦を伝える。

「敵はオークキングだった。蹴り技が得意だけど後方からの攻撃に弱かった筈だ。それと弱点は火。オレが囮するから、それぞれヘイト稼ぎ過ぎないよう攻撃。特にサラがヘイト取ると移動されて壊滅しかねないから気をつけて」

「了解。気をつけるわ」

「じゃあ行くよ」

 オレは強化魔法を掛けてオークキングに向かう。10匹以上取り巻きのオークが居たが、オレに接近する前に佐山さんの範囲攻撃により屠られる。
 オレはオークキングの軽快な足技を避けながら、攻撃を挟んでヘイトを稼ぐ。パーティーメンバーもオレの攻撃以上にダメージを与えないよう、調整しながら攻撃を行う。
 確かに強敵だが、ヴァルキリーさんに比べたら遥かに弱い。
足が大きくて範囲はそこそこだが、一発の攻撃が遅すぎる。

(…そろそろか)

「"連打拳"、"粉砕拳"」 

 オレのスキル使用を合図に、パーティーメンバーが全力で攻撃を開始する。

 リリーの足技や佐山さんの刀スキルがオークキングを怯ませ、そこを狙ったサラの火矢が頭にクリティカルヒットする。
 オークキングは更に体勢を崩し、そこに後方から駆け寄った鈴さんの剣とオレの二撃目が追い討ちをかける。

 すると…力を失い倒れ込む巨体。オークキングは瀕死時強化を使う前に体力を失い、粒子の光となって消失する。

 オレ達は全員でハイタッチし、勝利を喜び合う。

「さて、ここの宝は何が出るか…」

 オークキングを倒したことで部屋の中心に宝箱が出現する。
 無限回廊の報酬はこうやって強敵を倒した際に入手することができる。尚…今回は50階までスキップしたため、その分の報酬は今回は入手出来ない。

「樹開けてよ。一番運良さそうだし。良い意味でも悪い意味でも」

「あーそれ分かる。運良くなきゃ、あれだけ神に遭遇出来ないわね」

 リリーと鈴さんがオレを茶化してくる。

「いやいや。神に偶然遭遇するのは運悪いだろ…。実際死に掛けてるし。もしそれで運使ってたらオレの運は使い切ってる」

「結局良い方向になってるなら運は良いんじゃないか?」

「そうそう。ギリギリのタイミングで助けられたり、アイテムで助けられたり」

 佐山さんとサラもかよ!

「まあ良いよ。じゃあ開けるよ」

 オレは宝箱の蓋を開け、中を確認する。

「うーん……微妙かな?」

 宝箱の中には紫色に輝く石。ミスリル鉱石だ。オレはそれを手に取りみんなに見せる。

「いやいや。数万Gするし大当たりだから」
 
 とリリー。

「え、そう?最近金銭感覚おかしくなってるかな」

「今更?ポンと神の装備渡す時点でおかしいわよ…」

 とサラ。

 オレの金銭感覚は普通のつもりだったが、どうやらおかしくなってきているようだ。…考えを改めないとだな。

 オレはミスリル鉱石をイベントリに仕舞う。

「よし、じゃあこの調子で行くか」

「60階がこんなあっさり行くとは思わなかったわ。でも、気を引き締めて行きましょう」

 と鈴さん。

 オレ達は更に上を目指し、無限回廊を登っていく。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)

あおっち
SF
  脈々と続く宇宙の無数の文明。その中でより高度に発展した高高度文明があった。その文明の流通、移動を支え光速を超えて遥か彼方の銀河や銀河内を瞬時に移動できるジャンプ技術。それを可能にしたジャンプ血清。  その血清は生体(人間)へのダメージをコントロールする血清、ワクチンなのだ。そのジャンプ血清をめぐり遥か大昔、大銀河戦争が起こり多くの高高度文明が滅びた。  その生き残りの文明が新たに見つけた地、ネイジェア星域。私達、天の川銀河の反対の宙域だった。そこで再び高高度文明が栄えたが、再びジャンプ血清供給に陰りが。天の川銀河レベルで再び紛争が勃発しかけていた。  そして紛争の火種は地球へ。  その地球では強大な軍事組織、中華帝国連邦、通称「AXIS」とそれに対抗する為、日本を中心とした加盟国軍組織「シーラス」が対峙していたのだ。  近未来の地球と太古から続くネイジェア星域皇国との交流、天然ジャンプ血清保持者の椎葉清らが居る日本と、高高度文明異星人(シーラス皇国)の末裔、マズル家のポーランド家族を描いたSF大河小説「メジャー・インフラトン」の前章譚、7部作。  第1部「太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!」。  ジャンプ血清は保持者の傷ついた体を異例のスピードで回復させた。また血清のオリジナル保持者(ゼロ・スターター)は、独自の能力を飛躍的に引き上げる事が出来たのだ。  第2次大戦時、無敵兵士と言われた舩坂弘氏をモデルに御舩大(ミフネヒロシ)の無敵ふりと、近代世界のジャンプ血清保持者、椎葉きよし(通称:お子ちゃまきよし)の現在と過去。  ジャンプ血清の力、そして人類の未来をかけた壮大な戦いが、いま、始まる――。  彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。  本格的な戦闘シーンもあり、面白い場面も増えます。  是非、ご覧あれ。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

ユニーク職業最弱だと思われてたテイマーが最強だったと知れ渡ってしまったので、多くの人に注目&推しにされるのなぜ?

水まんじゅう
SF
懸賞で、たまたま当たったゲーム「君と紡ぐ世界」でユニーク職業を引き当ててしまった、和泉吉江。 そしてゲームをプイイし、決まった職業がユニーク職業最弱のテイマーという職業だ。ユニーク最弱と罵られながらも、仲間とテイムした魔物たちと強くなっていき罵ったやつらを見返していく物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

初めての異世界転生

藤井 サトル
ファンタジー
その日、幸村 大地(ゆきむら だいち)は女神に選ばれた。 女神とのやり取りの末、大地は女神の手によって異世界へと転生する。その身には女神にいくつもの能力を授かって。 まさにファンタジーの世界へ来た大地は聖女を始めにいろんな人に出会い、出会い金を稼いだり、稼いだ金が直ぐに消えたり、路上で寝たり、チート能力を振るったりと、たぶん楽しく世界を謳歌する。 このお話は【転生者】大地と【聖女】リリア。そこに女神成分をひとつまみが合わさった異世界騒動物語である。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜

FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio 通称、【GKM】 これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。 世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。 その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。 この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。 その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...