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2.少年と不運の少女
幸運少年と大企業 交戦 3
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——号令と共に迫る警備部隊と遠距離の魔法と矢。
僕はグンセさんの後ろに隠れながら様子を伺う。
「おい!何であれだけカッコつけといて俺の後ろに隠れてんだよ!!」
グンセさんの大声が戦場に響く。
「あ、つい。いやーグンセさんは頼りになるなあ」
「盾にしといくよく言うわ!!」
そんなやり取りをしているとシル爺が一言。
「ホッホッホ……ならあの邪魔な後衛は爺にお任せを」
シル爺は短剣を左手に構える。
「シル爺は短剣なんですね?シーフ系かな?」
「いえ、私は——」
その瞬間シル爺の姿が消えたと思うと、先程まで魔法を放っていた魔法使い達の後ろにシル爺の姿が現れる。
そのまま魔法使い達に短剣をスッと切りつける動作をすると、その姿はまた消えて今度は僕の横に姿が現れる。
「うわっ!?」
僕はまるで瞬間移動のような動きに驚いてしまう。
「ホッホ。楽しんで頂けて何より。私を一言で言うなら——」
シル爺が喋り始めると同時に魔法使い達が前のめりに倒れる。
「——アサシンですかな?ああ、勿論殺してませんよ。麻痺させただけです」
シル爺の鋭い目付きに顔が引きつってしまう。
「うわあ……」
「殺さないように麻痺効果の短剣で斬りつけただけです。まあ、暫くは動けないでしょう」
「相変わらず早えな……ムノ、目で追えたか?」
「いえ、無理でした。シル爺有能過ぎません……?」
「ホッホッホ。でも前衛相手だと押し切れるか不安ですな。私は後衛と遊んでますよ」
「よし、敵も寄ってきたしそろそろ行くぞ?ムノ、油断はすんなよ」
「はい」
グンセさんはそう言うと敵の中央へとそのまま突っ込んでいく。まるで人間戦車?人間闘牛?とでも言えば良いのかな?スキルの効果か、周囲の警備部隊を弾き飛ばしながら一直線に突き抜けていく。
大半が弾き飛ばされた後再度起きているが、中にはそのまま気を失っている人も居るようだ。
「さて僕も……」
既に戦場は荒れ放題だが、僕も何もしない訳にはいかない。
そして周囲を見渡すと孤立してグンセさんに意識が向いている警備部隊の人員を見つける。
その人物に、ステータスの速度を生かして僕は駆け寄り後ろから首の後ろを手刀で叩く。——それだけで意識を失い倒れていく。
僕は孤立した人を狙って一人ずつ処理していく。二、三人目は無事終わるが、四人目の時には相手が気付き、こちらに振り向こうとする。その時。
「相手は俺だ!こっち見ろや!!」
突然のグンセさんの叫び声に、その人物は振り向くのをやめてグンセさんに意識が向く。恐らくタンクが良く使う、ヘイトを向けるスキルだったのだろう。
意識が向くのは一瞬だったがその一瞬は大きい。僕はそのまま昏睡させる。
状況を確認するとグンセさんの周りに15名程が居るだけで、他は戦闘不能になっているようだ。
あまり役には立っていないかもしれないが、グンセさんとこうして一緒に戦っている事に……つい笑みが溢れてしまう。
慢心するつもりは無いけれど、僕も足手まといでは無くなった。
そう思えた。
——そんな僕に声を掛ける人物。
黒紫のミスリルの胸当て、大きな両手槍、ガントレットとグリーブもミスリルだろうか。そしてその顔に無精髭を生やした40歳くらいの男性。——警備部隊のトップと思われる早川さんだ。
「やあ少年。何か良いことでも有ったかい?」
「……早川さんでしたっけ?いや、僕もここに居ていいんだって実感してまして」
「いやー俺からすると居ない方が良かったんだが。君達圧倒的過ぎてこれ勝負にならないって。でも、仕事しないとあそこの人に怒られるから、まだ戦えそうな君のところに来た訳だ」
「……何かやる気無さそうですね」
早川さんからは全く殺気を感じられず、むしろ嫌々戦っているような印象を受ける。
「はあ。いやさ、何で悪役やってんだろうってね」
「……はい?」
「ああ、いや、こっちの話だ」
「……よく分からないですが、戦うんですよね?」
「ああ」
「では早川さん……胸をお借りします」
僕はそう言うと、剣先を早川さんに向けて聖剣を握りしめる。
「貸せるほど差があるようには思えないけどねえ……」
早川さんも槍を構える。
僕はそれを見て思う。グンセさん程にはプレッシャーは感じないが、この人はかなり強い。恐らくだが多くの修羅場を多く潜り抜けてきたんじゃ無いだろうか。
僕はそんな人と戦える事が何故か嬉しく感じてしまい、つい笑ってしまう。
「——行くぞ」
そう言った早川さんが一歩踏み出す。
ガキィッ
その瞬間、僕の右肩を狙った槍の突きが放たれていた。僕は反応ギリギリで聖剣で受け流して突きを逸らす。それと同時に金属同士がぶつかり合う音が鳴り響く。
そして大振りな突きだと思ったのに、逸らした槍はすぐに戻っていてまた早川さんが構えている。
これだけの速度と重さでジャブ代わりの牽制。——と言う事はこの牽制を軽く捌けなければ勝機は見えてこないという事。
ここまで本気の勝負は初めてだが、僕は更に強くなるために早川さんを超えなければならない。
まだ、僕と早川さんの戦いは始まったばかりだ。
僕はグンセさんの後ろに隠れながら様子を伺う。
「おい!何であれだけカッコつけといて俺の後ろに隠れてんだよ!!」
グンセさんの大声が戦場に響く。
「あ、つい。いやーグンセさんは頼りになるなあ」
「盾にしといくよく言うわ!!」
そんなやり取りをしているとシル爺が一言。
「ホッホッホ……ならあの邪魔な後衛は爺にお任せを」
シル爺は短剣を左手に構える。
「シル爺は短剣なんですね?シーフ系かな?」
「いえ、私は——」
その瞬間シル爺の姿が消えたと思うと、先程まで魔法を放っていた魔法使い達の後ろにシル爺の姿が現れる。
そのまま魔法使い達に短剣をスッと切りつける動作をすると、その姿はまた消えて今度は僕の横に姿が現れる。
「うわっ!?」
僕はまるで瞬間移動のような動きに驚いてしまう。
「ホッホ。楽しんで頂けて何より。私を一言で言うなら——」
シル爺が喋り始めると同時に魔法使い達が前のめりに倒れる。
「——アサシンですかな?ああ、勿論殺してませんよ。麻痺させただけです」
シル爺の鋭い目付きに顔が引きつってしまう。
「うわあ……」
「殺さないように麻痺効果の短剣で斬りつけただけです。まあ、暫くは動けないでしょう」
「相変わらず早えな……ムノ、目で追えたか?」
「いえ、無理でした。シル爺有能過ぎません……?」
「ホッホッホ。でも前衛相手だと押し切れるか不安ですな。私は後衛と遊んでますよ」
「よし、敵も寄ってきたしそろそろ行くぞ?ムノ、油断はすんなよ」
「はい」
グンセさんはそう言うと敵の中央へとそのまま突っ込んでいく。まるで人間戦車?人間闘牛?とでも言えば良いのかな?スキルの効果か、周囲の警備部隊を弾き飛ばしながら一直線に突き抜けていく。
大半が弾き飛ばされた後再度起きているが、中にはそのまま気を失っている人も居るようだ。
「さて僕も……」
既に戦場は荒れ放題だが、僕も何もしない訳にはいかない。
そして周囲を見渡すと孤立してグンセさんに意識が向いている警備部隊の人員を見つける。
その人物に、ステータスの速度を生かして僕は駆け寄り後ろから首の後ろを手刀で叩く。——それだけで意識を失い倒れていく。
僕は孤立した人を狙って一人ずつ処理していく。二、三人目は無事終わるが、四人目の時には相手が気付き、こちらに振り向こうとする。その時。
「相手は俺だ!こっち見ろや!!」
突然のグンセさんの叫び声に、その人物は振り向くのをやめてグンセさんに意識が向く。恐らくタンクが良く使う、ヘイトを向けるスキルだったのだろう。
意識が向くのは一瞬だったがその一瞬は大きい。僕はそのまま昏睡させる。
状況を確認するとグンセさんの周りに15名程が居るだけで、他は戦闘不能になっているようだ。
あまり役には立っていないかもしれないが、グンセさんとこうして一緒に戦っている事に……つい笑みが溢れてしまう。
慢心するつもりは無いけれど、僕も足手まといでは無くなった。
そう思えた。
——そんな僕に声を掛ける人物。
黒紫のミスリルの胸当て、大きな両手槍、ガントレットとグリーブもミスリルだろうか。そしてその顔に無精髭を生やした40歳くらいの男性。——警備部隊のトップと思われる早川さんだ。
「やあ少年。何か良いことでも有ったかい?」
「……早川さんでしたっけ?いや、僕もここに居ていいんだって実感してまして」
「いやー俺からすると居ない方が良かったんだが。君達圧倒的過ぎてこれ勝負にならないって。でも、仕事しないとあそこの人に怒られるから、まだ戦えそうな君のところに来た訳だ」
「……何かやる気無さそうですね」
早川さんからは全く殺気を感じられず、むしろ嫌々戦っているような印象を受ける。
「はあ。いやさ、何で悪役やってんだろうってね」
「……はい?」
「ああ、いや、こっちの話だ」
「……よく分からないですが、戦うんですよね?」
「ああ」
「では早川さん……胸をお借りします」
僕はそう言うと、剣先を早川さんに向けて聖剣を握りしめる。
「貸せるほど差があるようには思えないけどねえ……」
早川さんも槍を構える。
僕はそれを見て思う。グンセさん程にはプレッシャーは感じないが、この人はかなり強い。恐らくだが多くの修羅場を多く潜り抜けてきたんじゃ無いだろうか。
僕はそんな人と戦える事が何故か嬉しく感じてしまい、つい笑ってしまう。
「——行くぞ」
そう言った早川さんが一歩踏み出す。
ガキィッ
その瞬間、僕の右肩を狙った槍の突きが放たれていた。僕は反応ギリギリで聖剣で受け流して突きを逸らす。それと同時に金属同士がぶつかり合う音が鳴り響く。
そして大振りな突きだと思ったのに、逸らした槍はすぐに戻っていてまた早川さんが構えている。
これだけの速度と重さでジャブ代わりの牽制。——と言う事はこの牽制を軽く捌けなければ勝機は見えてこないという事。
ここまで本気の勝負は初めてだが、僕は更に強くなるために早川さんを超えなければならない。
まだ、僕と早川さんの戦いは始まったばかりだ。
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