VRMMOを始めただけなのに、何故世界の危機に巻き込まれたのだろうか?

飛楽ゆらる

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2.そして少しずつ動き出す

47.高級料理店 2

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料理店の内装はいかにもな高級な割烹。
飾られている皿、絵画、壺。全て高級品だろう。
客席は全て個室のようで、扉により仕切られている。
圧倒されているオレ達に店員が近づいてくる。

「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」

「あ、ああ。間宮様からこの青年をここに連れてくるように言われまして…」

(ん?間宮?)

「了解致しました。案内致します」

名前に引っ掛かりを覚えつつも、店員さんの後をついていくとそこは襖で閉ざされた部屋。

店員さんは部屋に入る前で一度止まり、引き戸前で室内に声を掛ける。

「お連れ様がいらっしゃいました。入室して宜しいでしょうか」

店員さんが室内に声を掛ける。
すると中から、低い声で返事がする。

「構わん。中へ」

「失礼致します」

店員さんが引き戸を開けてくれる。
オレは失礼します、と一言告げ室内に入る。
大沼さんは襖の前で立ち止まっており、室内には入らないようだ。とても心細い。

「大沼君と言ったか。上野君の案内ご苦労だった。君の会社には良く言っておこう」

中のおじさんが、大沼さんへ声を掛ける。

「いえ、私は連絡を取り、送っただけ、ですので。お言葉有難うございます」

大沼さんがかなり緊張している。
このおじさんは言われた通り、かなりの大物のようだ。
それに、どこかで見た顔なんだよな?

「帰りは私の秘書が送ろう。ご苦労だった」

「はい、では、これで失礼致します」

大沼さんが深くお辞儀をし、そのまま引き戸が閉められる。

(さ、さて…これからどうすれば…)

どうしていいか分からず、オドオドして立ち尽くすしているとおじさんが声を掛ける。

「上野君。私の向かいにに座りたまえ。足を崩して構わないぞ」

「失礼します」

オレは向かいの座布団に座る。
足を崩せと言われても、向かいには明らかに大物が居て、ここは超高級料理店。
緊張で自然と正座で座ってしまった。

「さて、まずは急な呼び出し済まなかった。私は日本政府で防衛大臣をしている間宮と言う。テレビで見たことはあるかね?」

成程どうりで見た事がある顔だと思った。
2年ほど前に総理大臣が変わったのだが、間宮防衛大臣はそのまま変わっておらず、ニュースに疎いオレでも顔を見た事がある。

「お顔は拝見した事が、あります。えと。私は上野樹と言います。現在高校3年生の18歳です」

「そんなに畏まらんで普通に話してくれて良い。それで上野君を呼んだのは他でもない、君にしか出来ない頼みがあるんだ。…とその前に、上野君食事がまだだそうだな。何が食べたい?寿司でも丼物でも何でも構わないぞ」

「ええと、では寿司をおまかせで……」

間宮防衛大臣は、近くに居た女性に目配りをする。
恐らく秘書であろう、眼鏡を掛けて出来る女性のイメージそのままの女性だ。

「分かった。鈴木君。後、何品かつけてやってくれ。上野君飲み物は何がいい?」

「えと、お茶なら何でも良いです」

飲みたかったが、流石にコーラとは言えなかった。

「了解しました。注文致します」

鈴木さんと呼ばれた女性が、室内にあった電話を取り、何かを伝える。

「それで…頼みとは何でしょうか。私は取り得と言っても、ゲームくらいしか思い当たらないのですが……」

オレは恐る恐る…間宮防衛大臣に質問する。

「そう、他でもないそのゲームが頼みごとなのだよ。君のプレイしているRDOというゲームの頼み事だ。ただ、もう一人呼んでいるから、詳しい話は集まってからにしよう。その人物は君も知っている人のはずだ」

(オレの知っている人物?)

そう疑問に思っていると、部屋入り口の引き戸から店員さんの声がした。
どうやらそのもう一人とやらが来たらしい。

「失礼します」

入ってきたのは、オレよりも少し年上であろう男性。
すぐに気づいた。オレがこの人を知らない訳がない。
ゲーム関係の動画配信主で、ゲーム会社を抜き堂々の一位。
動画配信者の中の頂点と言ってもいい。
オレも動画を見ていた…あのナミキーさんだ。

(ほ、ほんもののナミキーさんだ!)

あの憧れのナミキーさんがオレの前にいる。
オレは間宮防衛大臣の時よりも驚いている。

「間宮防衛大臣、遅れて申し訳ありません。そしてお初にお目にかかります。並木 礼司と申します」

「私の事を知っていたか。では自己紹介は省こう。並木君、急に呼び出してすまなかった。上野君の隣に座りたまえ。それと飲み物は何が良い?」

間宮防衛大臣の言葉を聞き、並木さんはオレの隣に腰を下ろす。
ど、動画で毎回観ていた顔がすぐ隣に!

「間宮防衛大臣と上野君は、何をお飲みでしょうか?」

「私も上野君もお茶だ。大事な話なのでお酒は避けてくれ」

「あはは流石にお酒は避けますよ。私もお茶をお願いします」

並木さんの言葉を聞き、秘書の鈴木さんが再度電話を掛ける。
動画ではわざとふざけたりしているナミキーさんが真面目だ。
流石にわきまえているようだ。

「では料理が来るまで話をしようか。本題は料理が来てからゆっくりと話そう。二人は初対面かな?親交を深めるのも良いので無いか?」

そう間宮防衛大臣が言ってくれるが、オレにとってナミキーさんは雲の上のような存在だ。

(な、なんと言って話しかければ良いんだ!)

女性と話すときとは違う緊張感。
オレはナミキーさんが現れたことで、完全に舞い上がっていた。
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