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4.プロテア防衛戦
75.卒業
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3月中旬。卒業式日和といえるほど、3月には珍しい晴れた空。
今日はオレの通っている高校の卒業式の日。
元々人付き合いを避けていたオレは、高校での友人はほぼ居ない。その友人も学校で少し話す位で、学校外では遊びには行かない程度。
そんなクラスでも地味なオレの生活は、RDOを始めて半月程で大きく変わってしまった。
最近はコンビニへ行っただけでも声を掛けられる事が有るし、握手やサインまで求められる事があり、まるで有名人にでもなったような気分だ。特にサインは考えて無かったのでテンパってしまった。
あまりにも頻度が多くなってきたから、変装が必要かもしれない。いや……自意識過剰か?
そんな悩みを並木さんに相談したら「上野君は自己評価が低すぎる。君は有名なんだと意識しても良い」と言われた。
…とにかくそんな状態で卒業式に行くのが非常に憂鬱なのだ。
地味な奴が急に有名になった事で、クラスメイトや学校の人の反応が非常に気になってしまう。
昨日はそんな事を考えていて眠れずに朝を迎え、高校の制服を着てみたのは良いのだが…足取りは重く、玄関を出る一歩が進まない。
(やばい、胃が痛い。…よし……さぼるか…)
オレが心の中でそう決めようとした瞬間、狙ったかのようにチャイムが鳴り響く。
(ん…宅急便か?何か頼んでたっけ?)
「はーい」
オレが返事をしながら玄関のドアを開けると、そこには……同じ高校の女子用制服を着ている、黒髪ロングポニーテールの美少女。
クラスメイトである鈴さんが仁王立ちしていた。
「えっ?」
突然の事にオレは混乱し部屋の中に戻ろうとする。だが鈴さんはオレの手掴まえ一言。
「上野君、卒業式さぼる気だったでしょう?そんな気がして迎えに来たの。さあ……いくわよ」
強引に引っ張られるオレ。必死に抵抗するが、本気の剣道女子の力に負けて引きずられてしまう。
「えっ…ちょ……いや、それよりもなんで家知ってんの!?」
「並木さんに聞いたわ。さあ早く!遅刻するわよ!」
何故かオレの個人情報が筒抜けだ。
そしてこうなることを分かっていたであろう、並木さんの笑う顔が思い浮かぶ。
(並木さん。後で文句言いますよ……)
そう思いながらオレは、鈴さんに学校の方向へと引きずられていった。
引き摺られるのも恥ずかしいので、途中で諦めて素直に学校へと向かう。勿論隣には鈴さん。
そんな鈴さんには隙が全く無く、逃げるのは不可能。
(ん、まてよ…このシチュエーションって!?)
美少女のクラスメイトと一緒に学校へ登校しているという、男なら誰もが憧れるシチュエーションではないか。
それはオレのようなモテない男には夢のような状況だ。
(ふっ…だがその事実に気づいても、挙動不審になったりはしないぞ…)
歩きながら自然と鈴さんと会話が出来ている。
NPCのアイシャさんとの会話でも躓いていたオレと比べるとすごい進歩だ。
(そう思うと…RDOで免疫付いたかな……)
RDOではリリーやサラ、そして鈴さんといった美女・美少女に囲まれていてそれが普通になっていた。
会話を続けるうちに、女性への苦手意識を緩和してくれたのだろう。
(ありがとうRDO!!)
オレは事実に気づき感動していたのだが、ふと隣の鈴さんを見ると白い目でこちらを見ていた。
「上野君…流石にその顔は気持ち悪いわ……」
…オレは一体どんな顔をしていたのだろうか。
そんなこんなで高校の校門が見えてきてしまった。
ただ校門に居る生徒の数が異常で、その中には教室に入れと叫んで防波堤となっている先生達の姿も見える。
ただ先生も生徒の勢いを抑えきれて居らず、生徒の波は欠壊寸前。
「あれ?鈴さん何か校門に人多くない?」
「うわ。まさかここまでとは……じゃ、上野君頑張って!私先行ってるから!」
「え、ちょっ!?」
鈴さんがオレから離れていく。連れてきておいてそんな薄情な!
校門に居る生徒達から次々と声が挙がる。
「来たぞ!あれが上野だ!」
「上野先輩!握手して下さい!」
「サインください!」
多数の声と同時に先生達の防波堤が崩壊する。
オレは逃げようと戻る前に…生徒の波に飲まれていった。
------
そしてそんな騒ぎが収まるまで一時間が掛かり、卒業式の開始も同時に遅れてしまっていた。オレのせいじゃないけど、本当にごめんなさい。
ホームルームから卒業式の開始までの間、オレは机に突っ伏して体力を回復していた。握手とサイン続きで、オレの両腕がプルプルと震えている。
「……お疲れ様。いやー予想以上だったわね」
そう笑いながら言うのはオレを見捨てた鈴さんだ。オレは恨めしい目を鈴さんへと向ける。
「鈴さんもRDOでは有名なはずなのに……何でオレだけ……」
「私のとこにも数人来たわよ?でも、配信でプレイヤー以外の人も見てるのが大きいんじゃない?」
確かに今の時代、動画配信の有名人となればテレビの有名人と大差無いかもしれない。
オレが並木さんに抱いていた憧れも同じような感じだった。そういったレアキャラ感が出たのか…。
「はあ…」
普通の女の子に戻りたいと卒業したアイドルが居た。オレはその意味が少し分かった気がした。
そしてそんな疲れ切ったオレに追い討ちが。鈴さんが話しかけたのを切っ掛けに、クラスメイトによるオレへの質問攻めとサイン会が始まる。
体力は既にゼロだ。…クラスメイトの質問に何を喋ったのかオレは覚えていない。
------
今日はオレの通っている高校の卒業式の日。
元々人付き合いを避けていたオレは、高校での友人はほぼ居ない。その友人も学校で少し話す位で、学校外では遊びには行かない程度。
そんなクラスでも地味なオレの生活は、RDOを始めて半月程で大きく変わってしまった。
最近はコンビニへ行っただけでも声を掛けられる事が有るし、握手やサインまで求められる事があり、まるで有名人にでもなったような気分だ。特にサインは考えて無かったのでテンパってしまった。
あまりにも頻度が多くなってきたから、変装が必要かもしれない。いや……自意識過剰か?
そんな悩みを並木さんに相談したら「上野君は自己評価が低すぎる。君は有名なんだと意識しても良い」と言われた。
…とにかくそんな状態で卒業式に行くのが非常に憂鬱なのだ。
地味な奴が急に有名になった事で、クラスメイトや学校の人の反応が非常に気になってしまう。
昨日はそんな事を考えていて眠れずに朝を迎え、高校の制服を着てみたのは良いのだが…足取りは重く、玄関を出る一歩が進まない。
(やばい、胃が痛い。…よし……さぼるか…)
オレが心の中でそう決めようとした瞬間、狙ったかのようにチャイムが鳴り響く。
(ん…宅急便か?何か頼んでたっけ?)
「はーい」
オレが返事をしながら玄関のドアを開けると、そこには……同じ高校の女子用制服を着ている、黒髪ロングポニーテールの美少女。
クラスメイトである鈴さんが仁王立ちしていた。
「えっ?」
突然の事にオレは混乱し部屋の中に戻ろうとする。だが鈴さんはオレの手掴まえ一言。
「上野君、卒業式さぼる気だったでしょう?そんな気がして迎えに来たの。さあ……いくわよ」
強引に引っ張られるオレ。必死に抵抗するが、本気の剣道女子の力に負けて引きずられてしまう。
「えっ…ちょ……いや、それよりもなんで家知ってんの!?」
「並木さんに聞いたわ。さあ早く!遅刻するわよ!」
何故かオレの個人情報が筒抜けだ。
そしてこうなることを分かっていたであろう、並木さんの笑う顔が思い浮かぶ。
(並木さん。後で文句言いますよ……)
そう思いながらオレは、鈴さんに学校の方向へと引きずられていった。
引き摺られるのも恥ずかしいので、途中で諦めて素直に学校へと向かう。勿論隣には鈴さん。
そんな鈴さんには隙が全く無く、逃げるのは不可能。
(ん、まてよ…このシチュエーションって!?)
美少女のクラスメイトと一緒に学校へ登校しているという、男なら誰もが憧れるシチュエーションではないか。
それはオレのようなモテない男には夢のような状況だ。
(ふっ…だがその事実に気づいても、挙動不審になったりはしないぞ…)
歩きながら自然と鈴さんと会話が出来ている。
NPCのアイシャさんとの会話でも躓いていたオレと比べるとすごい進歩だ。
(そう思うと…RDOで免疫付いたかな……)
RDOではリリーやサラ、そして鈴さんといった美女・美少女に囲まれていてそれが普通になっていた。
会話を続けるうちに、女性への苦手意識を緩和してくれたのだろう。
(ありがとうRDO!!)
オレは事実に気づき感動していたのだが、ふと隣の鈴さんを見ると白い目でこちらを見ていた。
「上野君…流石にその顔は気持ち悪いわ……」
…オレは一体どんな顔をしていたのだろうか。
そんなこんなで高校の校門が見えてきてしまった。
ただ校門に居る生徒の数が異常で、その中には教室に入れと叫んで防波堤となっている先生達の姿も見える。
ただ先生も生徒の勢いを抑えきれて居らず、生徒の波は欠壊寸前。
「あれ?鈴さん何か校門に人多くない?」
「うわ。まさかここまでとは……じゃ、上野君頑張って!私先行ってるから!」
「え、ちょっ!?」
鈴さんがオレから離れていく。連れてきておいてそんな薄情な!
校門に居る生徒達から次々と声が挙がる。
「来たぞ!あれが上野だ!」
「上野先輩!握手して下さい!」
「サインください!」
多数の声と同時に先生達の防波堤が崩壊する。
オレは逃げようと戻る前に…生徒の波に飲まれていった。
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そしてそんな騒ぎが収まるまで一時間が掛かり、卒業式の開始も同時に遅れてしまっていた。オレのせいじゃないけど、本当にごめんなさい。
ホームルームから卒業式の開始までの間、オレは机に突っ伏して体力を回復していた。握手とサイン続きで、オレの両腕がプルプルと震えている。
「……お疲れ様。いやー予想以上だったわね」
そう笑いながら言うのはオレを見捨てた鈴さんだ。オレは恨めしい目を鈴さんへと向ける。
「鈴さんもRDOでは有名なはずなのに……何でオレだけ……」
「私のとこにも数人来たわよ?でも、配信でプレイヤー以外の人も見てるのが大きいんじゃない?」
確かに今の時代、動画配信の有名人となればテレビの有名人と大差無いかもしれない。
オレが並木さんに抱いていた憧れも同じような感じだった。そういったレアキャラ感が出たのか…。
「はあ…」
普通の女の子に戻りたいと卒業したアイドルが居た。オレはその意味が少し分かった気がした。
そしてそんな疲れ切ったオレに追い討ちが。鈴さんが話しかけたのを切っ掛けに、クラスメイトによるオレへの質問攻めとサイン会が始まる。
体力は既にゼロだ。…クラスメイトの質問に何を喋ったのかオレは覚えていない。
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