VRMMOを始めただけなのに、何故世界の危機に巻き込まれたのだろうか?

飛楽ゆらる

文字の大きさ
上 下
74 / 85
4.プロテア防衛戦

70.プロテア防衛戦4

しおりを挟む
「あちゃー。またギリギリのタイミングだわ」

「本当に。サラが起きないのが悪いんじゃない」

 ギルドメンバーであるモンクのリリーとハンターのサラ。
 先ほどフルングニルの頭に直撃したのはサラの属性付与の矢だ。
 彼女達はヴァルキリーさんの時もオレを助けてくれた。そしてどうやら今回もオレは助けられたようだ。

 リリーがオレに話し掛けてくる。

「樹。メール気付くの遅れてごめんね。サラが全然起きなくて時間掛かっちゃった」

「イギリスはまだ早朝よ…時間考えて欲しいわ」

 サラはあくびをしながらオレに近づいて来る。

「いや、リリー、サラ・・・本当に助かったよ。これで二回目だ。あれが防御魔法のせいで倒せなくてさ」

「そうなの?風矢は効くみたいだったけど」

 サラが放った矢は確実にダメージを与えていた。

「そうそれだ。どうやら魔法は無効化出来ないみたいだ。それならやりようが有るかもしれない。サラも居るしな」

「そうよ、サラ様に攻撃を任せなさい」

 サラが胸を張りオーバーぎみに威張ってくる。

「ただ問題がアレだ」

 オレは佐山さんと鈴さんが中に居るトラバサミを指差す。

「中に二人仲間が閉じ込められている。中の二人の体力は限界だ。油断するとすぐに潰されてしまうだろう。出来る限りその余裕を作らせないようにしないといけない」

「まあ攻撃に集中できれば、ハンターの攻撃速度なら余裕よ」

「で……だ。作戦としては……」

 オレはサラとリリーに作戦を説明する。
 その内容に二人は驚愕していた。

 サラは…。
「嫌よ!流石にこの歳でそれは恥ずかしいわ!!」

 対するリリーは。
「それ面白そうですね!サラがそんな事されてるの見るのは、現実じゃありえないし!」

「他に手段が無い!サラ悪いと思うが頼む」

「はあ…絶対変な事しないでよね」

「でリリーは天使の注意を惹きつけてほしい。それで合わせて…」

 よしこれで作戦は出来た。色々と問題は有るし危険だが、とりあえずやってみよう。

 なおこの間にもフルングニルは魔法を使ってきている。
 会話はギルドチャットでしていたので…恐らく聞かれてはいないはずだ。
 だが種が分かっていれば回避は容易い。巨人族は初見殺しが多いのか?

「ふん。人が増えても結局逃げ回る事しか出来ないのか。そうこうしている内に、前線は押されているぞ」

「待たせて悪いな。ここから反撃だ」

 オレはサラの後ろへ廻り、その足の間に頭を突っ込む。
 …戦いの最中何をしているのか?一応言っておくが、これはちゃんとした作戦だ。
 オレはそのまま身体を起こしサラを肩車した。

 オレがサラの回避を担当し、サラは攻撃に集中してもらう。
 そのためには肩車が一番動きやすかったんだ。
 ただ予想外なのが……顔に当たる太ももの感触がリアル過ぎる。非モテにこれは…正直嬉しいが、

(…ダメだ。集中しないと!)

「サラって以外と…」

「……重いって言ったら、目に矢をぶっさすわよ」

「……いや、安心してくれ逆だ。身長のわりに軽いと思う」

 実際のところサラの身長は、オレよりも大きい。
 サラ173cm、オレは170丁度。
 ゲームの力補正もあるのだろうが、充分動くことが出来て、これなら攻撃を回避出来るだろう。

「あはは!サラ顔真っ赤!」

 リリーがお腹を抱えて笑っている。

「リリーうるさい!早く天使の所いきなよ!樹もさっさと終わらせるわよ!」

 顔を真っ赤にしたサラの怒声が飛んだところで、気持ちを切り替える。
 リリーも慌てて天使たちの方へと向かったようだ。

「…じゃあいくぞ」

 オレはサラを肩車したまま、フルングニルに近づいていく。
 その姿にフルングニルは驚いているようだ。

「そのような状態で、避けれると思うな!」

 フルングニルの声と共に、巨腕が襲ってくる。

オレはバックステップでそれを回避。
すると上にいるサラが声をあげる。

「もう少し動きを抑えて!これじゃ狙えない!」

「…善処する」

 サラの弓の腕は見事で、回避している最中でも確実にフルングニルの頭を打ち抜く。
 フルングニルの焦りようから、確実にダメージは蓄積されて来ているようだ。

 フルングニルは魔法、近接攻撃を駆使して様々な攻撃を放ってくる。地割れを起こしたり、岩が飛んできたり…石の槍が地面から飛び出してきたり。
 その一つ一つの威力は大きいのだが、魔法の前にはちょっとしたモーションがいるようで、それを見逃さなければ問題無く回避できる。

「…やっぱり樹の動きは変だわ。なんで人を乗せてこれだけ早い攻撃を回避出来るのよ」

「そうか?モーションあるだけ分かりやすいだろ」

 口を動かしながらも、オレとサラは自分の仕事を全うする。
 周りから見ればその光景はおかしなものに違いないが、その戦法のおかげで戦いは一方的となる。
 既にサラの属性矢は何十発も頭に直撃している。

「サラ、そろそろフルングニルが瀕死になるかもしれない。そうなると揺れるが我慢してくれ」

「ええ、覚悟しておくわ」

 オレはリリーの位置を確認する。
 
(……丁度良いタイミングかな)

 サラの風を纏った矢が、フルングニルの眉間に突き刺さる。
 するとフルングニルの動きがピタリと止まる。

「……倒した?」

「いや……多分くるぞ」

 オレは止まっている間に強化魔法をかけ直す。
 サラは今の内に、とMP回復ポーションを飲んでいる。

「もう我慢できん。岩の巨人の恐ろしさ……目に焼き付けろ」

 するとフルングニルの身体が赤く光り、全身から岩のトゲが飛び出す。恐らくフルングニルが瀕死状態になり、強化状態になったのだろう。
 こうなると回避も難しくなり厳しい戦いになる。
 オレは阿修羅の使用も考慮に入れながら、気持ちを入れなおす。

 そして岩に閉じ込められ、必死に耐えている佐山さんと鈴さんを早く助けないと。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)

あおっち
SF
  脈々と続く宇宙の無数の文明。その中でより高度に発展した高高度文明があった。その文明の流通、移動を支え光速を超えて遥か彼方の銀河や銀河内を瞬時に移動できるジャンプ技術。それを可能にしたジャンプ血清。  その血清は生体(人間)へのダメージをコントロールする血清、ワクチンなのだ。そのジャンプ血清をめぐり遥か大昔、大銀河戦争が起こり多くの高高度文明が滅びた。  その生き残りの文明が新たに見つけた地、ネイジェア星域。私達、天の川銀河の反対の宙域だった。そこで再び高高度文明が栄えたが、再びジャンプ血清供給に陰りが。天の川銀河レベルで再び紛争が勃発しかけていた。  そして紛争の火種は地球へ。  その地球では強大な軍事組織、中華帝国連邦、通称「AXIS」とそれに対抗する為、日本を中心とした加盟国軍組織「シーラス」が対峙していたのだ。  近未来の地球と太古から続くネイジェア星域皇国との交流、天然ジャンプ血清保持者の椎葉清らが居る日本と、高高度文明異星人(シーラス皇国)の末裔、マズル家のポーランド家族を描いたSF大河小説「メジャー・インフラトン」の前章譚、7部作。  第1部「太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!」。  ジャンプ血清は保持者の傷ついた体を異例のスピードで回復させた。また血清のオリジナル保持者(ゼロ・スターター)は、独自の能力を飛躍的に引き上げる事が出来たのだ。  第2次大戦時、無敵兵士と言われた舩坂弘氏をモデルに御舩大(ミフネヒロシ)の無敵ふりと、近代世界のジャンプ血清保持者、椎葉きよし(通称:お子ちゃまきよし)の現在と過去。  ジャンプ血清の力、そして人類の未来をかけた壮大な戦いが、いま、始まる――。  彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。  本格的な戦闘シーンもあり、面白い場面も増えます。  是非、ご覧あれ。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

ユニーク職業最弱だと思われてたテイマーが最強だったと知れ渡ってしまったので、多くの人に注目&推しにされるのなぜ?

水まんじゅう
SF
懸賞で、たまたま当たったゲーム「君と紡ぐ世界」でユニーク職業を引き当ててしまった、和泉吉江。 そしてゲームをプイイし、決まった職業がユニーク職業最弱のテイマーという職業だ。ユニーク最弱と罵られながらも、仲間とテイムした魔物たちと強くなっていき罵ったやつらを見返していく物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

初めての異世界転生

藤井 サトル
ファンタジー
その日、幸村 大地(ゆきむら だいち)は女神に選ばれた。 女神とのやり取りの末、大地は女神の手によって異世界へと転生する。その身には女神にいくつもの能力を授かって。 まさにファンタジーの世界へ来た大地は聖女を始めにいろんな人に出会い、出会い金を稼いだり、稼いだ金が直ぐに消えたり、路上で寝たり、チート能力を振るったりと、たぶん楽しく世界を謳歌する。 このお話は【転生者】大地と【聖女】リリア。そこに女神成分をひとつまみが合わさった異世界騒動物語である。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜

FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio 通称、【GKM】 これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。 世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。 その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。 この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。 その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...