VRMMOを始めただけなのに、何故世界の危機に巻き込まれたのだろうか？

5.神域解放

78.戦況

　怒涛の卒業式から一ヶ月が過ぎ季節は4月中旬となった。

　RDO内では神々の侵攻が複数回あったが、各国の協力体制が整った事、政府が協力を依頼したプレイヤー達の数も増加したことで、プロテアの時のように被害が出る事は無かった。

　またＲＤＯの追加販売も数回行なわれ、プレイヤー数も右肩上がりに増加している。それに加えて今ではプレイヤーの平均レベルも80以上となり、政府によるゴールドの配布により全体的な質は向上している。
　神々やモンスターとの戦い方についても、攻略サイトの充実や解説動画が多く公開された事で初心者でも成長は早い。これについては政府関係プレイヤーが、プレイヤーの質の底上げを目標に尽力していた事が実ってきた部分が大きい。

　ただし…天使の相手であれば単独攻略出来るプレイヤーは増えてきたのだが、神や名前付きの巨人に対しては一部のプレイヤーしか対応出来ていないのが現状だ。
　それに加えてLvも限界値の99で止まってしまう事でトップ層のプレイヤー達の伸び悩みが現在の課題となっている。結果として、神の脅威は以前と変わっていない。


　だが…徐々にだが確実に、戦況はプレイヤー側へ傾いて来ていた。そして、それを後押しするシステムがつい先日発見された。

　ある日政府関係者である一人のプレイヤーがレベル限界突破の方法を公開した。その内容はレベル99のステータスをさらに上昇させる事が出来ると言うもの。
　その内容に全てのプレイヤーが驚かされる事になった。

　レベル限界突破の方法を公開したのは…RDOのトッププレイヤーとも噂される上野樹というプレイヤー。

　誰よりも早くレベル99に到達した彼が公開するまでに時間が掛かった理由は、レベル限界突破についての説明もヒントも全く無く全ての手探りで検証していたことに他ならない。
　
　そして判明した内容は…レベル限界突破クエストを完了した上で、Ｌｖ1～99と同等の経験値を再度稼ぐこと。
　そうする事で全てのステータスが1とスキルポイントが1増加する事が分かったのだ。そしてそれは一度だけでは無く、複数回行う事ができる。
　勿論その経験値を稼ぐのに多くの時間が必要で、未だに喧嘩突破の上限は判明していない。

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　そして誰よりも早くレベル限界突破を発見したオレは、現在20回のレベル限界突破を行ったが、未だに上限に達して居ない。

　現在のステータスは、限界突破を含めてこうなっている。

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称号（恋のキューピッド）
上野　樹　（かみの　いつき）
ギルド：ラグナロク

武器種：ナックル

職業モンク上級　Lv.99+20

ステータス/
STR - 103+20　（OP+20%)
VIT - 42+20
AGI - 103+20　（OP+20%)
DEX - 62+20
INT - 42+20
LUK - 21+20

成長傾向/
STR　5　VIT2　AGI　5　DEX3　INT2　LUK1

スキル/余り0pt
（パッシブスキル）
ナックル修練Lv1,キック修練Lv1,上級格闘修練Lv10,
鉄壁Lv10,強気功Lv1,見切りLv1
（アクティブスキル）
掌底Lv5,連打拳Lv5,
気弾Lv7,粉砕拳Lv1,連風脚Lv1
阿修羅Lv10,頭乱脚Lv3,残像Lv5,(気砲）
（マジックスキル）
パワーブレスLv1,スピードアップLv10,リジェネレートLv3
ヒールLv5,キュアLv3,プロテクションLv1

装備/
ユミルの黒き腕+10
ヴァルキリーメイル上+8/ヴァルキリーメイル下+8
ヴァルキリーヘルム+8/ヴァルキリーブーツ+9/
/ヴァルキリーリング/ヴァルキリーリング

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　ステータスは大きな変化は無く実感できて居ないが、装備品に関してはは強化値が上がり精錬ボーナスによる強化は大きい。
　そしてもう一つ新たに判明したのだが、名前付きの神や巨人の装備品は、精練に失敗してもロストせずに修復が可能だった。その為ユミルの黒き腕は＋10になり、神に対しては破格の性能を持つ武器となった。
　ヴァルキリー装備は、ヴァルキリーが中ボス扱いで出てくることが多くなってきた為、かなりの高額だが市場に出回るようになった。オレは動きやすさと思い入れから愛用している。
　…まあ出回るようになったと言っても、一つで数十万Gはするのだが。

　そしてその上のランクとなる、神の装備品は魅力的な能力を持つものが多く基本的な能力も高い。基本的には討伐した政府プレイヤーが所持し管理しているが…稀に一般プレイヤーが獲得する事もある。
　神の装備品がオークションに出品された場合、装備一つで百万Ｇは軽く超える。強い効果を持つ大剣が出品された際には注目が集まり、何と三千万Ｇを超えた。
　
　そんな事もあり装備品目当ての一般プレイヤーも多く神との戦いに参戦するようになってきた。


　後はオレの周囲やギルド"ラグナロク "の変化について。

　リリーとサラはイギリス政府、鈴さんは日本政府の要請を受け関係プレイヤーとなった。それに加えて佐山さんと鈴さんはギルド”ラグナロク”に加入。

　今ではラグナロクは1つのギルドでは限界を迎え、今では3つの姉妹ギルドが出来るまでに成長した。
　ギルドメンバーも100名を超え、それだけ集まれば普通一枚岩とはいかなくなるのだが…並木さんはそれを難なく統率し、不満一つ出さずにギルド運営をしている。
　並木さんのカリスマ性と能力によって為せる技だろう。

　そして思わせぶりに言っていた、オレの進路について。
　クレームを入れに行った時に、間宮防衛大臣から一つの提案を受けた。

　それは日本政府の要請を受けた協力関係のプレイヤーでは無く、政府の指示の元に動く自衛隊に入らないか、という提案だ。
　とはいってもオレの活躍はほぼ全ての国が知っているそうで、それを踏まえて日本政府から強制的な指示は出さないという条件付き。
　そんな条件付きでも、もしオレが活躍した場合に所属している日本政府の株が上がるそうで、何と総理からの依頼だそうだ。
　勿論協力は惜しむつもりもないし、今のように自由に動く事を認めてくれるのなら良いか、とオレはその提案を受け入れた。

　そして…その関係でオレは防衛大に入学する事になった。いや、入学して"通っている事になっている”。
　実際は日本政府の施設でＲＤＯをプレイするだけで、大学に行き講義を受ける必要も無い。だがそれだけで単位をもらえて卒業も認めてくれるらしい。
　それに日本政府から少なくは無い給料も出ているし外出も自由。おまけに政府関係の情報まで一早く聞く事ができる。
　オレにとって最高の環境で大学卒までついてくる。至れり尽くせりだ。
　まあ、他の防衛大の生徒からは白い目で見られているに違いないのだが。

　そして、この特殊枠はオレ以外にもう一人存在する。

　それは佐山　鈴。オレと同じ高校でクラスメイトだった女性だ。
　本当は鈴さんは他の大学への進学を決めていたのだが、RDOの真相を聞いた後、間宮防衛大臣からの提案を即決で受け入れたそうだ。
　父親の佐山さんは全く相談も無く承諾した娘に驚愕したそうだ。
　鈴さんの決断力は凄いが相談位しても良かったんじゃ…いや、オレが言えた事じゃ無いな。

「でもお父さんがいい歳してゲームにハマってた理由が分かって良かったわ。お母さんと家出て行くか話してた位だったし。割と本気で」

　と鈴さん談。…本当に佐山さん良かった。

　まあそんな状況であり、現在ではRDOはプレイヤー側優勢となっている。この状況に間宮防衛大臣からの話では、各国の政府も現在の戦況に満足しているようだ。

　このまま”神域”開放後も順調に行ってくれれば良いのだが……。

　各国政府はプレイヤー側の状況に満足しているが、一部のプレイヤー達は不安を抱えたまま時間は過ぎていく。

　プレイヤー側が攻め手となる…神域開放まであと数日。