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1.無能の少年と古い箱
スライムゼリー
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——僕はスライム狩りを終え、厳つい男性の店へと戻って来ていた。
「こんにちわ」
流石に三度目となると慣れてきて、特に緊張もせずに厳つい男性へと挨拶をする。
「……早かったな。初めてのダンジョンで、疲れて帰ってきたか?」
「あ、いえ。リュックが一杯になったので、一度戻って来ました。買い取ってもらったらもう一度行ってきます」
「……は?」
背中に担いでいた何かでパンパンになった、小さめのリュックをカウンターへと置くと……その重さから、木製のカウンターが軋む。
「と言う訳で、コレ買取お願いします」
「おい。この中身はなんだ?まさか——」
「全部、スライムが落とした素材です」
僕はリュックの蓋を開けて、厳つい男性に中身を見せる。
「な、何だこりゃあああ!!!」
厳つい男性が前のめりになり、叫びながらリュックの中を確認する。
「え…もしかして、コレって素材じゃ無いんですか」
「そうじゃねぇ!!コレはスライムの落とすスライムゼリーで間違い無え!そうじゃなくて、俺が言いてぇのはこの量だよ!!」
「えーと…途中までしか数えてませんが……多分100個位だと思います」
「100個だと!?テメェ一体何匹のスライムを狩ったんだよ!!」
「え、これって確実に落とすんじゃ……」
「馬鹿言え!スライムゼリーのドロップ率は良くて30%程度だ!!それが二時間程度の時間でそんなに倒せるわけがねぇだろうが!!」
「いや…剣で一発だったので、割と苦もなくサクサク倒せましたよ?」
「レベル1の駆け出しが、剣でスライムを一発だと!?そんなの有り得るわけがねぇだろ!!」
僕はありのままを言ってるだけなのに、厳つい男性はそれを全て否定してくる。
駆け出しとは言っても、僕には能力値の上乗せが有るから……一発で倒せてもおかしくは無いんじゃないだろうか?
「はぁ…良く聞け。さっきも言ったように、スライムゼリーのドロップ率は良くて30%だ。——それと、スライムには武器による物理耐性が有って、筋力がいくら高くても一発では倒せねぇんだよ。もし剣で一発で倒そうとするなら、レア武器の属性武器でも持ってねぇ限り無理だ」
「え……」
「だが——テメェは嘘を言って無い。……と言うことはだ。テメェはスライムを一発で倒す手段を持っていて、おまけに何故かは分からないがスライムゼリーが確定でドロップした」
「……」
——これはまずい。ドロップ率については分からないけど、属性武器と聞いて思い当たる節が有る。僕の持っている、この剣はユニークレアで聖剣だ。
もしかしたら、聖属性などの属性がついててもおかしくは無い。
「……正直に言え。テメェは何を隠してやがる」
「い、いや!何も隠して無いです!本当にこの剣で倒しただけです!」
「……隠して無いってのは嘘だな。俺のスキルに反応があったぜ?」
(しまった——!!)
僕の頬を冷や汗が伝う。
「おい。その剣を鑑定させろ」
「そ、それは——!!」
更に良くない方向になってしまった!もしこの剣を鑑定されたら、これがユニークレアという事がバレてしまう。
——な、何かこの状況を逃れる術は……っ!そうだ!
「すいません。実は光弾で倒し——」
「——それは嘘だ。言っただろう、俺に嘘は通用しねぇ」
(こ、こうなったら逃げるしか無い!ヤの付く人たちに追われても、ユニークレアがバレて殺されるよりはマシだ!)
「おっと。逃げても無駄だぜ?この周囲には、常に俺の組の仲間が蜘蛛の巣のように網を張ってる。……諦めて隠してる事を話せ。俺は悪いようにはしねえ」
「くっ……」
頭をフル回転させても、良い打開策は思いつかない。ならば、この厳つい男性を信用して……正直に話すしか無いのか。
「……約束して下さい。理由を聞いても、僕を殺したりはしないと」
「んな事はしねえよ。俺は気になるだけだ。約束してやる——俺は約束を守る限り、テメェに危害を与えたりはしない。男に二言はねぇ」
……僕には嘘を見破るスキルなんてものは無いが、虐げられてきた人生の中で、人を見る目だけは有るつもりだ。
——その人が、僕に危害を与える人間か、危害を与えない人間か。
そんな僕の直感が言っている。この人は、危害を与えない人間だと。
いいように利用されるかもしれないが、それでも命を奪われるような事は無いはずだ。それなら——。
「分かりました。あなたを信用します」
僕は、手に持った錆びた剣を…厳つい男性に差し出す。
「……"鑑定"」
鑑定を行った、厳つい男性の眉がピクリと動く。
僕には……その様子を伺う事しかできなかった。
「な…」
(な?)
「なんだこりゃああああああ!!!おいおいユニークレアってなんだよ!!おまけに聖剣って!!ってかおい巷を騒がせてるユニークレアを入手した空白ってテメェだったのかよ!!いやそれよりもなんだよこの武器!!ステータスアップに剣術補正に光弾のおまけ付き!!それに聖属性武器ダァ!?こんなチート武器見たことも聞いた事もねぇぞ!!!」
「あ、あの…声が」
「ハァ…ハァ…。す、すまねぇ取り乱した……。だが、この武器ならテメェの言ってる事が納得できた。でも、ドロップ率についてはどう説明する?この剣は確かにチート武器だが、ドロップ率アップなんてもんはついてねぇぞ?」
「そ、それについては分かりません。でも……」
「でも?」
「考えられるとしたらなんですけど…」
「考えられるとしたら?」
「僕——運が、とても良いのかもしれません」
「……は?運が良い……?」
僕の言った言葉に——厳つい男性は、気の抜けた声を出したのだった。
「こんにちわ」
流石に三度目となると慣れてきて、特に緊張もせずに厳つい男性へと挨拶をする。
「……早かったな。初めてのダンジョンで、疲れて帰ってきたか?」
「あ、いえ。リュックが一杯になったので、一度戻って来ました。買い取ってもらったらもう一度行ってきます」
「……は?」
背中に担いでいた何かでパンパンになった、小さめのリュックをカウンターへと置くと……その重さから、木製のカウンターが軋む。
「と言う訳で、コレ買取お願いします」
「おい。この中身はなんだ?まさか——」
「全部、スライムが落とした素材です」
僕はリュックの蓋を開けて、厳つい男性に中身を見せる。
「な、何だこりゃあああ!!!」
厳つい男性が前のめりになり、叫びながらリュックの中を確認する。
「え…もしかして、コレって素材じゃ無いんですか」
「そうじゃねぇ!!コレはスライムの落とすスライムゼリーで間違い無え!そうじゃなくて、俺が言いてぇのはこの量だよ!!」
「えーと…途中までしか数えてませんが……多分100個位だと思います」
「100個だと!?テメェ一体何匹のスライムを狩ったんだよ!!」
「え、これって確実に落とすんじゃ……」
「馬鹿言え!スライムゼリーのドロップ率は良くて30%程度だ!!それが二時間程度の時間でそんなに倒せるわけがねぇだろうが!!」
「いや…剣で一発だったので、割と苦もなくサクサク倒せましたよ?」
「レベル1の駆け出しが、剣でスライムを一発だと!?そんなの有り得るわけがねぇだろ!!」
僕はありのままを言ってるだけなのに、厳つい男性はそれを全て否定してくる。
駆け出しとは言っても、僕には能力値の上乗せが有るから……一発で倒せてもおかしくは無いんじゃないだろうか?
「はぁ…良く聞け。さっきも言ったように、スライムゼリーのドロップ率は良くて30%だ。——それと、スライムには武器による物理耐性が有って、筋力がいくら高くても一発では倒せねぇんだよ。もし剣で一発で倒そうとするなら、レア武器の属性武器でも持ってねぇ限り無理だ」
「え……」
「だが——テメェは嘘を言って無い。……と言うことはだ。テメェはスライムを一発で倒す手段を持っていて、おまけに何故かは分からないがスライムゼリーが確定でドロップした」
「……」
——これはまずい。ドロップ率については分からないけど、属性武器と聞いて思い当たる節が有る。僕の持っている、この剣はユニークレアで聖剣だ。
もしかしたら、聖属性などの属性がついててもおかしくは無い。
「……正直に言え。テメェは何を隠してやがる」
「い、いや!何も隠して無いです!本当にこの剣で倒しただけです!」
「……隠して無いってのは嘘だな。俺のスキルに反応があったぜ?」
(しまった——!!)
僕の頬を冷や汗が伝う。
「おい。その剣を鑑定させろ」
「そ、それは——!!」
更に良くない方向になってしまった!もしこの剣を鑑定されたら、これがユニークレアという事がバレてしまう。
——な、何かこの状況を逃れる術は……っ!そうだ!
「すいません。実は光弾で倒し——」
「——それは嘘だ。言っただろう、俺に嘘は通用しねぇ」
(こ、こうなったら逃げるしか無い!ヤの付く人たちに追われても、ユニークレアがバレて殺されるよりはマシだ!)
「おっと。逃げても無駄だぜ?この周囲には、常に俺の組の仲間が蜘蛛の巣のように網を張ってる。……諦めて隠してる事を話せ。俺は悪いようにはしねえ」
「くっ……」
頭をフル回転させても、良い打開策は思いつかない。ならば、この厳つい男性を信用して……正直に話すしか無いのか。
「……約束して下さい。理由を聞いても、僕を殺したりはしないと」
「んな事はしねえよ。俺は気になるだけだ。約束してやる——俺は約束を守る限り、テメェに危害を与えたりはしない。男に二言はねぇ」
……僕には嘘を見破るスキルなんてものは無いが、虐げられてきた人生の中で、人を見る目だけは有るつもりだ。
——その人が、僕に危害を与える人間か、危害を与えない人間か。
そんな僕の直感が言っている。この人は、危害を与えない人間だと。
いいように利用されるかもしれないが、それでも命を奪われるような事は無いはずだ。それなら——。
「分かりました。あなたを信用します」
僕は、手に持った錆びた剣を…厳つい男性に差し出す。
「……"鑑定"」
鑑定を行った、厳つい男性の眉がピクリと動く。
僕には……その様子を伺う事しかできなかった。
「な…」
(な?)
「なんだこりゃああああああ!!!おいおいユニークレアってなんだよ!!おまけに聖剣って!!ってかおい巷を騒がせてるユニークレアを入手した空白ってテメェだったのかよ!!いやそれよりもなんだよこの武器!!ステータスアップに剣術補正に光弾のおまけ付き!!それに聖属性武器ダァ!?こんなチート武器見たことも聞いた事もねぇぞ!!!」
「あ、あの…声が」
「ハァ…ハァ…。す、すまねぇ取り乱した……。だが、この武器ならテメェの言ってる事が納得できた。でも、ドロップ率についてはどう説明する?この剣は確かにチート武器だが、ドロップ率アップなんてもんはついてねぇぞ?」
「そ、それについては分かりません。でも……」
「でも?」
「考えられるとしたらなんですけど…」
「考えられるとしたら?」
「僕——運が、とても良いのかもしれません」
「……は?運が良い……?」
僕の言った言葉に——厳つい男性は、気の抜けた声を出したのだった。
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