VRMMOを始めただけなのに、何故世界の危機に巻き込まれたのだろうか?

飛楽ゆらる

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4.プロテア防衛戦

65.戦闘狂

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 佐山 鈴。彼女は同じ高校のクラスメイトだ。
 ほぼ話したことはないが、持っている性格は明るく良く喋る、クラスの上位カーストに位置する人物。
 そしてオレみたいなオタク連中にも、全然気にせず話し掛けてくる裏表無いタイプ。
 それに加えて剣道が強く、全国大会で上位入賞の常連。一度全国準優勝の表彰を全体朝礼でやっていたのを覚えている。
 更に容姿も恵まれていて、大人しくしていれば奥ゆかしさを持つ昔ながらの和風美人。

 そして過去のトラウマで捻くれて積極的に喋らないオレとは、まるでコインの表と裏。
 その意識があるからか…例えRDOの中でも彼女には苦手意識がある。

 その鈴さんは並木さんと昔話で盛り上がっている。
 そこでオレは佐山さんと会話をする事にした。

「佐山さんと並木さんは、現実でどのような知り合い何ですか?」

「ああ、並木君はうちの剣道の道場に通っていた事があってね。その関係で、彼の小学生から中学卒業までの付き合いだ。あれでも並木君、剣道の県大会で入賞する位強かったんだ」

 それは知らなかった。
 そういえば並木さんが剣を振っているところは、あまり見たことが無いかもしれない。でも盾で攻撃を防ぐ反射神経はそこで培われたのかもなあ。
 あれ?という事は、今俺の住んでいるところは並木さんの実家近くなのか。

「それとうちの鈴から、上野君の話は聞いていたよ。すごい偶然だけど鈴のクラスメイトだそうだね。もう卒業だけれど、鈴は大学でも実家通いだから、これからもよろしく頼む」

「ちょっとお父さん、何勝手な事言ってるのよ。ゲームでリアルの詳しい話はNGって言ったでしょ。いつどこで誰が聞いてるのか分からないのよ」

 鈴さんが話しに割り込んできた。
 その格好を改めて見ると、上級プリーストの修道服を着て腰に長剣を挿している。
 特殊な戦闘スタイルをするプレイヤーも数多く見てきたが、その中でも珍しい格好だ。

「ところで…佐山さんの職業はプリースト?それで杖じゃ無くて剣を持ってるのは何で?」

「佐山さんだとお父さんと被るし鈴って呼んで。で、見た目の通り私はプリースト。理由はゲームなんだし魔法を使ってみたくて。ただ…お父さんがうるさくて、結局剣を使う事になったのよ……。まあでもRDOは装備品が自由で助かったわ」

 そこから更に話を聞いていくと、父親である佐山さんから急にRDOをやるように言われ、言われるがままに父親とレベリングの日々らしい。
 もっとも佐山さんは機械に疎い為、RDOの環境を設定したのは鈴さんと言うことだ。
 父親が何故そこまでRDOに執着するかは全く分からない事、理由を聞いてもはぐらかされて終わる事。
 …てまあ国家機密だし、娘とはいえ言え無いのかな。

「ねえ。あなた達はなんでそこまでRDOに執着するの?明らかに普通にゲームにのめり込んでるだけじゃないわ。お願い!クラスメイトのよしみで教えてよ!」

 顔の前で手を合わせ、懇願してくる鈴さん。
 …これは困った。もし迂闊に発言すれば政府からの監禁が待っているかもしれない。

「……う、うーん。理由は有るんだけど、絶対に言えない理由が有るんだよ。佐山さんも同じだろうから、大目にみてあげて。何があっても言えないんだ」

 鈴さんの質問に答えるのはこれ以上は無理だ。頼むから察してくれ!

「ふーん。ま、そこまで言うなら仕方無い。”今は”諦めるわ。あ、それと聞きたいんだけど、上野君ってどうしてあれだけ強いの?プレイ動画見ていても、普通の素人が出来る動きじゃないわ」

「ああ、あれは……」

 言うべきかかなり迷ったが、オレは鈴さんに過去の経験を話す事にした。もちろんトラウマ関係については話してない。というよりも話せるわけが無い。
 幼い頃から格闘技をしていたこと。格闘技をやめた理由については、限界を感じて辞めたとだけ言った。

「ふーん……戦ってるところを見ると、まだまだ伸びそうなのに。辞めたのが勿体無いわ」

「…ははっ。そう言って貰えて嬉しいよ」

 そういえば東京に出てきてから、格闘技をしていた話をしたのは初めてだ。少しだけ気持ちが楽になった気がする。

「…でもどのくらい強いのか確かめたいわ」

(えっ?)

 …確かに鈴さんがそうポツリと呟いたのが聞こえた。父親の佐山さんと同じことを言ってらっしゃる。
 
(こ、この親子。間違いなく戦闘狂だ!)

 そこに救いの神。並木さんが話し掛けてくる。

「ちょっと話しすぎてしまったね。そろそろ僕たちの動きを決めようか」

 並木さんの言葉に三人は頷く。

「うちと佐山さん親子を合わせて、主力パーティーを二つ作る。一つは僕のいつもの3人パーティー。そしてもう一つは上野君と佐山さん親子で3人パーティーを作ってもらう」

 …まさか佐山さん親子と組む事になるとは。
 並木さんは話を続ける。

「これには理由があって、上野君と佐山さん親子の二人は強い。正直に言うと僕のパーティーじゃ足手まといになる可能性が高いんだ。それと前衛2に支援1でバランスも悪くは無いしね」

 すると佐山さんが話し始める。

「ふむ。某はそれで構わないが、上野君はそれで良いかな?」

「オレもそれで構いません。流石に一人では無理なので」

「よし!そうと決まったら、動きの確認の為に手合わせね!」

 オレと佐山さんの会話に、嬉しそうな表情をした鈴さんが割り込んできた。
 え?手合わせ?

「勿論そのつもりだ。上野君の動き次第で、某達の動きを変えねばならん」

 ニヤニヤしながら佐山さんまで乗ってきた。

(だ、だめだ!この親子本当に戦闘狂だ!)

「はは。じゃあ僕は他のギルドメンバーと打ち合わせしてくるから。上野君。何かあったらギルドチャットで報告するね」

 並木さんはオレに向けて親指をたてて、その場を去っていく。

(…並木さん逃げたな!)

「ハッハッハ!では上野君早速やろうじゃないか!まずは某からだ!」

 佐山さんがオレの肩に手を置き話しかけてくるが、もう片方の手には既に刀が握られている。
 どうやらもうオレは逃げられそうに無いようだ。
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