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2.そして少しずつ動き出す
27.そして少しずつ動き出す
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ここはアメリカにある、RDO開発会社のマウス・エンター社の一室。
サーバー内の様子が映し出されている画面を前に、チーフプロデューサーのトムが頭を抱えている。
「ああ…なんて事だ。こんな事になるなんて」
トムが頭を抱える様子に、チーフディレクターのジェリーが話しかける。
「トム、どうしたの?」
「ああ…恋のキューピッドの称号を手に入れたプレイヤーが現れたんだ。あれは…僕がRDOに唯一介入出来たクエストなんだ」
「あなたがこの称号を手に入れたプレイヤーは、今後プレイヤーたちに大きな影響を与えるだろう…って言っていた称号?」
「そうだよ。その称号を、完全予定外のプレイヤーが獲得したんだよ!」
トムは興奮ぎみに話を続ける。
「恋のキューピッドと言えば美しい女性だろう!?そしてこのクエストを達成出来るのは、ヒールを取れる教会のプリーストがメインだ!僕が想像していたのは、慈愛に満ちた美しい女性プリーストが恋のキューピッドになると思っていたんだよ!」
トムは興奮気味に話すが、聞いているジェリーは呆れている様子だ。
「そして恋のキューピッドになった女性プリーストが、有名になる事で大きな影響力を持っていく。それはプレイヤーだけに留まらず、NPC側へも良い影響を与える。そんな…アイドルみたいなRDOの中心プレイヤーになると、思っていたんだよ…」
そこまで話をした後、トムは大きく肩を落とし俯く。
「それが実際に称号を獲得したのが男性プレイヤーで、職もモンクと。…ただそれだけの事でこんなに騒いでいたのね」
「そんな事じゃないよ!僕が…いや、人類が介入出来た数少ない事例で、これはプラスに働く可能性が高いものだ。僕はそれだけ期待してたんだよ!」
トムが熱く語るのをよそに、ジェリーは呆れ顔で話し始める。
「それならもっとちゃんとしたクエストを割り込ませるべきだったわね。それに、あなたの理想はどうでもいいのだけれど…彼、イツキ・カミノ君は男性でモンク、という点を除けば称号をうまく活用するかもしれないわよ?」
「うん、それだけが救いだよ…無理やりRDOにクエスト一つ組み込むだけで数週間掛かったんだ。僕の努力が無駄にならない事を祈るよ…」
二人は話を終え、RDOのサーバーないの様子が映された画面に視線を戻す。
そして画面を見ながらトムが口を開く。
「ただこの称号が、NPCにここまで大きな影響が出るのは予想外だった。今後RDOの未来がどのようになるかが、全く予想できない。それに加えて驚かされたのは、NPCの思考能力の高さ。あれだけの思考能力をプログラミングで組むのは難しい。”神の意思”には驚かされるばかりだ」
「サーバーオープン二日目でしかないのだけれど、プレイヤー側もうちや政府の予想以上に頑張っているわね。まだまだ神々には遠く及ばないけれど」
「僕達にはこのゲームが少しでも人類に有利になるように、プレイヤー側を現実世界でサポートをする事しか出来ない。これは神々と人との神界戦争だ。そしてその結果が……」
「そうね。人が……た神から……れた”神の意思”。そして人々は…なければならないわ」
重い雰囲気の中、二人の会話は続く。
ただのゲームでしかないはずRDOに、まるで…世界の運命が掛かっているかのように……。
------
モンクギルド受付の、更に奥にある一室。
オレはプレイヤー達の対応を無事に終え、モンク教官であるガンターさんの横でとある問題に頭を抱えていた。
問題とは…最強厨と呼ばれるプレイヤー層が、オレの生放送の影響でモンクに注目してしまった。
その対処をどうしたらいいか、頭を悩ませていたのだ。
最強厨とは…プレイヤーたちの中でも戦闘面や金銭面で上位に入る事を何よりも優先するプレイヤー層だ。
努力して上位を目指すだけなら良いのだが、そのためなら他職を貶す人まで居るのが厄介だ。
MMOゲーム内では、職業による格差がどうしても発生してしまう。
パーティーで優秀な職やソロで優秀な職。
これは職業の特性が全て同じではない為に、バランスの良いゲームでもでどうしても発生してしまう問題だ。
RDOのようなキャラクターが一つだけで、育成の難しいゲームでは職業選びで失敗が痛手となる。
時間を掛けて育成しても、自身の職業が弱くてパーティーに入れず…そのままモチベーションが無くなりゲーム引退。…こんなのは少なくはない話だ。
最強厨の一部で、行き過ぎている層は…はそういった失敗を絶対に許さない。
最強で最高の効率を出せるパーティーでなければ認めない。
そして己の理想的な戦術までも持ち、それを他プレイヤーに無理やり押し付ける。
プレイスタイルの押し付けは…あまり褒められたものではない。
そしてオレは最強厨の層にモンクを広めてしまった。
最強厨がモンクに集まり、それがもし今後弱いと認識されれば?
オレは最強厨から攻撃の的にされるであろう。
まあそれだけなら構わない。
ただ…最強厨が集まるモンクが至る所で暴れれば?…そうなったらモンクという職業自体が嫌悪の対象になる。
アイシャさんもガンターさんもNPCだがお世話になっている。
オレがモンクを勧めたことで、モンクになったリリーさんのようなプレイヤーも居る。
そういった人たちに迷惑を掛ける結果にならないよう、対処しなければならない。
とは言っても特に良い解決法は思い浮かばない。
会ったプレイヤー達や生放送で、注意を促していくしか無いと思う。
後はRDOのプレイヤーを信じるのみ。
そして、気付けばもう夕方になっていた。
数2時間もすれば生放送の時間だ。
NPCクエストで今日はレベリングがまともに出来ていない…。
お節介で出遅れた事に若干の後悔を覚えつつも、頭は生放送で何を言うかで一杯になってしまった。
あぁ…勉強よりも頭をフル稼働している気がする…。
ここはアメリカにある、RDO開発会社のマウス・エンター社の一室。
サーバー内の様子が映し出されている画面を前に、チーフプロデューサーのトムが頭を抱えている。
「ああ…なんて事だ。こんな事になるなんて」
トムが頭を抱える様子に、チーフディレクターのジェリーが話しかける。
「トム、どうしたの?」
「ああ…恋のキューピッドの称号を手に入れたプレイヤーが現れたんだ。あれは…僕がRDOに唯一介入出来たクエストなんだ」
「あなたがこの称号を手に入れたプレイヤーは、今後プレイヤーたちに大きな影響を与えるだろう…って言っていた称号?」
「そうだよ。その称号を、完全予定外のプレイヤーが獲得したんだよ!」
トムは興奮ぎみに話を続ける。
「恋のキューピッドと言えば美しい女性だろう!?そしてこのクエストを達成出来るのは、ヒールを取れる教会のプリーストがメインだ!僕が想像していたのは、慈愛に満ちた美しい女性プリーストが恋のキューピッドになると思っていたんだよ!」
トムは興奮気味に話すが、聞いているジェリーは呆れている様子だ。
「そして恋のキューピッドになった女性プリーストが、有名になる事で大きな影響力を持っていく。それはプレイヤーだけに留まらず、NPC側へも良い影響を与える。そんな…アイドルみたいなRDOの中心プレイヤーになると、思っていたんだよ…」
そこまで話をした後、トムは大きく肩を落とし俯く。
「それが実際に称号を獲得したのが男性プレイヤーで、職もモンクと。…ただそれだけの事でこんなに騒いでいたのね」
「そんな事じゃないよ!僕が…いや、人類が介入出来た数少ない事例で、これはプラスに働く可能性が高いものだ。僕はそれだけ期待してたんだよ!」
トムが熱く語るのをよそに、ジェリーは呆れ顔で話し始める。
「それならもっとちゃんとしたクエストを割り込ませるべきだったわね。それに、あなたの理想はどうでもいいのだけれど…彼、イツキ・カミノ君は男性でモンク、という点を除けば称号をうまく活用するかもしれないわよ?」
「うん、それだけが救いだよ…無理やりRDOにクエスト一つ組み込むだけで数週間掛かったんだ。僕の努力が無駄にならない事を祈るよ…」
二人は話を終え、RDOのサーバーないの様子が映された画面に視線を戻す。
そして画面を見ながらトムが口を開く。
「ただこの称号が、NPCにここまで大きな影響が出るのは予想外だった。今後RDOの未来がどのようになるかが、全く予想できない。それに加えて驚かされたのは、NPCの思考能力の高さ。あれだけの思考能力をプログラミングで組むのは難しい。”神の意思”には驚かされるばかりだ」
「サーバーオープン二日目でしかないのだけれど、プレイヤー側もうちや政府の予想以上に頑張っているわね。まだまだ神々には遠く及ばないけれど」
「僕達にはこのゲームが少しでも人類に有利になるように、プレイヤー側を現実世界でサポートをする事しか出来ない。これは神々と人との神界戦争だ。そしてその結果が……」
「そうね。人が……た神から……れた”神の意思”。そして人々は…なければならないわ」
重い雰囲気の中、二人の会話は続く。
ただのゲームでしかないはずRDOに、まるで…世界の運命が掛かっているかのように……。
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モンクギルド受付の、更に奥にある一室。
オレはプレイヤー達の対応を無事に終え、モンク教官であるガンターさんの横でとある問題に頭を抱えていた。
問題とは…最強厨と呼ばれるプレイヤー層が、オレの生放送の影響でモンクに注目してしまった。
その対処をどうしたらいいか、頭を悩ませていたのだ。
最強厨とは…プレイヤーたちの中でも戦闘面や金銭面で上位に入る事を何よりも優先するプレイヤー層だ。
努力して上位を目指すだけなら良いのだが、そのためなら他職を貶す人まで居るのが厄介だ。
MMOゲーム内では、職業による格差がどうしても発生してしまう。
パーティーで優秀な職やソロで優秀な職。
これは職業の特性が全て同じではない為に、バランスの良いゲームでもでどうしても発生してしまう問題だ。
RDOのようなキャラクターが一つだけで、育成の難しいゲームでは職業選びで失敗が痛手となる。
時間を掛けて育成しても、自身の職業が弱くてパーティーに入れず…そのままモチベーションが無くなりゲーム引退。…こんなのは少なくはない話だ。
最強厨の一部で、行き過ぎている層は…はそういった失敗を絶対に許さない。
最強で最高の効率を出せるパーティーでなければ認めない。
そして己の理想的な戦術までも持ち、それを他プレイヤーに無理やり押し付ける。
プレイスタイルの押し付けは…あまり褒められたものではない。
そしてオレは最強厨の層にモンクを広めてしまった。
最強厨がモンクに集まり、それがもし今後弱いと認識されれば?
オレは最強厨から攻撃の的にされるであろう。
まあそれだけなら構わない。
ただ…最強厨が集まるモンクが至る所で暴れれば?…そうなったらモンクという職業自体が嫌悪の対象になる。
アイシャさんもガンターさんもNPCだがお世話になっている。
オレがモンクを勧めたことで、モンクになったリリーさんのようなプレイヤーも居る。
そういった人たちに迷惑を掛ける結果にならないよう、対処しなければならない。
とは言っても特に良い解決法は思い浮かばない。
会ったプレイヤー達や生放送で、注意を促していくしか無いと思う。
後はRDOのプレイヤーを信じるのみ。
そして、気付けばもう夕方になっていた。
数2時間もすれば生放送の時間だ。
NPCクエストで今日はレベリングがまともに出来ていない…。
お節介で出遅れた事に若干の後悔を覚えつつも、頭は生放送で何を言うかで一杯になってしまった。
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