VRMMOを始めただけなのに、何故世界の危機に巻き込まれたのだろうか?

飛楽ゆらる

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1.スタダ

18.モンク先輩

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地下二階の階段を見つけたらリリーにフレンドコールを返そうと思う。
僕には心の準備が必要だ。

さて、海底洞窟一階の探索を始める。
クエスト対象が居ないので敵はスルーしようと思っていたのだが、気になるモンスターが居る。

名前はヒドラ…イソギンチャクみたいなモンスターだ。
触手がうねうね動いており、マンドラゴラさんと同じようなモンスターだ。
少し違うのが触手がヌメヌメしているのが分かる。
とても妄想を掻き立てられる素晴らしいモンスターなのだが、タイミングが悪い。
今はそんな要素に構っている暇はない。
オレはひたすら地下二階への階段を探して歩く。

相手を同世代の女性と意識するから悪いのだ。
心を無にすれば良い。
…とか思っていたら下への階段を見つけてしまった。

緊張はするが、現実じゃ無い。
オレだって大丈夫な筈だ。
キリッ。

「フレンドコール、リリー・ローズ・グリーン」

プルルル…リリーへのフレンドコール音が頭に鳴り響く。

かなり昔には携帯出来る電話は無く、家の固定電話しか存在しなかったそうだ。
その頃異性に電話をするのは、かなりハードルが高かったに違いない。もしご両親が電話に出たら、オレなら即切るヘタレな自信があるわ。

そんな余計な事を考えていたらリリーが応答したようだ。
『あ、樹こんばんは』

ん?こっちは朝の8時半位だぞ?あ、時差か。

『リリーこんばんは?そっちは今何時?』
『あっそうか、樹は日本だから時差が有るんだ!イギリスは今17時過ぎだよー』

『そうか、9時間くらい違うね。日本は今朝8時過ぎだよ』
『あははっ、ならおはようだね!おはよう樹!』

『うん、おはようリリー』
『何か変な感じだねー。それよりも樹、今レベルいくつ?』

『今48だよ。リリーは?』
『うーん、私は40で中級になった所。思ったよりも離れてるなー。こっちは昼間だから追い付いてないとおかしいのに』

『まあオレも初日だからほとんど寝てないし。リリーもレベル高い方だと思うよ。で、フレンドコールして来たのは何で?』
『あーそれは…ね…ううん、それはまた今度話す!レベル近くなったら一緒に狩りしよう!それだけ!じゃあね!』

『え、ああ…分かった。じゃあね?』

フレンドコールを終了しました。との表示。
あれだけ身構えていたのに拍子抜けだ。
唐突に終わったが、リリーの用件は何だったんだろ?

まあ、今度話してくれるだろう。
オレは目の前にあった地下2階の階段を降りる。

地下2階でクエスト対象になるのは…クラゲ型モンスターのマリンが落とすクラゲの脚と、カニ型モンスターのクラブが落とすかにニッパ。
かにニッパって…翻訳ミスかな?ツデ○ーへデームベトーン?

水棲型モンスターであるマリンとクラブだが、どちらもHPと防御が高い。
マリンは柔らかい体で打撃を吸収するし、クラブはまんま蟹だから甲羅が硬くてダメージを与えにくい。
けど、相手の攻撃自体はそれほど早くなく回避は容易い。
倒すのに時間が掛かるが、特にこれといった問題もなかった。
経験値は時間掛かるわりに少ない気がする。

クエスト分の収集品を確保して次は地下3階へ。
倒すのは半漁人というモンスターなのだが。
うん、魚が二足歩行してる。
鱗と脚にヒレと水かきがついた人間の手足がついていることと、顔がおっさんな事以外は魚だ。
お前はシーマンか。
結構リアルで気持ち悪い。体長も人間と同じで175センチ程。

そしてこの半漁人が予想外に強い。
アクティブモンスターに加え、ペタペタ走ってくる速度も人間の近距離走と同じくらい。
攻撃も人間のパンチやキックと同じような速度。
おまけに格闘技スキルでも持っているのか、こちらの攻撃を受け流したりうまく躱したりする。
一番驚いたのが…モンクのスキルである連打拳を使ってきたことだ。

今までのモンスターは、一定の攻撃しかして来なかった。
しかし、半漁人のような上位モンスターになってくるとアクティブスキルを使ってくるようだ。
今後…魔法やもっと強力なスキルを使ってくるモンスターが居るかもしれない。

ただ初見ではあったが、オレは運が良かった。
初見が自身の職であるモンクのスキルであった為に、特性を理解して回避することが出来た。
知らない職のスキルであれば、恐らく直撃していただろう。

オレは大切な事を教えてくれた半漁人を、敬意を込めてモンク先輩と呼ぶことに決めた。
先輩、胸を借りるッス。

その後は半漁人改めモンク先輩と楽しく殴りあい。
速度はこちらの方が上なようで、連打拳にだけ注意していれば隙を見てダメージを与えることが出来た。
暫く戦って分かったが、動きもパターンが少なく単調。

そのため、二匹目以降はオレの一方的な戦い。
一度だけ二匹に囲まれたが、練習の為にあえて戦った。
後ろに回られはさまれる形にならないよう、距離を取ったり向きに注意したり。
とても良い経験になったと思う。

黙々と50匹位倒したところで、やっと目的の半漁人の唇が20個集まった。

(そして…!ついに出た!オレのRDO初レアだ!)

なんと半漁人の手というナックルが二つもドロップした!
今装備している鉄のナックルよりも、攻撃力がかなり高い!
そして何より初めてのレアドロップが嬉しい。

RDOサーバーオープン後、倒したモンスターは1000匹を超えているだろう。
その間収拾品以外のドロップは一切無かった。
これは設定確率が低いのか、リアルラックが無いからなのか…。
レアドロ無いの?とは気にしてたんだ。

リアルラックはオンラインゲームにおいて大きな影響を与える。
いや、最も重要な要素かもしれない。

レアドロップ率0.02%、つまり5000分の1だとする。
そのドロップ率で計算すると5000匹で 63.2%。
10000匹倒したとしても86.4%、13.6%の人は出ない。

それとは反対に、数匹倒したらでちゃいましたー(テヘペロ
というプレイヤーも存在する。
それがMMOで言うリアルラックの差だ。
いつかは確率は収束すると言われる。
けれど狩り数分の早い段階でレアドロップを手にするのと、数時間掛けた後でやっと手にするのでは差が大きいのは分かるだろう。

いやまあ、結果的に入手出来れば、確率負けしていても良いんだ。
オレは、数万倒して、何も、残らなかった……(経験談)

という事で、オレはレアドロップをとても喜んでいた。
うーん、二個出たし片方どうしようかな。

オレは考えながら、プロテアにホームストーンで帰還した。
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