上 下
6 / 66
1.無能の少年と古い箱

ビジネスパートナー

しおりを挟む
「——取り敢えず、運が良いっていうのは置いといて、だ」

「はい」

「さっきも言ったが、俺はテメェに何かするつもりはねえ。それだけは信用しろ」

「はい」

「それを前提に、だ」

「はい」

「俺は、テメェに先行投資をしようと思う」

「……はい?」

「いいか、良く聞け。テメェはその剣がある限り、並のDHよりの上に行く可能性が高いんだよ。もしかしたらミスリルランク——いや、今の最高ランクのオリハルコンランクにさえ届くかもしれねえ」

 ——DHのランクは、下からカッパー、ブロンズ、アイアン、スチール、シルバー、ゴールド、ミスリル——そして現在の最高ランクである、オリハルコンランクに分けられている。
 DHになると必ずカッパーランクから始まり、ランクを上げるためには、素材の持ち込みやDHギルドの依頼を達成していく事になる。
 達成の評価が判断基準を超えたところで、昇級試験を受けることができて、それに通ればランクアップとなる。
 
 そして、最高ランクであるオリハルコンランクは——現在世界に二人しか存在していない。その二人は、ソロでダンジョンを完全攻略出来るほどの強さを持っていると噂されている。

「無能の僕がオリハルコンランクなんてあり得ないですよ……それに、僕はDHにさえなれていないんですよ?」

「あのなぁ……DHなんて、18歳になりゃ孤児だろうが元犯罪者だろうが他のDHが推薦するだけで簡単になれるんだよ。……というか普通はちゃんとした身分がありゃ、書類だけで簡単に登録出来るもんだ」

「え、推薦でもなれるんですか」

「おう。だからこそ、最初にDH免許の偽造を頼んできた時に冷やかしだと思ったんだよ。ま、流石に無能とは思わなかったけどな」

 はぁ……それじゃ、DH育成学校を退学になって絶望してた僕が、まるでバカみたいじゃないか……。
 突きつけられた事実に、自然とため息が出る。

 ん?あれ?でもそれじゃ——。

「それじゃ……偽造DH免許で三百万円ってぼったくってないですか?」

「ま、そうだな」

 厳つい男性は悪びれもせず笑う。

「……うわぁ。信用したく無くなってきた」

「ま、結果的には良かったじゃねぇか。違法とは言え、テメェは18になる前にダンジョンに入って稼げるし、俺なら鑑定や素材を捌く事だって出来る。それだけ付いて、三百万なんて安いもんだろ」

「そうだけど…何か解せぬ」

「俺なら、テメェのスタートを遥か先にする事が出来るぜ?俺と組めば、何だって用意してやらぁ」

「はぁ……少し納得いかないけど、分かりました。で、僕は何をすれば良いんです?」

「そうだな。テメェは、俺の言うものをダンジョンに行って取ってくるだけで良い。それを俺がうまく使って金を稼ぐ」

「まぁ、それだけなら」

「よし!交渉成立だ!これから頼むぜ?」

「分かりました。あ、それと」

「何だ?」

「そういえば、名前教えて下さい」

「——俺の名前はグンセだ」

「グンセさんですか、分かりました。ではこれからよろしくお願いします」

「おう。よろしく頼むぜ?ムノ」

 ——こうして、僕とグンセさんはビジネスパートナーとなった。


ーーーーーー

□聖剣エクスキャリバー( I )□

等級:ユニークレア(成長型)

持ち主と共に成長する聖剣。持ち主のステータスを上げる効果を持っている。所有者:ムノ

ATK +100 

装備条件 / なし

装備特性 / 
聖属性、全ステータス向上lv2、剣術補正(小)、光弾

ーーーーーー

 これがグンセさんにより鑑定された聖剣の性能。

 中級DHが良く使う、マジックレアの剣でATK+30程度で、それも筋力が20程度無いと使いこなせないそうだ。
 対する聖剣エクスキャリバーは、装備条件が無いのにも関わらずATK+100。同程度のATKを持つ武器は、レアの上位に相当する。

 おまけに『聖属性』というのは、聖職者が使うスキルのみの属性で、弱点が無くアンデットに対して絶対的な威力を発揮するそう。
 『光弾』も聖職者の初級スキルで、聖属性だそうだ。
 ——聖属性武器については、グンセさんは初めて聞いたそうだ。

 『剣術補正(小)』は剣術スキルを一段階上げるものだろう、とグンセさんは言っていた。そのため剣術スキルがなかった僕に、剣術(初級)が追加されてたのだろう。

 そして……一番おかしい性能をしているのが、『全ステータス向上LV2』。ステータス20というのは、駆け出しDHから抜け出すアイアンランクDHの、一番高いステータスと同等らしい。
 それが全ステータスにプラスされるという事は、僕もステータスだけならアイアンランク並になっているという事。

 ——最後にグンセさんが言っていたが、(成長型)とあるように、聖剣は更に強くなる可能性がある。
 そういった所も考慮して……オリハルコンランクの可能性なんて言ったそうだ。


 無能の僕がなれるとは思っていないが、そう言われると少し期待してしまう。
 
「——これから、よろしく頼むよ相棒」

 僕は聖剣に触れ、そう呟いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!

桜井正宗
ファンタジー
 辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。  そんな努力もついに報われる日が。  ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。  日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。  仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。 ※HOTランキング1位ありがとうございます! ※ファンタジー7位ありがとうございます!

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

勇者パーティー追放された解呪師、お迎えの死神少女とうっかりキスして最強の力に覚醒!? この力で10年前、僕のすべてを奪った犯人へ復讐します。

カズマ・ユキヒロ
ファンタジー
解呪師マモル・フジタニは追放された。 伝説の武器の封印を解いたあとで、勇者パーティーに裏切られて。 深い傷と毒で、死を待つばかりとなったマモル。 しかし。 お迎えにきた死神少女との『うっかりキス』が、マモルを変えた。 伝説の武器の封印を解いたとき、体内に取り込んでいた『いにしえの勇者パーティー』の力。 その無敵の力が異種族異性とのキスで覚醒、最強となったのだ。 一方で。 愚かな勇者たちは、魔王に呪いを受けてしまう。 死へのタイムリミットまでは、あと72時間。 マモル追放をなげいても、もう遅かった。 マモルは、手にした最強の『力』を使い。 人助けや、死神助けをしながら。 10年前、己のすべてを奪った犯人への復讐を目指す。 これは、過去の復讐に燃える男が。 死神少女とともに、失ったはずの幼なじみや妹を取り戻しながら。 結果的に世界を救ってしまう、そんな物語。

辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
 ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。  ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。  ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。  ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。  なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。  もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。  もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。  モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。  なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。  顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。  辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。 他のサイトにも掲載 なろう日間1位 カクヨムブクマ7000  

俺だけステータスが見える件~ゴミスキル【開く】持ちの俺はダンジョンに捨てられたが、【開く】はステータスオープンできるチートスキルでした~

平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人はクラスメイトたちと異世界へ召喚されてしまう。 異世界より召喚された者は神からスキルを授かるが、直人のスキルは『物を開け閉めする』だけのゴミスキルだと判明し、ダンジョンに廃棄されることになった。 途方にくれる直人は偶然、このゴミスキルの真の力に気づく。それは自分や他者のステータスを数値化して表示できるというものだった。 しかもそれだけでなくステータスを再分配することで無限に強くなることが可能で、更にはスキルまで再分配できる能力だと判明する。 その力を使い、ダンジョンから脱出した直人は、自分をバカにした連中を徹底的に蹂躙していくのであった。

二周目だけどディストピアはやっぱり予測不能…って怪物ルート!?マジですか…。

ヤマタカコク
ファンタジー
二周目チートではありません。モンスター転生でもありません。無双でモテてバズってお金稼いで順風満帆にはなりません。  前世の後悔を繰り返さないためなら……悪戦苦闘?それで普通。死闘?常在でしょ。予測不能?全部踏み越える。薙ぎ倒す。吹き飛ばす。  二周目知識でも禁断とされるモンスター食だって無茶苦茶トレーニングだって絶体絶命ソロ攻略だって辞さない!死んでも、怪物になってでもやりとげる。  スキル、ステータス、内政、クラフト、てんこ盛り。それでやっとが実際のディストピア。 ようこそ。

リフォーム分譲ダンジョン~庭にダンジョンができたので、スキルを使い改装して、分譲販売することにした。あらぬ罪を着せてた奴らにざまぁしてやる~

喰寝丸太
ファンタジー
俺はソフトウェア開発会社の社員だった。 外注費を架空計上して横領した罪に問われ会社を追われた。 不幸は続く。 仲の良かった伯父さんが亡くなった。 遺産が転がり込むかと思われたら、貰った家の庭にダンジョンができて不良物件に。 この世界は10年前からダンジョンに悩まされていた。 ダンジョンができるのは良く聞く話。 ダンジョンは放っておくとスタンピードを起こし、大量のモンスターを吐き出す。 防ぐ手段は間引きすることだけ。 ダンジョンの所有者にはダンジョンを管理する義務が発生しますとのこと。 そして、スタンピードが起きた時の損害賠償は所有者である俺にくるらしい。 ダンジョンの権利は放棄できないようになっているらしい。 泣く泣く自腹で冒険者を雇い、討伐する事にした。 俺が持っているスキルのリフォームはダンジョンにも有効らしい。 俺はダンジョンをリフォーム、分譲して売り出すことにした。

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

処理中です...