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3.凸凹コンビと黒い人

凸凹コンビとダンジョン深部

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ーーーーーー

 ——JHWとの一件から一ヶ月が経過した。

 武具取引の騒動も収まりを見せ、マスコミも進展が無い事に飽きたのか、既にテレビでは騒動の前と同じような平和なニュースが流れている。

 そして、グンセさんの店には三人——僕とグンセさんと、ヒメさんの姿があった。

 僕は椅子に座ってタブレットで動画を見ているし、ヒメさんはその向かいの席で何故かライトノベルを読んでいる。

 グンセさんはそれを見てため息を吐く。

「なあ……お二人さん。ダンジョンに行ったり、買い物に行ったり何かする事はねえのか?」

 グンセさんの言葉に僕とヒメさんは返す。

「昨日ダンジョンに行ったので、今日はお休みです」
「そうよ。今日はしっかり休んで、ボーッとするのも大事よ」

 僕とヒメさんは届出は出していないが、仮パーティーとして一緒にダンジョンに潜るようになった。

 それと懸念していた素材のドロップは、僕が戦いに絡んでさえいれば問題無く落とすことが判明した。

 素材が落ちた瞬間、感動したのかヒメさんは感極まり涙目になったので……僕が元気付けるために笑ったら、ワールドエンドで殴られそうになった。

 どうやら僕は選択肢を間違えたのかもしれない。

 

「なら、せめて他の所行ってくれ、俺の商売の邪魔なんだよ」

「あら。この店に客が来ることなんて見た事無いけど?」

「たまに来んだよ。それに訳有りが多いんだ他に人が居ると入りずれえだろうが」
 
「グンセさんの所に来るのなんて僕くらいですよ。ボッタくるし」

「未だに根に持ってんじゃねえよ……それにたった一ヶ月で返済した奴は誰だよ」

 グンセさんは頭を抱える。


「あ、グンセさん。紅茶のおかわり頂いてもいいかしら」

 ヒメさんがそう言いながらカップを掲げる。

「あ、僕も麦茶下さい」

 僕もヒメさんにつられてコップを差し出す。

「テメェら……」

 グンセさんがわなわなと震え出す。

「あ……これはヤバいやつだ」
「ムノ君。先に逃げるわ」

 気がつくとヒメさんは出口の扉前へと移動していた。
 あ、ショートワープはズルイって!!

「あ、ちょっと……っ!」

 すぐに扉を空けて出て行くヒメさん。
 その様子を手を伸ばして見送るだけの僕。

 逃げッ——。
 身体を動かし始めた瞬間、グンセさんの手により僕の後ろの襟が掴まれる。

「ムーノー……?」

「ぎゃああああああ!!」

 
 その後、僕は正座させられてグンセさんにこっぴどく説教された。



ーーーーーー



 ——僕とヒメさんは場所を移して近くのファミレスへ。

 結局やる事は変わらず、タブレットとラノベ。
 ……ヒメさん友達に借りたって言ってたけど、そのラノベ完全に趣味だよね?表紙綺麗過ぎるし、帯まで付いてるし。絶対についさっき買って来たよねそれ。

 それとドリンクバーの空になったコップ、すっと自然に通路側に出されても僕は入れて来ないから。
 

 うーん……とても平和だが、これで良いのだろうか。
 18になるまでは正式なDHになるつもりは無いのは変えるつもりは無い。

 でもそろそろペア狩りも慣れて来たし、本格的にダンジョンに潜ってみるタイミングなのかもしれない。

 僕はそう決意し、真面目な表情をする。

「ヒメさん」

「あ、烏龍茶」
 
「あ、はい。 ……って違うわ!」

「あら?急にどうしたの?」

 ヒメさんはラノベに栞を挟んで閉じ、僕に顔を向ける。


「そろそろダンジョンの奥に潜ろう」

「ん?良いわよ」

「ええ、そんなにあっさり……」

「元々私も深部へ行きたかったけど、ムノ君が正式なDHになってから本格的に動くって言ってたから言わなかっただけよ」

「そんな素振り全く無かったじゃないか……本当は?」

「押しキャラが突然死んだわ……」

「は、はあ……」

「この鬱憤をはらす為に、魔物を滅する——ッ!!」

「さいですか……。ま、まあ行く気が有るようで良かったよ」

「まあそれは半分冗談だけど、深部に行きたいのは本当よ。その方がレベルを上げるのに効率が良いし」

 半分本気だったのか……。

「日帰りで潜るのにもそろそろ限界だし、ダンジョンに潜って深部で一泊。それで帰ってきたら一日休みにしよう」

「私はそれで良いわ」

「あっさり許可したけど……泊まりで怒られない?」

「DHしてて泊まりがけなんて当たり前でしょ……そんなの気にする人居ないわよ」

「は、はは。それもそうか。ヒメさん女の子だし、気にするかなーって」

「どちらかと言えば、ムノ君が私を全く女の子扱いしない方に文句を言いたいわね」

「え、そ、そうかな?以後気をつけます……」

「……冗談に決まってるじゃない。今まで通りで良いわよ……それで、明日から潜る?」

「そうしようか。それなら、野営用のテントとか買わないと」

「それじゃ、ここを出てDHショップに行きましょうか」

「あ、ならもう一杯だけ飲んでから……」

 僕は席を立ち上がるが——その瞬間、僕は失態に気づく。

「フッ、立ったわね。……ムノ君、メロンソーダ」

 やられた……というか、飲み物変わってるじゃ無いか。
 勝ち誇った顔のヒメさんを横目に、僕はコップを手に取った。

 ——その後、ヒメさんは僕の入れた烏龍メロンソーダを吹き出しそうになっていた。後で怒られたが悔いはない…ッ!


ーーーーーー

 ——そうして僕とヒメさんは歌舞伎町ダンジョンの深部を目指す事となった。

 歌舞伎町ダンジョンの情報は少ないが、グンセさんによればあの規模なら恐らく20階層の小規模ダンジョンだろうとの話だ。

 さて、僕とヒメさんの実力で一体どこまで行けるのやら。
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