VRMMOを始めただけなのに、何故世界の危機に巻き込まれたのだろうか?

飛楽ゆらる

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1.スタダ

21.桜の舞う季節に…

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※別人視点です

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また桜の舞う季節になりました。

今頃貴方はどこで、どのように過ごしているでしょうか?
この季節になると私は後悔で胸が締め付けられます。

そう…幼い頃の気恥ずかしさで、貴方を傷つけてしまったことが今でも…悔みきれません。
気恥ずかしさで貴方の前から去ったあの日から、後悔の日々が続いているのです。
もし、出来ることなら。もし、話すことを許して頂けるのであれば…あの日の事を貴方に謝罪したいです。
そして心から好きだったと…いえ、今もまだ貴方を好きだと…伝えたい。

ああ…こんなに苦しいのなら、あの散っていく桜の花弁と共に、私の後悔も散って消えてしまえば良いのに…

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私、ララ・アネットは教会の司祭であるお父様の娘に生まれ、今年で18歳になります。
この度、お父様の紹介で教会の司祭助手の方とお見合いをし、そのお方と結婚することとなりました。
相手のアルトン様は今年25歳。若くに司祭助手となった将来有望なお方です。
お姿も凛々しく…お顔も整ったお方で、多くの女性が見惚れております。
結婚相手としてはこれ以上無く、私には大変勿体無いお方だと思います。

ただ私には心残りがあるのです…。
幼い頃…13歳の頃です。教会の学校で仲良くして頂いていたルーク様。
ルーク様のお家は町に小さな商店を持つ、平民の生まれでした。
そしてルーク様はお話がとてもお上手で、何度かお話をしているうちに自然と一緒に居るようになりました。
私はお父様から言われるままに、良い家に嫁ぐための習い事をこなす日々でした。そこに私の感情は有りません。
…そんな中で貴方とお話をさせて頂いている時間は…とても楽しく…かけがえの無い時間でした。私は初めて心から楽しいと思いました。
その日々は私の人生の中で一番素晴らしい…幸せな時間であったと……数年経った今でも言えるでしょう。

それが続くうち、貴方へ恋心を抱いていたと…気づくまでに多くの時間が掛かってしまいました。
私が自身の気持ちに気付くまでが、遅すぎたのです。

そのままルーク様との幸せな時間は残酷にも過ぎ…私とルーク様が15歳となった年。学校を卒業する日が近づいて参りました。
私は卒業間際になり、貴方…ルーク様をお慕い申し上げていることに気付きました。
ルーク様への恋心に気付いた私は、気恥ずかしさでどのように接したら良いか分からず……ルーク様と距離を取るようになっていました。
決して嫌いになったわけではないのです…。
そしてそのままルーク様のお声がけを無視してしまい、そのお顔の表情が暗くなる事も…少なく有りませんでした。
もし戻れるのであれば、と何度願ったことでしょう。

そして桜が舞う季節。
卒業式当日あの日…ルーク様から声を掛けていただきました。
私は気恥ずかしさから…もじもじとするばかりで、目も合わせられず、会話もする事が出来ないでいました。
するとルーク様は片膝を地面につき、私を見つめてこう言いました。

「ララ…いえ、ララ様。身分が分不相応な事を承知の上…私の気持ちをお伝えする事をお許しください。私…ルークは、貴方ララを…ずっとお慕い申し上げていました。貴方のお姿、声、優しさ全てが愛おしい。私が成人となり家を継ぎ、一人前の商人となった頃。貴方を妻として迎えさせていただきたい…。願わくば…願わくば今日だけはお返事をお聞き願えませんか…」

ルーク様の精一杯の言葉だったのでしょう…。ルーク様のお顔は桜よりも赤く染まっておりました。
そして…そのまま右手を差し伸べてきました。

「私ルークの思いを…受け入れてくださるのであれば……お手を…お願いいたします……」

私はとても嬉しかった。
ルーク様も私と同じ…お互いに思い合っていた。
その事に私は喜び、感情が溢れ出しました。

ただ私は…その気持ちを言葉にも…行動にも表すことができなかったのです。

ルーク様のお言葉はとても素晴らしいもので、ずっと…恋心に気付いてから私が願っていたお言葉でした。
それにも関わらず、私は逃げたのです…。
私は恥ずかしさから…そのお手を取ることが。
ルーク様のお言葉にお返事をすることが出来なかった…。

私は何もせず、ただその場を去ったのです。

…一度振り返った時の、ルーク様の悲しんだお顔が…目に焼きついて離れません。
私は意気地なしです。私の心が弱かったのが…全て悪いのです…。
そして4年の歳月が流れても尚、ルーク様への恋心とあのお顔が…忘れることが出来ません。

出来ることなら、あの卒業式の日に戻りたい。
神様…お願いです。私の気持ちを伝えれなくとも良いのです……。
ただ…あのような無礼な態度で…ルーク様を悲しませないよう…しっかりとした態度で…お断りできれば良いのです。

そして、このような私がアルトン様と結婚し、幸せになって良い筈がありません…。
アルトン様には私のような者ではなく…もっと素晴らしいお方が伴侶となるべきです…。

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…これはスキルクエストのお使いクエストの一つだ。
クエスト名は 「桜の舞う季節に・・・」

ヒールを教えてもらうだけのスキルクエストの筈だったのだが、教会関係者のNPCであるララさんとの会話を終えた後、ララさんの手紙というアイテムが落ちていた。
その内容がコレだ。…小説が一本書けそうな内容で、物凄く重い。
そしてオレに似たような経験があったからか…凄く、もやもやする。

NPCだろうが何だろうが関係ない。
…出来るならララさんに協力したい。
ルークさんへ、この数年越しの想いを届けてあげたい。

そう思ってしまったオレは即、スキルクエストを中断。
そのままララさんの元を立ち去り、プロテアの何処かに居るであろう、ルークさんを探す事にした…。
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