VRMMOを始めただけなのに、何故世界の危機に巻き込まれたのだろうか?

飛楽ゆらる

文字の大きさ
上 下
27 / 85
1.スタダ

26.恋のキューピッド

しおりを挟む

オレが教会前で景色の余韻に浸っていた時にそれは起こった。

『プレイヤー 上野 樹 さんが ユニーククエスト「桜の舞う季節に…」をクリアしました』

初めて流されるRDOのワールドアナウンス。

(え、オレ!?というかア、アナウンス自体なんて初めて聞いたぞ!それとユニーククエストだって!?)

『上野 樹 さんには、クエスト報酬として称号「恋のキューピッド」が与えられます』

「はあ!?称号!?というか何その称号名!?」

オレはあまりの事につい大声を出してしまう。

『それに伴い、神国プロテアの一部NPCに変動があります。。
クエストにも変影響があるので、クエストをよく確認するようお願い致します』

オレはあまりの事に頭が真っ白になり、数分そのままで硬直したままになるのだった。

------

そのワールドアナウンスにより、恋のキューピッドこと上野 樹の名前はRDOに留まらず、現実世界の世界にも広まった。

そしてこの称号により、面倒な事になっている。
何故なら称号が外せない。
メニューを隅から隅まで見ても、称号という項目が無い。
ステータス画面にある名前の下に恋のキューピッドと載っているだけ。
勿論ステータス画面をタップしても何も起こらない。

まあステータス画面だけであれば、別に問題は無かった。
一番の問題は、プレイヤーの頭上には常にプレイヤー名が表示されているのだが…入手した称号も常に表示されるようになっているのだ…。

つまり…他プレイヤーからオレを見た場合。

称号(恋のキューピッド)とプレイヤー名である上野 樹が2段に分けられ、頭上に表示される。
全プレイヤーへの晒し者である。

そしてこの称号による影響は、プレイヤー内には収まらずにNPCにも影響を与える効果を持っていた。

ララさんは教会司祭の娘という事で、教会関係者の中では名前を知られていた。
また、ルークさんもクルード商店を経営する優秀な商人。徐々に名前が知られるように。

この2人の恋の話はは…クエストクリア後すぐにプロテア中のNPCに広まり、街中のNPCで噂話をされる程有名な話に。
そして…その話の中には恋仲を取り持った冒険者の名前も出てくる。

その冒険者の名前は上野 樹。オレである。

アナウンス後、オレはNPCからも恋のキューピッド扱いされている。

MMOでは公平さを保つために、プレイヤー1人の行動が大きくゲーム世界に影響を与える事はほとんど無い。
ただRDOでは違うらしい。オレの中にあるMMOの固定概念を全て壊していってくれる。考え方を改めよう。

このゲームにはまだまだ分からない要素が沢山ある。
オレは楽しみながら、出来るだけ早く見つけたいと思った。

そして…オレはステータス画面の称号を見つめてため息をつく。
小さくは無い後悔があるが、過ぎた事はどうにもならない。

気持ちを切り替え、スキルクエストの報告へモンクギルドへと向かった。

騎士団の建物内に入り、モンクギルドの受付部屋の扉を開けようとする。
すると…部屋の中から多くの人の話し声が聞こえてくる。
オレは不思議に思いながらもその扉を引いた。

モンクギルドの受付が有る狭い部屋。
その部屋には想像ができない光景が広がっていた。

昨日まではモンク希望のプレイヤーはほぼ居らず閑散としていた。
それがなんという事だろう。
モンクギルドの受付部屋には、多くのプレイヤーが押し寄せて行列が出来ているではないか!
そして暇そうにしていたアイシャさんがプレイヤーの対応に追われ、休む暇もなく忙しそうにしている。
また…アイシャさんの手伝いだろうか、受付には見た事のない男性職員がもう一人増えていた。
あのモンクギルドに何が有ったのだろうか。

部屋に入ったは良いが…行列により通れず、どうしたものか…と立ち尽くしていると、オレに一人の男性プレイヤーが声を掛けてきた。

「生放送していた上野さんですよね!放送見ました!良ければ握手して下さい!」

なんとオレの放送を見ていたプレイヤーだった。
戸惑いながらもオレは男性プレイヤーと握手をする。

そして…それを皮切りに、周りのプレイヤーが急に集まってくる。

「上野さん!オレも握手を!」
「放送見ました!」
「ハイ!ミスターイツキ!ハグをしよう!」
「上野さん!アイシャさんに会わせて頂きありがとうございます!」

オレの周りに人だかりが出来るわ、一気に話し掛けられるわで対応しきれない。
ただ、集まったプレイヤーに話を聞いていると、オレの生放送の影響によりモンク志望のプレイヤーが増えたようだ。
理由はオレの戦闘を見て、モンクの有用さに気付いた人やモンク最強!と勘違いした人。
一部はアイシャさんのファン。

モンクが増えるのは喜ばしい事だが、モンクが最強と勘違いしている人が増えるのは良くない傾向だ。
このモンクという職業だが、ソロであればトップクラスの性能だと思う。
ただ今後パーティー狩りが主流になっていくであろう事を考えると、器用貧乏でパーティ内での役割が中途半端になる可能性が高い。
そして効率を考えるならそれぞれの役割を、一番こなせる職の方が需要が出る。

パーティーの盾となる騎士や、回復や支援の要となるプリースト。火力なら遠距離で安全に高い火力を出せる魔法使いやハンター。
盾役も回復も支援も火力役も出来るモンクだが、専門職に比べ突出した部分があるとは思えない。
モンクを最強と勘違いして、パーティーに入る事が出来ずに絶望するプレイヤーが出てくる未来は困る。

そして…この問題の原因はオレだ。
責任を持って、モンク最強と勘違いしているプレイヤーに、注意を促さなければならない。
あぁ…次々に問題が増えていく。

中間管理職ってこんな感じなんだろうか・・・胃が痛くなってきた。

======================================
称号(恋のキューピッド)
上野 樹 (かみの いつき)

武器種:ナックル

職業モンク中級 Lv.53

ステータス/
STR - 57
VIT - 24
AGI - 57
DEX - 35
INT - 24
LUK - 12

成長傾向/
STR 5 VIT2 AGI 5 DEX3 INT2 LUK1

スキル/15pt余り16pt
(パッシブスキル)
ナックル修練Lv1,キック修練Lv1
(アクティブスキル)
掌底Lv1,連打拳Lv5,
(マジックスキル)
パワーブレスLv1,スピードアップLv10,リジェネレートLv1

未修得
格闘修練,鉄壁,気功術,気弾,粉砕拳,連風脚
ヒール,キュア

装備/
半漁人の手+6/鎖帷子上下/
鉄のヘッドギア/トゲブーツ/祝福印(低)

======================================
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ユニーク職業最弱だと思われてたテイマーが最強だったと知れ渡ってしまったので、多くの人に注目&推しにされるのなぜ?

水まんじゅう
SF
懸賞で、たまたま当たったゲーム「君と紡ぐ世界」でユニーク職業を引き当ててしまった、和泉吉江。 そしてゲームをプイイし、決まった職業がユニーク職業最弱のテイマーという職業だ。ユニーク最弱と罵られながらも、仲間とテイムした魔物たちと強くなっていき罵ったやつらを見返していく物語

「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)

あおっち
SF
  脈々と続く宇宙の無数の文明。その中でより高度に発展した高高度文明があった。その文明の流通、移動を支え光速を超えて遥か彼方の銀河や銀河内を瞬時に移動できるジャンプ技術。それを可能にしたジャンプ血清。  その血清は生体(人間)へのダメージをコントロールする血清、ワクチンなのだ。そのジャンプ血清をめぐり遥か大昔、大銀河戦争が起こり多くの高高度文明が滅びた。  その生き残りの文明が新たに見つけた地、ネイジェア星域。私達、天の川銀河の反対の宙域だった。そこで再び高高度文明が栄えたが、再びジャンプ血清供給に陰りが。天の川銀河レベルで再び紛争が勃発しかけていた。  そして紛争の火種は地球へ。  その地球では強大な軍事組織、中華帝国連邦、通称「AXIS」とそれに対抗する為、日本を中心とした加盟国軍組織「シーラス」が対峙していたのだ。  近未来の地球と太古から続くネイジェア星域皇国との交流、天然ジャンプ血清保持者の椎葉清らが居る日本と、高高度文明異星人(シーラス皇国)の末裔、マズル家のポーランド家族を描いたSF大河小説「メジャー・インフラトン」の前章譚、7部作。  第1部「太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!」。  ジャンプ血清は保持者の傷ついた体を異例のスピードで回復させた。また血清のオリジナル保持者(ゼロ・スターター)は、独自の能力を飛躍的に引き上げる事が出来たのだ。  第2次大戦時、無敵兵士と言われた舩坂弘氏をモデルに御舩大(ミフネヒロシ)の無敵ふりと、近代世界のジャンプ血清保持者、椎葉きよし(通称:お子ちゃまきよし)の現在と過去。  ジャンプ血清の力、そして人類の未来をかけた壮大な戦いが、いま、始まる――。  彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。  本格的な戦闘シーンもあり、面白い場面も増えます。  是非、ご覧あれ。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

初めての異世界転生

藤井 サトル
ファンタジー
その日、幸村 大地(ゆきむら だいち)は女神に選ばれた。 女神とのやり取りの末、大地は女神の手によって異世界へと転生する。その身には女神にいくつもの能力を授かって。 まさにファンタジーの世界へ来た大地は聖女を始めにいろんな人に出会い、出会い金を稼いだり、稼いだ金が直ぐに消えたり、路上で寝たり、チート能力を振るったりと、たぶん楽しく世界を謳歌する。 このお話は【転生者】大地と【聖女】リリア。そこに女神成分をひとつまみが合わさった異世界騒動物語である。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜

FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio 通称、【GKM】 これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。 世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。 その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。 この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。 その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

処理中です...