39 / 85
2.そして少しずつ動き出す
38.QUEEN ROZE
しおりを挟む
そして大会が始まった。
私も上野樹も二回戦を突破しベスト8確定となった。
続くベスト4を決める三回戦。
相手は……上野樹。
今まで一度も勝てたことが無い相手。
私は勝てないかもしれない。
三回戦は休憩を挟み行われることになっていて、出場者は全員控え室に集まっていた。
ベスト8にはわたしや上野樹だけではなく、あの金髪もいた。
それぞれが集中して、静まりかえった控え室。
私は少しこの雰囲気は苦手。
対する上野樹は、緊張感が無く身体を伸ばしながら欠伸をしている。
大会慣れしているのか、それとも元々こういう性格なのか。
(でも、話すのに丁度良い)
私は上野樹に近づいていく。
彼も私が近づいてくるのに気が付いた。
そのまま隣の席に座る。
私は流暢に日本語を喋れないので、スマートフォンの翻訳画面を見せる。
『さっきはありがとう。おかげでここまで勝ち進める事ができたわ』
上野樹は先程とは違い、緊張した様子で返してきた。
『いやいや。嫌な思いをさせてごめん。それとまさか君がQUEEN ROZEだったなんて。勝ち進めたのは君が強いからだよ』
『でもGOD TREEさんには勝てたことが一度も無いけどね。一位には勝てた事もあるのに何故かしら?』
『実は剛拳5では負け無しなんだよ。このゲームが一番好きなのも有るし、グローブ型コントローラーと相性良いんだろうね』
『そう…剛拳5が一番好きなんだ…。コントローラーと相性が良いって昔格闘技でもしてたのかしら?』
『昔少しね…でも中学で辞めちゃったんだ。そこからはゲーム三昧だよ』
『ふーん。でも雑誌でもそんな事書いてなかったわね』
『雑誌?オレの記事でも読んだの?でも日本の雑誌しか出てないと思うんだけど?』
『ぐ、偶然ね!剛拳5のこと調べてたら偶然目に入ったのよ!』
『ふーん?でも読んでくれたならありがとう。それと格闘技の話は嫌な思い出もあるから話してないんだ』
『なら深くは聞かないわ。でも異常な反射神経はそれが生きてるのかー。私も何か格闘技しようかな?』
『う、うーん…君くらいの年になるとあまり鍛えられないかも…』
『あら?私いくつに見えるかしら?』
そう言ってマスクを外して上野樹の目を見つめる。
彼は目を合わすとすぐに、顔を真っ赤にして目を逸らす。
随分と初々しい反応で、イギリスでは無い反応だ。
そっか日本人が奥手って言われるのはこういう事なんだ!
面白くて揶揄いたくなってくるけど、支障が出るかもだしやめておく。
でもつい笑い声が出てしまう。
『あははっごめんね。反応が面白くって』
『その…大会に集中しよう。うん、それが良い』
『うん、そうね。上野くん楽しかったわ。ありがとう』
『こ、こちらこそ。楽しかったよ』
『じゃあ三回戦は全力でやるわよ。次は勝つから』
『ああ。オレもこのゲームでは負けないよ』
そのまま席を離れる。
彼、上野樹は剛拳5が一番好きだと言った。
それだけで何故だか嬉しくなってしまった。
------
そして三回戦。
私も上野樹もリラックスした表情で戦いが始まった。
ルールは2ラウンド先取をした方が勝ち。
私は1勝を先取することに成功した。
普通にやったら勝てないと思い、運にかけて技を出したらそれが見事にハマった。
けれど二回戦目からはそんな手が通用する訳もなく…人とは思えない反射速度で、ガードされ、技を返され…手も足も出なかった。
そして結果は一勝二敗で私の負け。
ただ私はまぐれでも彼から一勝取れたので満足だった。
結果的に彼に黒星を付けたのは私だけだったのだから。
上野樹の決勝の相手は…何とあの金髪だった。
金髪は敵意剥き出しで、上野樹を睨みつける。
彼はどこふく風といった様子だったけれど。
上野樹は金髪相手にストレートで2勝を取り、第一回 剛拳5 世界大会のチャンピオンとなった。
最後に彼に挨拶をしたかったけれど、表彰式やインタビューの相手をしていて話す機会が無かった。
フードも下げてマスクも外す。
周囲に騒めきが起きる。
そして、最後に彼を見た時…少し目が合った気がした。
「さようなら、上野くん」
私は日本語でそう呟き、会場を後にした。
------
イギリスに戻るとただいまの前に両親の説教が始まった。
…どうやらネットニュースの記事に、サラのが写っていたようで。
しかも堂々とインタビューに応えているし、友人の応援に来ました!とも言っている。
言い訳しようが無くて、謝るしかなかった。
もっとも我儘をした事が無かったからか、すぐに許してもらえた。
次からはついて行くからちゃんと言うように言われたけどね。
ああでも、優等生をしていて良かったかな?
……それと後日、サラは正座させて説教した。
------
それから半年後。
私は高倍率の中でRDOのソフトを購入する事ができた。
剛拳5も良いけど、少しだけ浮気しようかな?
あとこれだけ世界中で話題のゲームだし、もしかしたら彼もプレイするかな?
そ、その時は……。
「サ、サラ!何ニヤニヤしてるのよ!ち、違うってば!」
------
私も上野樹も二回戦を突破しベスト8確定となった。
続くベスト4を決める三回戦。
相手は……上野樹。
今まで一度も勝てたことが無い相手。
私は勝てないかもしれない。
三回戦は休憩を挟み行われることになっていて、出場者は全員控え室に集まっていた。
ベスト8にはわたしや上野樹だけではなく、あの金髪もいた。
それぞれが集中して、静まりかえった控え室。
私は少しこの雰囲気は苦手。
対する上野樹は、緊張感が無く身体を伸ばしながら欠伸をしている。
大会慣れしているのか、それとも元々こういう性格なのか。
(でも、話すのに丁度良い)
私は上野樹に近づいていく。
彼も私が近づいてくるのに気が付いた。
そのまま隣の席に座る。
私は流暢に日本語を喋れないので、スマートフォンの翻訳画面を見せる。
『さっきはありがとう。おかげでここまで勝ち進める事ができたわ』
上野樹は先程とは違い、緊張した様子で返してきた。
『いやいや。嫌な思いをさせてごめん。それとまさか君がQUEEN ROZEだったなんて。勝ち進めたのは君が強いからだよ』
『でもGOD TREEさんには勝てたことが一度も無いけどね。一位には勝てた事もあるのに何故かしら?』
『実は剛拳5では負け無しなんだよ。このゲームが一番好きなのも有るし、グローブ型コントローラーと相性良いんだろうね』
『そう…剛拳5が一番好きなんだ…。コントローラーと相性が良いって昔格闘技でもしてたのかしら?』
『昔少しね…でも中学で辞めちゃったんだ。そこからはゲーム三昧だよ』
『ふーん。でも雑誌でもそんな事書いてなかったわね』
『雑誌?オレの記事でも読んだの?でも日本の雑誌しか出てないと思うんだけど?』
『ぐ、偶然ね!剛拳5のこと調べてたら偶然目に入ったのよ!』
『ふーん?でも読んでくれたならありがとう。それと格闘技の話は嫌な思い出もあるから話してないんだ』
『なら深くは聞かないわ。でも異常な反射神経はそれが生きてるのかー。私も何か格闘技しようかな?』
『う、うーん…君くらいの年になるとあまり鍛えられないかも…』
『あら?私いくつに見えるかしら?』
そう言ってマスクを外して上野樹の目を見つめる。
彼は目を合わすとすぐに、顔を真っ赤にして目を逸らす。
随分と初々しい反応で、イギリスでは無い反応だ。
そっか日本人が奥手って言われるのはこういう事なんだ!
面白くて揶揄いたくなってくるけど、支障が出るかもだしやめておく。
でもつい笑い声が出てしまう。
『あははっごめんね。反応が面白くって』
『その…大会に集中しよう。うん、それが良い』
『うん、そうね。上野くん楽しかったわ。ありがとう』
『こ、こちらこそ。楽しかったよ』
『じゃあ三回戦は全力でやるわよ。次は勝つから』
『ああ。オレもこのゲームでは負けないよ』
そのまま席を離れる。
彼、上野樹は剛拳5が一番好きだと言った。
それだけで何故だか嬉しくなってしまった。
------
そして三回戦。
私も上野樹もリラックスした表情で戦いが始まった。
ルールは2ラウンド先取をした方が勝ち。
私は1勝を先取することに成功した。
普通にやったら勝てないと思い、運にかけて技を出したらそれが見事にハマった。
けれど二回戦目からはそんな手が通用する訳もなく…人とは思えない反射速度で、ガードされ、技を返され…手も足も出なかった。
そして結果は一勝二敗で私の負け。
ただ私はまぐれでも彼から一勝取れたので満足だった。
結果的に彼に黒星を付けたのは私だけだったのだから。
上野樹の決勝の相手は…何とあの金髪だった。
金髪は敵意剥き出しで、上野樹を睨みつける。
彼はどこふく風といった様子だったけれど。
上野樹は金髪相手にストレートで2勝を取り、第一回 剛拳5 世界大会のチャンピオンとなった。
最後に彼に挨拶をしたかったけれど、表彰式やインタビューの相手をしていて話す機会が無かった。
フードも下げてマスクも外す。
周囲に騒めきが起きる。
そして、最後に彼を見た時…少し目が合った気がした。
「さようなら、上野くん」
私は日本語でそう呟き、会場を後にした。
------
イギリスに戻るとただいまの前に両親の説教が始まった。
…どうやらネットニュースの記事に、サラのが写っていたようで。
しかも堂々とインタビューに応えているし、友人の応援に来ました!とも言っている。
言い訳しようが無くて、謝るしかなかった。
もっとも我儘をした事が無かったからか、すぐに許してもらえた。
次からはついて行くからちゃんと言うように言われたけどね。
ああでも、優等生をしていて良かったかな?
……それと後日、サラは正座させて説教した。
------
それから半年後。
私は高倍率の中でRDOのソフトを購入する事ができた。
剛拳5も良いけど、少しだけ浮気しようかな?
あとこれだけ世界中で話題のゲームだし、もしかしたら彼もプレイするかな?
そ、その時は……。
「サ、サラ!何ニヤニヤしてるのよ!ち、違うってば!」
------
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)
あおっち
SF
脈々と続く宇宙の無数の文明。その中でより高度に発展した高高度文明があった。その文明の流通、移動を支え光速を超えて遥か彼方の銀河や銀河内を瞬時に移動できるジャンプ技術。それを可能にしたジャンプ血清。
その血清は生体(人間)へのダメージをコントロールする血清、ワクチンなのだ。そのジャンプ血清をめぐり遥か大昔、大銀河戦争が起こり多くの高高度文明が滅びた。
その生き残りの文明が新たに見つけた地、ネイジェア星域。私達、天の川銀河の反対の宙域だった。そこで再び高高度文明が栄えたが、再びジャンプ血清供給に陰りが。天の川銀河レベルで再び紛争が勃発しかけていた。
そして紛争の火種は地球へ。
その地球では強大な軍事組織、中華帝国連邦、通称「AXIS」とそれに対抗する為、日本を中心とした加盟国軍組織「シーラス」が対峙していたのだ。
近未来の地球と太古から続くネイジェア星域皇国との交流、天然ジャンプ血清保持者の椎葉清らが居る日本と、高高度文明異星人(シーラス皇国)の末裔、マズル家のポーランド家族を描いたSF大河小説「メジャー・インフラトン」の前章譚、7部作。
第1部「太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!」。
ジャンプ血清は保持者の傷ついた体を異例のスピードで回復させた。また血清のオリジナル保持者(ゼロ・スターター)は、独自の能力を飛躍的に引き上げる事が出来たのだ。
第2次大戦時、無敵兵士と言われた舩坂弘氏をモデルに御舩大(ミフネヒロシ)の無敵ふりと、近代世界のジャンプ血清保持者、椎葉きよし(通称:お子ちゃまきよし)の現在と過去。
ジャンプ血清の力、そして人類の未来をかけた壮大な戦いが、いま、始まる――。
彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。
本格的な戦闘シーンもあり、面白い場面も増えます。
是非、ご覧あれ。
※加筆や修正が予告なしにあります。

ユニーク職業最弱だと思われてたテイマーが最強だったと知れ渡ってしまったので、多くの人に注目&推しにされるのなぜ?
水まんじゅう
SF
懸賞で、たまたま当たったゲーム「君と紡ぐ世界」でユニーク職業を引き当ててしまった、和泉吉江。 そしてゲームをプイイし、決まった職業がユニーク職業最弱のテイマーという職業だ。ユニーク最弱と罵られながらも、仲間とテイムした魔物たちと強くなっていき罵ったやつらを見返していく物語
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

初めての異世界転生
藤井 サトル
ファンタジー
その日、幸村 大地(ゆきむら だいち)は女神に選ばれた。
女神とのやり取りの末、大地は女神の手によって異世界へと転生する。その身には女神にいくつもの能力を授かって。
まさにファンタジーの世界へ来た大地は聖女を始めにいろんな人に出会い、出会い金を稼いだり、稼いだ金が直ぐに消えたり、路上で寝たり、チート能力を振るったりと、たぶん楽しく世界を謳歌する。
このお話は【転生者】大地と【聖女】リリア。そこに女神成分をひとつまみが合わさった異世界騒動物語である。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜
FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio
通称、【GKM】
これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。
世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。
その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。
この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。
その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる