VRMMOを始めただけなのに、何故世界の危機に巻き込まれたのだろうか?

飛楽ゆらる

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2.そして少しずつ動き出す

番外編. 桜の下の誓い

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-神国プロテア、教会騎士団裏の訓練場。

「おー、訓練場の桜も綺麗だな。ここで良いんじゃない?」

 満開の桜の木々が並ぶ中に、黒髪の青年と金髪の女性。

「んー…でもここでしても大丈夫かな?騎士団に注意されない?」

「うーん。なら、ガンターさんにでも聞いてみようか。副ギルマスのあの人が許可出せば大丈夫でしょ。ちょっと聞いて来るよ」

「分かったー。私はサラを待ってるね。たのんだ!」

「りょうかいー」

 一人残された女性は、並んだ桜の中でも一際大きな桜の木を見上げる。
 心なしか、その頬は薄紅色に染まっているように見える。
 そこにニヤニヤしながら近寄るのは、茶髪のスレンダーな女性。

「流石リリーさん。まるで花のように絵になるねえ」

 その声にリリーと呼ばれた女性は振り返る。

「ちょっとサラ!着いたなら教えてよ!あなたが来るのを待ってたんだから!」

 サラと呼ばれた女性は揶揄うように笑う。

「いやー。二人のデートを邪魔しちゃ悪いかなって?もっと遅れた方が良かったかなー?」

「だから樹はそんなんじゃッ…」

「ん?オレがなんだって?」

 突然現れた青年の姿に、金髪の女性は目を見開き驚く。

「い、樹!?な、何でもないよ!それよりどうだった!?」

「……?ガンターさんは好きにしても良いってさ。それとサラも来たか」

「ハーイ樹。皆がオープンしたてで必死になってる中、面白いこと考えたみたいじゃない?私はお邪魔じゃなかった?」

「…いや?お邪魔って何が…「よ、よかった!じゃあ準備しようか!」

「ん、そうだ。早く準備しないと、時間が無くなる!」

 樹と呼ばれた青年は、イベントリから大きな布を取り出しながら話す。

「「「それじゃあ、花見始めますか!」」」


------

日本政府からの要請を受けた翌日。
オレと並木さんは、ギルド"ラグナロク "を作成した。

そこで数少ない知り合いのリリーとサラを誘ってみたら、何と二つ返事で了承された。
方針にも何一つ文句を言わず、二人ははこう言った。

「何か言えない理由があるんでしょ?私は樹を信じるから、言えるようになったら言ってね」
とリリー。

「私はそんな理由とかどうでも良いけど、リリーについてくわ。ま、樹が居るなら面白くはなりそうね」
とサラ。

 会って数日の筈なのに、何故ここまで信頼してくれるのだろうか。
 ここまで信頼してくれる友人なんて、何時ぶりだろうか…。
 フレンドコールだったからバレなかったが、オレは目頭が熱くなって涙目になってたと思う。

 そうしてリリーとサラが"ラグナロク "に参加が決まり、それなら並木さんとの顔合わせも兼ねて花見でもするか!とオレは考えた。
すると、皆ノリノリで直ぐに花見をする事になったのだ。

 そしてプロテアに居たオレとリリーで、先に花見場所を探していたというわけだ。

 三人でそれぞれ買い込んだ料理や飲み物を布の上に出していく。

「ってサラそれなんだ?」

 サラが出したのは大きな酒瓶。

「勿論ぶどう酒よ!ファンタジーといえばエールかぶどう酒でしょ?」

「ゲーム内とはいえ、流石に未成年が酒は駄目じゃないか?」

「そうじゃ無いんだよなー」

「あのね、樹。イギリスだと飲酒は18歳からOKなんだ。だから私もサラも飲んでも大丈夫なの」

「…なんだって?ということは飲めないのはオレだけか…」

  RDOでは基本的にプレイヤーの国の法律が適用される。
  日本は20歳、イギリスは18歳。そこまでお酒が飲みたい訳じゃないが何故か悔しい。

「とは言ってもRDOはノンアルコールで酔うことは無いから、樹でも大丈夫だよ」

とリリー。

「そ、そうだったのか。お酒に興味無かったから知らなかった」

「でも味は現実のお酒と比べ物にならない位美味しいのよね…。私の稼ぎの一部がお酒に消えてるわ。あー美味しい!」

 と既に飲み始めているサラ。

「…サラは現実でもお酒に強そうな気がするよ」

「あら?良くわかるわね?いくら飲んでも残らないし、全然酔うことがないわ」

 サラが既に酒瓶を一本開け、笑いながら返している。

「サラ飲むの一回ストップだ。始まる前に全部無くなる。リリーはお酒どうなの?」

「わ、私は…嗜む程度に…」

「あーリリーは酔うと甘えてくるわよ?」

「ちょっとサラ!」

「その時可愛いのなんのって…男ならイチコロね」

 確かにリリーのような美人が甘えてきたら男なんてデレデレしてしまう。想像するだけで…いや、何考えてるんだ!

「あはははっ!樹、何想像してんのよ!鼻の下伸びてるわよ!」

「サラ!良い加減にッ…!!」

 リリーとサラの取っ組み合い…というよりもじゃれあい?が始まる。
と、オレは近くで立って見ている人物がいる事に気づく。

「あ、並木さん来てたんですね」

「うん。いやー、お取り込み中だったみたいだから様子見てたけど、美人に囲まれて上野君が羨ましいね」

「いや…オレなんて揶揄われてるだけですよ…。っと、リリー!サラ!並木さん来たからそろそろやめ!」

 まだ取っ組み合いを続ける二人に割って入り中断させる。
 並木さんの姿に気付いた二人は、急に冷静になり正座になる。

「い、いつから見てたんです…?」

とリリー。

「あはは。上野君を揶揄ってるあたりかな?二人ともとても仲が良いんだね」

「…並木さん初めまして。先程は大変お見苦しい所をお見せしました」

「並木さん宜しくねー。ほら、リリーが正直にならないからー」

「…サラッ!!」

「ほら、やめやめ!!並木さんも来たし、花見を始めよう!」

「「…はーい」」


------


 騎士団の修練場の桜の木々は満開に咲き誇り、その下ではシート替わりの布の上に並べられた料理や飲み物。
 そして四人のプレイヤー達の笑い声が響き渡る。

 通り過ぎていくプレイヤー達から見れば異常な光景だろう。
 オープン間もないネットゲームで、まだまだレベル上げに勤しんでいるプレイヤーが大半だ。
 そんな中で楽しそうに花見を楽しんでいるプレイヤー達が居る。

「おいあれ…ナミキーさんじゃないか?」
「隣の人も上野樹じゃない?日本の有名プレイヤー達が狩りもせず何してんだろう……でも…」
「「 外人美女二人と花見とか羨ましすぎる!! 」」

 四人は通り過ぎるプレイヤー達の嫉妬の目を知ってか知らずか…桜の下の宴会は二時間程続いた。


「じゃあそろそろお開きにしようか」

と並木礼司。

「もうこんな時間になってたんだ。そろそろログアウトしないと」

とリリー。

「あー楽しかったー!並木さんの奢りで一杯飲めたから大満足だわ!」

…とサラ。

「じゃあ、最後に締めを!並木さんお願いします!」

と上野樹。
そう振られた並木礼司は渋々と喋り始める。

「うーん…こういうの向かないんだけど」

「ギルドマスターとか社長とかしておいて、今更何言ってんのよ」

サラがツッコミを入れる。

「あはは。向かなくてもやってみれば、意外と何とかなるんだよ。うちは社員が優秀だからね…と。じゃあ改めて、リリーさん、サラさん。ギルドに参加してくれてありがとう」

並木礼司は続ける。

「訳ありなギルドだけれど、話せるタイミングが来たら全てを話すから…それまでは我慢して欲しい。それと…二人には上野君を助けてやって欲しいんだ。その役目は僕よりも君達の方が向いている。上野君は危ない事にすぐ首を突っ込みそうだし、二人で手綱を引いてやってくれ」

 並木礼司はリリーを見ながら言うが、リリーは表情を変えない。
上野樹はその言葉に焦る様子を見せる。

「ちょ、ちょっと並木さん!二人はそんな……」

「「ええ、分かったわ」」

「ええー!?オレそんなに危なっかしいかな…」

上野樹以外の三人が笑う。

「これで最後にしよう。これからギルド"ラグナロク "は本格的に動きだす。目指すはRDO最強の神対抗ギルドだ!みんなこれから頑張ろう!」

「「「おーっ!!」」」

------

四人のプレイヤー達が拳を天に掲げる。

その周囲を桜の花弁が舞う。

それぞれの思いを胸に秘めたまま、一つの目標へ向かうと誓う。

------

番外編  桜の下での誓い END
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