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2.少年と不運の少女
幸運少年と大企業 商戦 3
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ーーーーーー
※ムノ視点
——シャドウウルフ防具の出品をした翌日。
「今日はシャドウウルフ防具の値段を維持しつつ、武器の方へと移る」
「……うまく行きますかね」
「ここがうまくいきゃ、俺達の勝ちも同然なんだが……」
「武器、結局剣と槍しか集まりませんでしたね」
「……買い集めたマジック、レア武器は多少は有るが、JHWに弾がねえ事を悟られるとマズい。スーパーレア、レジェンドがどれだけ隠蓑になるか、だな」
「もしダメだったら……」
「その時はその時だ。資金全て費やして無理矢理相場を下げる。そうならねえに越した事はねえが……」
——そんな僕達の嫌な予感は的中してしまう。
グンセさんが浮かない顔をしながらパソコンを見つめる。
「……JHWに勘づかれたな」
「どうしたんです?」
「奴らスーパーレアとレジェンドのオークションに参加してるフリをしてるが、完全に一歩引いてやがる。それに一部の出品を取り下げして、完全に傍観するつもりだ。……こりゃ最悪のパターンだな」
「傍観してて売り上げが無くなるのは、大丈夫なんでしょうか」
「そうしても大丈夫って余裕を見せるつもりなんだろう。それが本当かどうかは分からねえし、ただの駆け引きかもしれねえ。だが……俺達はここを何とか耐えるしか無い」
「このまま傍観されると、剣と槍以外の在庫が……それを狙ってるんでしょうか」
「その可能性が高いと思ってるんだろうな。JHW以外の武器を買い漁って、それを安く出品して凌ぐが……JHWと俺達の資金の根比べになるな」
グンセさんは肩を落とし、暗い表情をする。
もしこれが続けば僕達の資金が底をつき、相場の維持が難しくなってしまう。
そうなってしまえばJHWは武器販売の主導権を取り戻し、取り返しの付かない事になってしまう。
何か、出来ることは無いのだろうか。
——それから一週間根比べが続き、僕達の資金が底が見えてきてしまう。
「若、JHWの警備部隊が付近に潜り込んでいたそうです」
シル爺が店内に入りグンセさんに報告をする。
「……あちらさんも、こっちの出方が気になってはいるって事か。向こうが痺れを切らすのも時間の問題だが……」
グンセさんは浮かない顔で顎に手を当て、思考する仕草をする。
「後数日でも、耐えられるんでしょうか……。僕お金になるような素材をすぐに取って来ましょうか」
「いや、今動きを見せるのはマズい。それに警備部隊が動き始めてると言っただろ。ムノも奴らには気を付けろ」
「そういえば……JHWの警備部隊って?」
「……JHWの大事な取引の警備を名目に作られた部隊なんだが、実際には他社への脅し、最悪の場合には力尽くでも従わせる為の部隊だ。下手なヤクザよりもタチが悪いし、金でゴールド、シルバーランクの元DHを数人雇ってて戦闘能力も高い。気を抜いて後ろからやられんじゃねえぞ」
「うわ、そんな部隊なんですか……もっと早く言ってくれれば良かったのに」
「言っても何も変わらねえだろ。ま、遭遇したら全力で逃げとけ」
「そうします……」
——そこからまた二日。
相変わらずグンセさんの表情が暗い。
「……そろそろ限界だな。さてどうするか。栗生の奴にJHWデモを誘導させるか?いや、それよりも……」
グンセさんがブツブツと言い始めた。これは本当にまずい状況なのかもしれない。どこからかマジックやレア武器が調達さえ出来れば——。
カランカラン
突然グンセさんの店の扉に付いているベルの音が響く。
目を向けると、そこには大柄で赤いスーツを着た金髪の外人女性。
グンセさんはその女性に目を向けると、顔をしかめる。
「テメェは……」
「あら、レディに向かってテメェは無いんじゃない?」
女性はグンセさんの表情を見てフッと笑う。
「……何しに来やがったレーガン」
対するグンセさんは女性を睨みつける。
「昔の友人が困ってるって思って、来てあげたんじゃない?——あら、そちらの坊やは?」
女性は僕の方を向き声を掛けてくる。
「初めまして、ムノと言います。グンセさんにお世話になっている身なんですが……あなたは?」
「グンセがDHだった頃の友人のレーガンよ。うーん、というよりも元ライバルかしら?」
「……誰が友人だよ。ムノ。コイツはミスリルランクのDHで、狂拳レーガンと言われてる女だ。色々とぶっ飛んでるから気を付けろ」
「随分な言い方ね?また昔みたいにボッコボコにしてやろうかしら?グンセちゃん?」
「あ?やれるもんならやってみろよ?テメェのヘナチョコみてえなパンチなんて効くわけねえだろうが」
二人の眼の付け合いが始まり、バチバチと火花が散る錯覚が見えそうになる。
こ、この二人、仲悪いんだろうか?
「ま、まあ。二人とも落ち着いて下さい。レーガンさんは何故ここに?」
レーガンさんは先ほどの睨み付けていた表情を戻し、急に真面目な顔に切り替わる。
「そうそう。私が来たのは——商談よ」
商談?今このタイミングで?
レーガンさんは話を続ける。
「私は今すぐにでもマジック、レア等級の武器を合わせて200個を用意して渡す事ができるわ」
「え……」
僕は驚き、慌ててグンセさんの表情を伺うが、グンセさんの表情は優れない。
「その代わり、私が求めるのは——」
僕は次の言葉が来るのを固唾を呑んで見守る。
「あなた達が隠している、レアポップの魔物素材の収集方法よ」
※ムノ視点
——シャドウウルフ防具の出品をした翌日。
「今日はシャドウウルフ防具の値段を維持しつつ、武器の方へと移る」
「……うまく行きますかね」
「ここがうまくいきゃ、俺達の勝ちも同然なんだが……」
「武器、結局剣と槍しか集まりませんでしたね」
「……買い集めたマジック、レア武器は多少は有るが、JHWに弾がねえ事を悟られるとマズい。スーパーレア、レジェンドがどれだけ隠蓑になるか、だな」
「もしダメだったら……」
「その時はその時だ。資金全て費やして無理矢理相場を下げる。そうならねえに越した事はねえが……」
——そんな僕達の嫌な予感は的中してしまう。
グンセさんが浮かない顔をしながらパソコンを見つめる。
「……JHWに勘づかれたな」
「どうしたんです?」
「奴らスーパーレアとレジェンドのオークションに参加してるフリをしてるが、完全に一歩引いてやがる。それに一部の出品を取り下げして、完全に傍観するつもりだ。……こりゃ最悪のパターンだな」
「傍観してて売り上げが無くなるのは、大丈夫なんでしょうか」
「そうしても大丈夫って余裕を見せるつもりなんだろう。それが本当かどうかは分からねえし、ただの駆け引きかもしれねえ。だが……俺達はここを何とか耐えるしか無い」
「このまま傍観されると、剣と槍以外の在庫が……それを狙ってるんでしょうか」
「その可能性が高いと思ってるんだろうな。JHW以外の武器を買い漁って、それを安く出品して凌ぐが……JHWと俺達の資金の根比べになるな」
グンセさんは肩を落とし、暗い表情をする。
もしこれが続けば僕達の資金が底をつき、相場の維持が難しくなってしまう。
そうなってしまえばJHWは武器販売の主導権を取り戻し、取り返しの付かない事になってしまう。
何か、出来ることは無いのだろうか。
——それから一週間根比べが続き、僕達の資金が底が見えてきてしまう。
「若、JHWの警備部隊が付近に潜り込んでいたそうです」
シル爺が店内に入りグンセさんに報告をする。
「……あちらさんも、こっちの出方が気になってはいるって事か。向こうが痺れを切らすのも時間の問題だが……」
グンセさんは浮かない顔で顎に手を当て、思考する仕草をする。
「後数日でも、耐えられるんでしょうか……。僕お金になるような素材をすぐに取って来ましょうか」
「いや、今動きを見せるのはマズい。それに警備部隊が動き始めてると言っただろ。ムノも奴らには気を付けろ」
「そういえば……JHWの警備部隊って?」
「……JHWの大事な取引の警備を名目に作られた部隊なんだが、実際には他社への脅し、最悪の場合には力尽くでも従わせる為の部隊だ。下手なヤクザよりもタチが悪いし、金でゴールド、シルバーランクの元DHを数人雇ってて戦闘能力も高い。気を抜いて後ろからやられんじゃねえぞ」
「うわ、そんな部隊なんですか……もっと早く言ってくれれば良かったのに」
「言っても何も変わらねえだろ。ま、遭遇したら全力で逃げとけ」
「そうします……」
——そこからまた二日。
相変わらずグンセさんの表情が暗い。
「……そろそろ限界だな。さてどうするか。栗生の奴にJHWデモを誘導させるか?いや、それよりも……」
グンセさんがブツブツと言い始めた。これは本当にまずい状況なのかもしれない。どこからかマジックやレア武器が調達さえ出来れば——。
カランカラン
突然グンセさんの店の扉に付いているベルの音が響く。
目を向けると、そこには大柄で赤いスーツを着た金髪の外人女性。
グンセさんはその女性に目を向けると、顔をしかめる。
「テメェは……」
「あら、レディに向かってテメェは無いんじゃない?」
女性はグンセさんの表情を見てフッと笑う。
「……何しに来やがったレーガン」
対するグンセさんは女性を睨みつける。
「昔の友人が困ってるって思って、来てあげたんじゃない?——あら、そちらの坊やは?」
女性は僕の方を向き声を掛けてくる。
「初めまして、ムノと言います。グンセさんにお世話になっている身なんですが……あなたは?」
「グンセがDHだった頃の友人のレーガンよ。うーん、というよりも元ライバルかしら?」
「……誰が友人だよ。ムノ。コイツはミスリルランクのDHで、狂拳レーガンと言われてる女だ。色々とぶっ飛んでるから気を付けろ」
「随分な言い方ね?また昔みたいにボッコボコにしてやろうかしら?グンセちゃん?」
「あ?やれるもんならやってみろよ?テメェのヘナチョコみてえなパンチなんて効くわけねえだろうが」
二人の眼の付け合いが始まり、バチバチと火花が散る錯覚が見えそうになる。
こ、この二人、仲悪いんだろうか?
「ま、まあ。二人とも落ち着いて下さい。レーガンさんは何故ここに?」
レーガンさんは先ほどの睨み付けていた表情を戻し、急に真面目な顔に切り替わる。
「そうそう。私が来たのは——商談よ」
商談?今このタイミングで?
レーガンさんは話を続ける。
「私は今すぐにでもマジック、レア等級の武器を合わせて200個を用意して渡す事ができるわ」
「え……」
僕は驚き、慌ててグンセさんの表情を伺うが、グンセさんの表情は優れない。
「その代わり、私が求めるのは——」
僕は次の言葉が来るのを固唾を呑んで見守る。
「あなた達が隠している、レアポップの魔物素材の収集方法よ」
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