VRMMOを始めただけなのに、何故世界の危機に巻き込まれたのだろうか?

飛楽ゆらる

文字の大きさ
上 下
16 / 85
1.スタダ

15.ガンター戦

しおりを挟む
さて生放送も終わったし、ゲームに全力を尽くそう。
上位プレイヤーに後れを取ってしまう。

急いでモンクギルドへ戻る。
アイシャさんに、ランクアップクエストのグールの牙を渡す。

「樹さん早い…えと、グールの牙20個。確かに確認しました!」

「…次はガンターさんの所へ行って、手合わせをして頂きます」

「分かりました。あ、その前に…グールについてなんですが……」

アイシャさんにグールの初見殺しについて説明し、ランクアップクエストを受ける人への注意を行なってもらうよう頼んだ。

グール「やあ!噛むね!」

「わ、分かりました。そんな危険な敵だとは、私も知りませんでした。確かにグールで怪我を負う方が多かったです。そういう理由だったんですね…。初見の方には、今後説明を行ないます」

アイシャさんは話を続ける。

「それとですが、モンク志望のプレイヤーが急に増えたんですよ。何ででしょうね?ここ一時間で、20名以上のプレイヤーが来ましたよ」

(…オレの影響かな?モンク普及に役立つなら良いさ。アイシャさんに言っても解らなさそうだけど)

「はは…何ででしょう、分かりませんね?まあ、これからモンクの志望の方がもっと増えると嬉しいですね」

「はい!モンクの方が増えて、私のきゅうりょ…コホン。モンクの良さがどんどん広がればいいと思います(ニコッ」

アイシャさん意外と黒い…?
笑顔が少し胡散臭く見えなくも…いやいや、そんなはずは。
何を言っている。かわいいは正義だ。それ以外に理由がいるか?
アイシャさんは可愛い。それで良いじゃないか。

「うん、可愛い」
「え、可愛い…?」
「あ、すいませんこちらの話です」

アイシャさんは不思議そうに首を傾げている。

そのまま挨拶をして、奥の部屋へ向かった。

部屋に入る前に音量を下げてから入室。
出迎えてくれたのはガンターさん。
つるぴかムキムキおっさん。推定40後半~50前半。

「失礼します。ガンターさん、中級モンクのランクアップクエストの件で来ました」

「おお樹殿!アイシャから聞いておるぞ早速訓練場へ行こう!」
ガンターさんはそう言いながら部屋から出て行こうとする。
ちょっと待て!焦りすぎだろう!
オレは慌てて呼び止める。

「ガンターさんちょっと待って!」
「待たん!教会騎士団の建物裏に訓練場がある!先に行ってるぞ!」

訓練所へ行くと、ガンターさんの姿が。
それとモンクギルドの職員だろうか。モンクの格好をした人が二人立っていた。
オレはガンターさんの前へと急ぐ。

「よし、早速始めよう!条件はワシに一発でも攻撃を当てられれば合格だ!尚受け流された攻撃はカウントされん!それと、ワシは攻撃を受けるだけで攻撃はしないし、スキルの使用は魔法を含めて全て使用して良い!」

「分かりました」

オレとガンターさんは適度に距離を取る。
そこでモンクの格好をした一人から開始の合図が出された。

「試験開始!」

試験が開始された。まずは様子を見る。
ガンターさんは左手を前に、右手は腰の方に構えている。
左手で受け流した後右手でパンチを繰り出す型、だろうか。

スピードアップを使用し、ガンターさんに一気に詰め寄る。
初弾に軽くジャブを入れたが、簡単に回避された。
一発当てればいいのだから…とパンチとキックでコンビネーションをする。
ほとんどがうまく回避される。回避しきれないものは手で受け流される。

「む、早いな…これは油断できん」

ガンターさんがそう呟くが手は緩めない。
コンビネーションを続けながら、狙う位置やタイミングをずらして攻撃を当てようとするが…当てることが出来ない。
苦し紛れに連打拳を放ったら、スキルについて熟知されているようで簡単にかわされた。
そこで一度距離を取った。

(これは、思ったよりも難しいな)

暫くやって分かったが、ガンターさんはかなり強い。
ステータスの差もあるだろうが、実戦経験や武術の熟練度もオレの遥か高いところに居る。
…というか、これ格闘経験無いプレイヤー当てれるの?

試験に違和感を感じつつも、奥の手を使う事にする。
暫くコンビネーションをした後、スキルである連打拳を放った。
連打拳の発動モーションを見たガンターさんは、それに応じた動きで最低限の回避行動をしようとする。

(ガンターさん甘いぜ!)

連打拳が来るタイミングで、何故かオレの右ストレートがガンターさんに直撃。その衝撃によりガンターさんが後ろへ後ずさる。

(ちっ…これでもガードされたか)

「なっ、何をした!?」

ガンターさんが驚きめを見開く。
オレがしたのは、スキルキャンセルという技術だ。
スキルの発動モーションを見せ、相手がそのスキルに応じた対応をする瞬間にキャンセル。
そして全く違う攻撃を放つ。
相手は予想外の攻撃に虚をつかれ、ガードを崩す事ができる。

ゲームによってはスキルをジャンプでキャンセルするジャンプキャンセルや、アイテムを使うことで攻撃モーションをキャンセルする、等の技法があった。
主に対人戦があるゲームで使われていて、プレイヤー相手に使用する技なのだが。
まさかNPC相手に使うとは思わなかった。

「連打拳をキャンセルして、ガードを崩すつもりだったんですが。どんな反射神経してるんですか…」

奥の手を使ってダメだったが、次を考えながら構えなおす。
(次は何するか…)

するとガンターさんが構を解く。
「はっはっは!樹殿もう良い!合格だ!お見事!」

ガンターは嬉しそうに笑いながらそう言った。

「下級、中級モンクでワシに一撃を与えたのは樹殿が初めてだ!素晴らしい!キャンセルと言ったか?あれは素晴らしいな!」

周りを見るとモンクギルド職員であろう二人も頷いていた。

「…一撃当てるのが条件というのは嘘で、実力を見る為でしたか」

「そうだ!騙して悪かったが、元々攻撃を当てれるとは思っとらんかった!本来は実力を見極めるだけだ!」

試験で感じた違和感の答えを聞き納得する。
その後、ガンターさんに肩を叩かれながら褒められた。かなり痛い。

「いやはや、今後が楽しみだ!上級になった時には、実戦方式でやろう!ワシも本気だすぞ!」

…出来れば勘弁して欲しい。正直、勝てる気がしない。
ガンターさんのLvを聞いたら、90を超えているらしい。そりゃ強い。
ガンターさんは笑いながら、満足そうにモンクギルドへと戻っていった。

そのままモンクギルドに行き、アイシャさんに報告。
中級モンクのランクアップに関する書類にサインした。

「樹さんおめでとうございます。これで中級モンクとして認められました」
アイシャさんが微笑んで祝ってくれると、疲れが吹っ飛びますわ。


さて、これでやっと中級モンクだ。
MMOでいえばここがスタートラインだろうか。
オレは気を引き締める。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ユニーク職業最弱だと思われてたテイマーが最強だったと知れ渡ってしまったので、多くの人に注目&推しにされるのなぜ?

水まんじゅう
SF
懸賞で、たまたま当たったゲーム「君と紡ぐ世界」でユニーク職業を引き当ててしまった、和泉吉江。 そしてゲームをプイイし、決まった職業がユニーク職業最弱のテイマーという職業だ。ユニーク最弱と罵られながらも、仲間とテイムした魔物たちと強くなっていき罵ったやつらを見返していく物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)

あおっち
SF
  脈々と続く宇宙の無数の文明。その中でより高度に発展した高高度文明があった。その文明の流通、移動を支え光速を超えて遥か彼方の銀河や銀河内を瞬時に移動できるジャンプ技術。それを可能にしたジャンプ血清。  その血清は生体(人間)へのダメージをコントロールする血清、ワクチンなのだ。そのジャンプ血清をめぐり遥か大昔、大銀河戦争が起こり多くの高高度文明が滅びた。  その生き残りの文明が新たに見つけた地、ネイジェア星域。私達、天の川銀河の反対の宙域だった。そこで再び高高度文明が栄えたが、再びジャンプ血清供給に陰りが。天の川銀河レベルで再び紛争が勃発しかけていた。  そして紛争の火種は地球へ。  その地球では強大な軍事組織、中華帝国連邦、通称「AXIS」とそれに対抗する為、日本を中心とした加盟国軍組織「シーラス」が対峙していたのだ。  近未来の地球と太古から続くネイジェア星域皇国との交流、天然ジャンプ血清保持者の椎葉清らが居る日本と、高高度文明異星人(シーラス皇国)の末裔、マズル家のポーランド家族を描いたSF大河小説「メジャー・インフラトン」の前章譚、7部作。  第1部「太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!」。  ジャンプ血清は保持者の傷ついた体を異例のスピードで回復させた。また血清のオリジナル保持者(ゼロ・スターター)は、独自の能力を飛躍的に引き上げる事が出来たのだ。  第2次大戦時、無敵兵士と言われた舩坂弘氏をモデルに御舩大(ミフネヒロシ)の無敵ふりと、近代世界のジャンプ血清保持者、椎葉きよし(通称:お子ちゃまきよし)の現在と過去。  ジャンプ血清の力、そして人類の未来をかけた壮大な戦いが、いま、始まる――。  彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。  本格的な戦闘シーンもあり、面白い場面も増えます。  是非、ご覧あれ。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

初めての異世界転生

藤井 サトル
ファンタジー
その日、幸村 大地(ゆきむら だいち)は女神に選ばれた。 女神とのやり取りの末、大地は女神の手によって異世界へと転生する。その身には女神にいくつもの能力を授かって。 まさにファンタジーの世界へ来た大地は聖女を始めにいろんな人に出会い、出会い金を稼いだり、稼いだ金が直ぐに消えたり、路上で寝たり、チート能力を振るったりと、たぶん楽しく世界を謳歌する。 このお話は【転生者】大地と【聖女】リリア。そこに女神成分をひとつまみが合わさった異世界騒動物語である。

VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?

ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚 そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?

神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜

FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio 通称、【GKM】 これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。 世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。 その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。 この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。 その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

処理中です...