上 下
10 / 66
1.無能の少年と古い箱

ガチャ日和

しおりを挟む
 今、僕の目の前にあるカウンターに並べられているのは、最下級3個、下級5個、中級2個の計10個の古い箱。

 ——僕は、今からガチャを引こうと思う。


ーーーーーー


 ——遡る事一週間前。

「ああ、そうだ。スライムゼリーの件でかなりの金が稼げたから、ムノにもボーナスをやろうと思う」

「ボーナスですか?」

 僕は既に借金が無くなっていて、適度なダンジョン生活を心掛けていた。そんな、早寝早起きダンジョン生活を送っていた僕に、グンセさんがボーナスを支給してくれるそうだ。

「おう。何か欲しいものがありゃ買ってやるよ。けど、流石に高すぎるもんは無理だぜ?」

「欲しいものですか。うーん…」

 僕が顎に手を当てて考えていると、妙案が思い付く。

「どうだ?」

「それなら……ガチャがしたいです」

「は?ガチャ?古い箱って事か?」

「そうです。あ、等級は最下級でも何でも良いんで、10個位買って下さい。それがボーナスで良いですか?」

「それなら構わねえが……最下級なんてゴミしか出ねぇぞ?」

「それは分かってますよ。少し試したい事が有るんです——」


ーーーーーー


 ——そうしてボーナスとして支給された物が、この10個の古い箱だ。

 最下級の古い箱1個で、運良くユニークレアを引き当てた僕だが、果たしてそれは一回きりの豪運だったのか?
 それとも、素材のドロップ率のように、僕の運の高さが反映されて出たものなのか?
 ——それを、今から検証しようと思う。


「なあ。この一週間ずっと考えてたんだが、一つ聞かせてくれ」

 古い箱を前に腕組みをしている僕に、グンセさんが尋ねてくる。

「何ですか?」

「もしかして、お前のユニークレアの聖剣ってよ……」

「ああ、古い箱から出ましたよ」

「やっぱそうか。た、確かに古い箱に伝説級が有るって噂は聞いたことが有る。ん?でもよ…金がねぇテメェが、どうやって伝説級の古い箱なんて手に入れたんだ?」

「最下級から出ました」

「はっ?ちゃんと聞こえなかった。もう一度言ってくれ」

「最下級の古い箱から出たんですよ」

「……マジかよ」

「もう一つ言うと、聖剣が出たのは神級の箱です。それも最下級から始まって、どんどんレア等級が上がっていったんですよ」

「はぁ!?神級だあ!?そんなもんが存在する事自体初めて聞いたぞ!?いくら何でも常識を覆しすぎだろ!!」

「いや、僕も神級なんて知らなかったですって……」

「確かに箱から一つ上の等級が出るってのは、既に検証されて実績が有る!けどな!」

「けど?」

「上の等級の箱が出る確率は、1%辺りだろうって話だ。で、それを最下級から神級まで、何回も引き続けたんだろ?そんなの、確率を計算するだけで嫌になるわ!」

 最下級、下級、中級、上級、伝説級、神級で6段階か。
 ——確かに、計算するのも面倒臭い程の確率だ。

「まあ、単にまぐれだったのかも」

 僕は笑いながらグンセさんに返す。

「まぐれでそれだけ引けるわけがねぇだろうがああああ!!!ピンポイントにここへ隕石が落ちる方がまだ確率たけぇよ!!絶対にテメェの運のせいだよ!!」

 グンセさんは息継ぎもなしに叫んだせいで、息が荒くなっている。

「ま、まあグンセさん落ち着いて。今回はそれを検証しようって事で、箱を準備してもらったんですよ」

「はぁ…はぁ…テメェが現れてから驚きっぱなしだ。次の健康診断、絶対に血圧引っかかるぜ……」

「お、お大事に……」

「…テメェのせいだよ」

 グンセさんのドスの効いた声に、僕はちょっとビビってしまう。
 ここは話題を変えよう!

「よ、よーし!僕、古い箱開けちゃおっかなーっ!!」

 と言うことで、最下級から順に箱を開けていくことに。


古い箱(下級)を入手しました。 ×3


チラッ

 グンセさんの様子を見ると、無表情で…何も言わずに腕組みをしている。
 次は8個の下級。


古い箱(中級)を入手しました。 ×8


 これで中級が10個。
 うん。グンセさんの眉がピクピクしているのが分かる。

 ——次だ。
 

古い箱(上級)を入手しました。 ×10


 グンセさんが肩を落とし、椅子に崩れるように座って、ため息をつき始めた。

 ——つ、次!


古い箱(伝説級)を入手しました。 ×6
ミスリルソード(SR)を入手しました。
ミスリルヘルム(SR)を入手しました。
奈落のマント(LR)を入手しました。
隠蔽の指輪(LR)を入手しました。


 あ、装備が出た!

「…!ほらグンセさん!ちゃんとアイテムが出ましたよ!」

「馬鹿野郎!!上級10個の時点で、既に異常過ぎだろうが!!それに上級でレジェンドレア装備引いてるのも、普通じゃあり得ねえ位の豪運だっての!!そもそも何で全部装備なんだよ!!テメェのガチャだけ他の奴と前提がちげぇよ!!」

「ええ……」

「はぁ。…もう何が出ようが驚かねぇから、さっさと開けちまえ…」


 ——残るは伝説級が6個。結果は果たして?
しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!


処理中です...