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2.そして少しずつ動き出す
37.リリー=ローズ・グリーン 2
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そして剛拳5の世界大会が開催される日。
両親には卒業旅行で、サラと日本に行くと言ってある。
半分嘘だけど許して欲しい。
サラと一緒に1時間前に会場入りし、出場者のネームプレートを貰ってから周囲のブースをぶらぶらする。
私は顔バレしたくないので、大きめのパーカーを着てフードを深くかぶる。更にマスクを着用。
サラは気にせずにいつもの格好で、周囲の目線など気にしてない。
…この度胸は素直に羨ましいよ。
世界大会というだけあって日本人以外の人も少なくないが、やはり美人でモデルのようなスタイルを持つサラは目立つ。
更に隣には不審者の格好をしている私がいることで尚目立つ。
「あー始まる前に嫌になりそうよ」
「そう?私は楽しいけど?」
「それはサラが異常なのよ…」
「どうせならコスプレでもすれば良かったんじゃない?ほら、リリーがよく使うキャラのお姫様とか」
「…私じゃ衣装に着られるのがオチよ。キャラとスタイルが違いすぎるわ」
「ふーん?リリーはもっと自身持っていいのに。似合うと思うんだけどね」
「客観的に見て、似合わない。それに気にして大会どころじゃなくなるわ」
「あはは。リリーはいざというとき緊張するもんね…っとアレ上野くんじゃない?」
「え?」
私たちの視線の先には黒髪の地味目なあどけなさの残る青年。
確かに上野樹さんに違いない。
「リリー話しかけなくて良いの?私が話しかけてあげようか?」
「な、なんで話しかけるのよ!ただ勝てなくて悔しいだけで、友達になりたいとかじゃないんだから!必要無いわ!」
「ふーんそれなら別に良いんだけどねー?」
サラがニヤニヤしながらからかってくる。
た、確かに文句の一つでも言いたいけど、今じゃなくても良いわ!
『開始30分前となりました。大会出場者の方は控え室にお集まり下さい。』
「呼ばれたわね。じゃ、サラ行ってくるわ」
「はーい遠くで見守ってるわ。リリー頑張ってねー。じゃ、FPSのブースでも行ってこよっと」
サラが手を振りながら立ち去っていく。
やはり海外だというのにあの行動力は凄い。
離れると急に心細くなってしまう。
控え室に入ると私に視線が集中する。
格好のせいかネームプレートのプレイヤーネームのせいか。
そのまま一番落ち着きそうな角の席に座る。
日本語も少しは勉強しているけれど、周囲の会話を聞き取れるまではいかない。
ソワソワして落ち着かないし、時間まで音楽でも聴いていよう…。
とイヤホンをつけようとした時だった。
「ハロー、クイーンローズ」
片言英語に目を向けると、誰かが話しかけてきていた。
目線を向けるとそこには……誰?金髪でチャラチャラした日本人男性が立っていた。
男はスマートフォンで英語に翻訳した画面を見せてくる。
『クイーンローズちゃん、女の子だよね?良かったら顔見せて!メッセージID交換しようよ(ハート)』
はぁ、こんな所でナンパとか…馬鹿じゃない?
わざわざ隠してるのに顔なんて見せるわけ無い。
あまりにも呆れ、そのまま無視して耳にイヤホンをつける。
男はまだ諦めずに、スマートフォンの画面をしつこく見せてくる…が完全無視の私の態度にイライラして来たようだ。
ー
「おい!返事くらいしろよ!」
男が私の肩に手を掛ける。
……流石にこれには我慢できない。
私が男を睨み、立ち上がろうとした時…。
私の肩にあった手から力が離れた。
「ねえ、ゲームの大会なんだしそういうの辞めようよ。わざわざ海外から来てくれてるんだし、日本人が悪く思われるの嫌じゃない?海外の大会に行くと、皆優しくしてくれるよ」
金髪男の手首を掴んでいるのは…上野樹。
「何だよテメェ…」
上野樹よりも身長が高い金髪が睨むが全く動じない。
また、手を振り解こうとするが、全然動いていない。
「オレは上野樹って言います。これ以上やるなら運営の人に相談しますが…」
「チッ!分かったよ!離せよ!」
ー
金髪がそういうと上野樹は手首を離した。
金髪は怒鳴り散らしながら去っていった。
会話の半分程しか聞き取れなかったけれど、恐らくこんな感じだったと思う。
そして…。
「アイアム ソー ソーリー」
上野樹は私の顔を見たまま顔の前で両手を合わせる。
彼なりの謝罪なのだろうが、何故彼が謝るんだろう。
謝るならあの金髪だし、助けてもらったのは私の方なのに。
「ア、アリガトウ…」
私は立ち上がり、マスクを取ってお辞儀をする。
カタコトの英語とカタコトの日本語。
少しだけ面白くなってしまってつい笑ってしまった。
まあ上野樹は何故笑ったか分からず戸惑っていたようだったけれど。
それでも、私の緊張は無くなった。
両親には卒業旅行で、サラと日本に行くと言ってある。
半分嘘だけど許して欲しい。
サラと一緒に1時間前に会場入りし、出場者のネームプレートを貰ってから周囲のブースをぶらぶらする。
私は顔バレしたくないので、大きめのパーカーを着てフードを深くかぶる。更にマスクを着用。
サラは気にせずにいつもの格好で、周囲の目線など気にしてない。
…この度胸は素直に羨ましいよ。
世界大会というだけあって日本人以外の人も少なくないが、やはり美人でモデルのようなスタイルを持つサラは目立つ。
更に隣には不審者の格好をしている私がいることで尚目立つ。
「あー始まる前に嫌になりそうよ」
「そう?私は楽しいけど?」
「それはサラが異常なのよ…」
「どうせならコスプレでもすれば良かったんじゃない?ほら、リリーがよく使うキャラのお姫様とか」
「…私じゃ衣装に着られるのがオチよ。キャラとスタイルが違いすぎるわ」
「ふーん?リリーはもっと自身持っていいのに。似合うと思うんだけどね」
「客観的に見て、似合わない。それに気にして大会どころじゃなくなるわ」
「あはは。リリーはいざというとき緊張するもんね…っとアレ上野くんじゃない?」
「え?」
私たちの視線の先には黒髪の地味目なあどけなさの残る青年。
確かに上野樹さんに違いない。
「リリー話しかけなくて良いの?私が話しかけてあげようか?」
「な、なんで話しかけるのよ!ただ勝てなくて悔しいだけで、友達になりたいとかじゃないんだから!必要無いわ!」
「ふーんそれなら別に良いんだけどねー?」
サラがニヤニヤしながらからかってくる。
た、確かに文句の一つでも言いたいけど、今じゃなくても良いわ!
『開始30分前となりました。大会出場者の方は控え室にお集まり下さい。』
「呼ばれたわね。じゃ、サラ行ってくるわ」
「はーい遠くで見守ってるわ。リリー頑張ってねー。じゃ、FPSのブースでも行ってこよっと」
サラが手を振りながら立ち去っていく。
やはり海外だというのにあの行動力は凄い。
離れると急に心細くなってしまう。
控え室に入ると私に視線が集中する。
格好のせいかネームプレートのプレイヤーネームのせいか。
そのまま一番落ち着きそうな角の席に座る。
日本語も少しは勉強しているけれど、周囲の会話を聞き取れるまではいかない。
ソワソワして落ち着かないし、時間まで音楽でも聴いていよう…。
とイヤホンをつけようとした時だった。
「ハロー、クイーンローズ」
片言英語に目を向けると、誰かが話しかけてきていた。
目線を向けるとそこには……誰?金髪でチャラチャラした日本人男性が立っていた。
男はスマートフォンで英語に翻訳した画面を見せてくる。
『クイーンローズちゃん、女の子だよね?良かったら顔見せて!メッセージID交換しようよ(ハート)』
はぁ、こんな所でナンパとか…馬鹿じゃない?
わざわざ隠してるのに顔なんて見せるわけ無い。
あまりにも呆れ、そのまま無視して耳にイヤホンをつける。
男はまだ諦めずに、スマートフォンの画面をしつこく見せてくる…が完全無視の私の態度にイライラして来たようだ。
ー
「おい!返事くらいしろよ!」
男が私の肩に手を掛ける。
……流石にこれには我慢できない。
私が男を睨み、立ち上がろうとした時…。
私の肩にあった手から力が離れた。
「ねえ、ゲームの大会なんだしそういうの辞めようよ。わざわざ海外から来てくれてるんだし、日本人が悪く思われるの嫌じゃない?海外の大会に行くと、皆優しくしてくれるよ」
金髪男の手首を掴んでいるのは…上野樹。
「何だよテメェ…」
上野樹よりも身長が高い金髪が睨むが全く動じない。
また、手を振り解こうとするが、全然動いていない。
「オレは上野樹って言います。これ以上やるなら運営の人に相談しますが…」
「チッ!分かったよ!離せよ!」
ー
金髪がそういうと上野樹は手首を離した。
金髪は怒鳴り散らしながら去っていった。
会話の半分程しか聞き取れなかったけれど、恐らくこんな感じだったと思う。
そして…。
「アイアム ソー ソーリー」
上野樹は私の顔を見たまま顔の前で両手を合わせる。
彼なりの謝罪なのだろうが、何故彼が謝るんだろう。
謝るならあの金髪だし、助けてもらったのは私の方なのに。
「ア、アリガトウ…」
私は立ち上がり、マスクを取ってお辞儀をする。
カタコトの英語とカタコトの日本語。
少しだけ面白くなってしまってつい笑ってしまった。
まあ上野樹は何故笑ったか分からず戸惑っていたようだったけれど。
それでも、私の緊張は無くなった。
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