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1.無能の少年と古い箱

ガチャ結果

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 ——伝説級の古い箱6個を開封。

古い箱(神級)を入手しました。 ×2

オリハルコンランス(LR)を入手しました。
身代わりの指輪(LR)を入手しました。
冥王ヘルの服(GR)を入手しました。
全能の神環(GR)を入手しました。


 そこで、グンセさんのポケットから、メールの通知音が二回鳴った。

「ん?何の音です?」

「……何となく検討はついてるが、ちょっと待て」

 グンセさんがスマートフォンのような端末を操作し、届いたメールの確認を行う。

「あれ?それってもしかして……DH端末ですか?」

「おう。そうだ」

「へー。グンセさんもDH登録してたんですね」

「若い頃にちょっとな。——もう10年も前の話だ。……そんな事よりも、これを見ろ」

 そう言って、グンセさんが端末の画面を見せて来たので、僕は端末を受け取ってその画面を眺める。

「……え、何ですかこれ」

 届いていたメールの内容は。


『「  」さんがゴッドレアの"冥王ヘルの服"を入手しました。』

『「  」さんがゴッドレアの"全能の神環"を入手しました。』


「これって、言うまでもなく…」

「さっきゴッドレアを引いたのが、全DHにメールで通知されてんだろうな……」

「——もしかして聖剣の時も?」

「ああ。その時はユニークレアに加えて名前が空白って事で、謎が謎を呼んでネットの掲示板が大荒れ。DHギルドの質問メールフォームは、数万のメールにパンクして、復旧に3日掛かったらしい。名前が空白なのはまあ、ムノが正規のDHじゃなくて、データベースに登録されて無いからだろうな」

「こんなメールが来て名前がバレるなら、正規のDHになったらガチャれないじゃ無いですか」

 僕はグンセさんへ、持っていたDH端末を返す。

「いや、そうでもねえだろ。要はガチャでゴッドレア以上を引かなければ良いんだ。上級の箱ならレジェンドレアは出るし、ゴッドレアは出ないから、晒し者も防げるぞ?それか、今の内にガチャを引きまくって、ゴッドレア以上で装備を固めるかだな」

「僕心配性だから、レジェンドレアじゃ不安だなぁ」

「……その不安なレジェンドレアでさえ、世界に100個もねぇ程の希少な性能なんだけどな。はあ…どこに行ったんだよ、希少価値」

 そう呟くと、また肩を落として椅子に座るグンセさん。
 相変わらずのお疲れモードだ。早く終わらせるために、残る神級の箱を開けてしまおう。


 七色に神々しく輝く箱を、僕は眺める。
 以前と違って、余裕がある今見ると——とても綺麗だ。

 僕は神級の箱に手を置いて、呟く。

「ああ、君の七色に輝く美しさは言葉では言い表せない。まるで、晴れ渡る空よりも澄んでいる青。あとは、えーと……」
 
「…新緑の木々の葉のような、生命力溢れる緑——とかどうだ?」

 僕に返すように、グンセさんは少し照れた様子で、頭を掻きながら呟く。
 …きゅ、急に何を言い出すんだこの人は?

「まあいいか。開けよう」

「始めたなら最後までやれよ…テメェにのった俺が、恥ずかしいじゃねぇか…」

 顔を真っ赤にして、手で顔を隠すグンセさんを横目に、僕は神級の古い箱の蓋を開ける。


神槌ミョルニル(GR)を入手しました。 


 ガツンッ!
 重量感のある何かが落ちた音と、人の背丈程有りそうな大槌が転がる。
 その衝撃で、地面のコンクリートが大きく欠けた。
 ——次。


世界終焉の書ワールドエンド(UR)を入手しました。


 先程の大槌とは違う、ファサッという軽い音と、飲み込まれそうな程に黒い表紙の本。
 
 一目見ただけで分かった。
 言葉には言い表せないが——この本は絶対にヤバい。

 
「おいおい……」

「何か凄い物騒な本が。ワールドエンドって名前が、完全にアウトじゃないですか…。グンセさん鑑定出来ます?」

「——なぁ?正直鑑定したくねぇんだが。見なかった事にして、燃やさねぇか?」

「いや、これ絶対に燃えないやつですって。それか、燃やしたら死ぬ位呪われる奴ですって」

「……はあ。仕方ねぇ。"鑑定"」


 
ーーーーーー

□世界終焉の書( I )□

等級:ユニークレア(成長型)

持ち主と共に成長する書。持ち主の魔力を大きく上げる効果を持っている。この書が世界の終焉を導くかどうかは所有者次第。
所有者:ムノ

ATK +5     MATK  +100

装備条件 / なし

装備特性 /
闇属性、魔力向上lv2、魔力消費量低減(小)、再使用時間短縮(小)

ーーーーーー

 予想以上にヤバい。

「「……」」

「……グンセさん。いつもお世話になってるし、お礼です。これどうぞ」

「いやいや。流石にユニークレアなんて貰えねぇよ。それに、所有者ムノになってんだろ」

 二人でカウンター上に置いた本を、グイグイと押し付け合う。

「僕、箸より重いもの持てないんで」

「なら聖剣もダメじゃねぇか。はぁ……冗談はやめだ。真面目な話をするが、持ち主の影響を受けるんだったら、尚更テメェが持ってねぇとダメだろ。テメェの高い運とやらで何とかしやがれ」

「いつになく投げやりじゃないですか……まぁ取り敢えず、マジックバックに入れときます。誰か、コレを盗みでもしないかな」


 そう愚痴りながら、マジックバックの中へと終焉の書をしまう。


「……絶対に、どこか忘れてくるんじゃねぇぞ」

「フリですか?」

「もし万が一だが、それで世界滅んでも良いならフリだと思え」

「……今は嫌なんで、マジックバックにチェーン付けときます」
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