VRMMOを始めただけなのに、何故世界の危機に巻き込まれたのだろうか?

飛楽ゆらる

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2.そして少しずつ動き出す

42.迷いの森3

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オレはキースさんにそう言って前に出る。
キースさんは何も言わずに頷く。

ワイルドフットは熊の魔物で、 体長2m50cmはあろう巨体だ。
その胴体も太く、まるで木の幹ようだ。
そして手先には鋭い爪を持つ。
巨体からくる腕の力と、鋭い爪から来る切り裂きの威力は…相当なものだろう。

オレとワイルドフットの距離が少しずつ近づいていく。
そして動いたのは10m程の距離。
ワイルドフットは威嚇するような声を上げて、オレに向かってくる。
熊だが二足歩行で走ってくる。これは予想外だ。笹食ってる場合じゃねえ。

ワイルドフットは走ってくる勢いのままに右手を振り下ろし、俺を切り裂こうとする。
大きな身体が動くので迫力が半端ないが、オレはスライディングでワイルドフットとすれ違い、後ろへと回りこむ。
ワイルドフットはすぐさま振り返ろうとする…が。その前に膝裏にニーキック。膝カックン。
オレの攻撃(膝カックン)が綺麗に決まり、膝をやられたワイルドフット。
自身の体重に耐えられなかったのか、片膝を地面に付ける。

(これなら頭に届く…!)

オレはダメージの通りが悪そうな胴への攻撃は無駄だと判断し、頭部狙いをする事にした。
ま、まあ膝カックンが上手くいくとは思わなかったけど、ワイルドフットは膝を折り、その後頭部は…手の届く位置。
このチャンスを逃すわけがない。

オレはワイルドフットの後頭部に向けて、渾身の右ストレートを繰り出す。
ワイルドフットはその攻撃に耐え切れずに前のめりに倒れこむ。

だが相手は強く、これだけでは倒しきれない。
左右交互の連打を続けていくと、ワイルドフットは粒子の光となって消えた。

戦いが終わった事を確認したオレは、振り返ってキースさんに顔を向ける。

「ふう。これで大丈夫でしょうか?迷いの森の浅い敵であれば遅れを取ることは無さそうですが」

「…ああ、思った以上の実力で驚いています。戦い方にはもっと驚かされましたが…。と、とにかくこれだけ実力が有るなら問題ありません」

「良かったです。それで…このまま森の奥へ行っても構いませんか?」

「はい。あ、私はすぐに戻るので気にしなくて大丈夫ですよ。では調査をよろしくお願いします」

オレはキースさんに別れを告げて、森の奥へと進む。

さて…深部の魔物が出現しなければ調査は問題無い筈だ。
オレの本来の目的はレベリングであり、強い敵と戦う事。
向かう先は勿論…迷いの森深部だ。

迷いの森の奥へ進む度に、魔物との遭遇が多くなっていく。
出会う魔物はワイルドボアと、先程戦ったワイルドフットのみで特に以上は無いように思える。

けど…聞いていた話に比べて魔物との遭遇率が高すぎないか?
森の開けた場所では魔物が数匹固まっているし、次の魔物が目視できる状態が続く。
レイモンドさんの数分に一匹程度、と言っていた情報とは違いすぎる。
やはり魔物の異常発生は何か原因があって"起きている"。

迷いの森に入り、1時間は森の中を進んだだろうか。
突然、水の流れる音が聞こえてくるようになった。
森の中間点の目印となる、川に架かる吊り橋が近いのか?

そんな時だった。
見慣れない、大きな黒いものが…僅かに動いている。
その表面は大きな鱗があって、太さは1m弱ほどか。

深部の敵として例えられていた黒い大蛇。その特徴と完全に一致している。
…大蛇は巨木に巻きついているので長さは分からない。
ただこの大きさなら…人間1人くらいは簡単に丸呑み出来るだろう。

流石にあれだけの大蛇とは戦った事は無い。
…けれどクラーケンに勝てたのだから、戦えない事は無いと思う。

オレは大蛇から距離を取り様子を伺う。
黒い大蛇の名前はサイドワインダー。
そのサイドワインダーは、既にこちらに気付いていて顔を向けている。

(ふー……)

心を落ち着かせるために深呼吸をする。

見るからに今までとは違う強敵で、一撃でも攻撃されれば致命傷。
でもオレの心はサイドワインダーとの戦いを前に昂っている。

オレとサイドワインダーの距離は、一歩…また一歩と近づいていく。
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