VRMMOを始めただけなのに、何故世界の危機に巻き込まれたのだろうか?

飛楽ゆらる

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4.プロテア防衛戦

64.佐山家

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「作戦と言ったが、この相手がどこから来るかが全く検討がつかない状態だ。そこで主力の君達はプロテアの中心に位置する大聖堂前広場で待機し、情報が入り次第向かってもらう。既に東西南北全ての門に私の軍の人員が配備されている。そこから情報が入り次第連絡する」

 リチャードさんは話を続ける。

「上野君の話から推測すると、敵に神が居た場合は君達高レベルプレイヤー以外では相手にならないだろう。その場合は君達が到着するまで犠牲を出さない事に徹し、更に後退しつつ時間を稼ぐ。後はその都度私が指示を出すつもりだ。戦力や数は未知数のため、後は勝てるのを祈るしかないな。何や質問は?」

 オレを含む四人は、無言のままだ。
 実際のところ主要メンバーに指示を出せるリチャードさんの存在は有り難い。
 MMOでギルド単位の指示ならオレも出した事は有るが、それと今回の件では大きく違う。ましてや作戦が失敗した場合には、大きな責任を負う事になってしまう大役でもある。
 そんな役割は普通の人が出来るようなものでは無い。

「それでは各自広場で待っていてくれ。その間何をしていても構わないが、すぐに動けるようにだけはしておいてくれ。では解散とする」

 リチャードさんの言葉を聞きオレを含む四人は頷き、それぞれがテントの外へと出て行く。

「そうだ、上野君。君はちょっと残っていてくれ」

 不意にオレはリチャードさんに呼び止められ足を止める。何の用事だろ?

「今回アメリカ政府は全面的に君を信用して動く事となった。しかし実際に侵攻が無かった場合……アメリカ政府は君の事を責めるかもしれない。アメリカ政府も君の事を疑っているわけではないのだが、政府というのはそういうものだ。それぞれが責任を押し付けあい、叩かないと気が済まない」

「ただ…どのような事態になっても、私はRDOプレイヤーとして君の事を尊敬している。そして今後も全面的に協力を惜しまない。もしアメリカ政府の件にかかわらず困った事があったのなら、いつでも言ってくれ。軍の人間としては無理だが、一人のプレイヤーとして協力しよう」

 リチャードさんはそう言うと、フレンド登録を申し込んできた。オレは快くフレンド登録を了承する。

「もし困った事があったら、そのときはお願いします。そして私もリチャードさんのように周りをまとめれるような方と繋がりを持てるのはとても嬉しいです。今後もよろしくお願いします。では」

 オレはそう言うと、リチャードさんにお辞儀をしてテントから退出する。

 外に出ると並木さんと、サムライの佐山さんが並んで待っていた。
 テントから出てきたオレの姿を確認すると並木さんが話しかけてくる。

「上野君。僕達の中でも基本的な動きを決めておこう。それと今回佐山さんとも一緒に行動することになった。恐らくなんだけど、君と佐山さんは気が合うと思う。ただの僕の直感だけどね」

「先程挨拶をしたので自己紹介は省きますが、上野樹です。佐山さんよろしくお願いします」

 オレは佐山さんに手を差し出すと、佐山さんはオレの手を握って笑顔で挨拶を返してくれた。

「上野君、これからよろしく頼む。君の噂を聞いて会うのを楽しみにしていたんだよ。こんな状況でなければ、一回手合わせをお願いしていたところだ」

「…この件が片付いたらその時は是非」

 笑顔で手を握り合うオレと佐山さん。

(うん、この人とは仲良くなれそうな気がする。なんていうか並木さんみたいに物腰が柔らかい)

 そして手を離すと、佐山さんが会話を始める。

「もうすぐ某の娘が来るはずなのだが。時間を大幅に過ぎてる。一体何をしているのか…」

「そういえば鈴ちゃんもプレイしてるんでしたね。いやー僕も会うのは久々だ。懐かしいな」

 佐山さんの娘と、並木さんが知り合い?というか佐山鈴って。
オレはテントの中でも気になったことを合わせて質問しようとする。

「そういえば、二人は…」
「お父さんごめん!お待たせ!」

 オレの質問は一人の女性に遮られる。

「遅いぞ鈴!急いで来いと連絡したじゃないか!」

「友達と遊んでたんだから仕方無いじゃん!これでも全力で走ってきたんだから!」
 
 女性はオレと並木さんの存在に気付き、ハッとした顔をする。

「あっ、ごめんなさい。私は佐山 鈴…って、並木さんだ!久しぶりだね!」

「やあ、鈴ちゃん久しぶりだね。最後に会ったのは君が中学三年の頃だったかな?いやー…ビックリするくらい綺麗になったね」

「それじゃ昔は可愛くなかったみたいじゃないの。でもさ、並木さんがどんどん有名になってって知り合いの私も嬉しかったわ。何度も友達に自慢しちゃったよ。それでもう一人は…」

 オレと佐山さんの娘は顔を合わせる。
 …俺の予想通り、佐山さんの娘である佐山 鈴さんは知った顔だった。

「…佐山さんだよね?高校でオレと同じクラスの」

「上野君!いや、本当に会いたかったわ!そう、同じクラスの佐山 鈴よ!」

 そう、佐山さんの娘の佐山 鈴は…同じ高校のクラスメイトだった。
 佐山、剣道、鈴という時点でほぼ確信していたのだが。

「え、会いたかったって何で?」

「…いや、これだけ有名になっておいて何でも無いでしょ。上野君、貴方学校中で噂になってるのよ。今話題のRDOで、これだけ有名になってたらクラスメイトが知ってて当然だと思うけど?少なくとも、私の友達はみんな生放送見てるし、私もRDOをプレイしてるから当然知ってるし、見かけたら話し掛けようとは思ってたんだ」

 …全く知らなかった。ネットではそこそこ有名になっているのは知っていたが、まさか自分の周りでも有名になっているなんて。これは正直恥ずかしい。
 
(あー…もうすぐある卒業式、行きたくなくなって来たな。陰キャが急に有名になるとか……絶対に疲れる…)

 あれ?大事な戦いの前なのに、ちょっとテンションが下がってきたぞ?
 …オレは誰にも気付かれないように軽くため息をついたのだった。
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