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1.無能の少年と古い箱
無能の少年と古い箱
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「ムノ君、君は退学だ」
——僕はムノ 16歳。
苗字も無いような最底辺の身分の孤児で、頭も良くなければ、体格にも恵まれておらず、おまけに地味で見た目も褒められたものではない。
それでも……諦めずにダンジョンハンター(DH)を目指して努力して来た。けれど、それも今この瞬間に終わってしまった。
「そんな…ッ!教育学校に強制退学は無いって話じゃ!!」
DHとして活動するには、教育学校を卒業する事で貰えるDH免許が無ければならない。本来、一般家庭なら書類申請だけで通るような免許なのだが、僕のような孤児が免許を入手するには教育学校を卒業するしか無い。
「君ねぇ……DH教育学校は先輩の寄付と、DHギルドの支援で成り立ってるんだよ。常に予算を切り詰めて、ギリギリで成り立っているんだ。そこには、君のような無能に使える無駄なお金は無いんだよ?」
僕に退学を言い渡しているのは、DH教育学校の校長だ。本来ならばこの学校に退学はなく、誰にでも卒業出来る筈だった。
「——けど!!」
「君みたいな孤児がDHに縋るのはわかるよ?でもさー、ムノ君のような無能がDHになってどうするの?無能じゃ最弱のスライム1匹も倒せなくて死ぬのがオチだよ?どうせすぐ死ぬような奴に、お金掛けていられると思う?ねえ?」
「……」
本来、人間なら誰にでも何かしらの才能が有り、それは鑑定を受ける事で発現する。その才能は魔物と戦うのに向いた剣術だったり、或いは商売人に向いた商才や、料理の才能等様々だ。
——そして僕には、その誰にでも有るはずの才能が何一つ無い。
僕のような才能無しは、"無能"と呼ばれて侮蔑の対象だ。そしてこの無能は数十万人に一人しか生まれず、また無能は例に漏れず親に捨てられる。
……恐らく僕もそんな風に捨てられて、孤児院に預けられたのだろう。
そんな無能の僕の最後の希望がDHだった。才能が無くても知識や道具を駆使すれば、質素に生きる程度のお金は稼げるかもしれない。そんな、淡い最後の希望。
「……とにかく、君の退学は既に、DH教育機関に受理されている。それは君が何と言おうと覆ることはないぞ。さあ、分かったなら今すぐ出て行け!」
「で、でも!!僕にはこれしか…ッ!!」
「うるさい黙れ!これでもくれてやる!今すぐ出て行け無能が!!」
校長先生はそういうと、僕の足元に小さな古ぼけた箱を投げ捨てた。
——僕は何も言わずにそれを拾い、校長室を後にした。
------------
「はぁ……」
川沿いにあるベンチに座り、ため息をつく。
もう、何もする気が起きない。僕の人生って何だったのだろう。
物心ついた時から無能と蔑まれ、同じ孤児院の子供にも虐められた。小学校、中学校に行ってもそれは変わらないどころか、悪化していく一方で暴力にまで発展した。
それでも諦めずに努力して、やっとの思いで教育学校にはいったのに……入学して一年も経たずにこのザマだ。
「"ステータス"」
僕の前に現れる半透明の板。これは自分のステータスを確認できるスキルだ。このステータススキルには才能が必要なく、人間なら当然出来るもの。
——僕のステータスはこうだ。
------
ムノ Lv.1
才能/なし
筋力 1
体力 1
敏捷 1
知力 1
スキル/なし
------
中学時代の三年間、筋トレも剣術も頑張ったが、何一つステータスには反映されない。
おまけに普通の人なら一ヶ月も剣の訓練をすれば剣術スキルの初級位は芽生えるのだが、僕には剣術スキルのけの字もない。これが、才能無しという事なんだろう。
(もう無理だ……どうせ、飢えて死んでしまう未来しかないのなら…もう、いっその事……)
——悔いが残るとしたら、孤児院で良くしてくれたマキナさんの事だろうか。
僕の暮らしていた孤児院で働いていた彼女は、無能の僕にも優しくしてくれた唯一の人だ。孤児院でさえ孤立し虐められていた僕も、彼女が居たから今まで生きてこれた。
そこで、ふと手に持っていた物があることに気づく。
校長先生が投げて来た、手に収まる程の古ぼけた小さな箱だ。
「古箱か」
——聞いた事はあるが見たのは初めてだ。古い箱というのはダンジョンで稀に入手出来る箱で、その中からはランダムで様々なアイテムが出てくるらしい。
DHの間では通称"ガチャ"と呼ばれていて、主に運試しで使われるそうだ。
「とは言っても……"鑑定"」
これは鑑定スキル。地球にダンジョンが発生してから全ての人が使えるようになったスキルだ。才能がある人が鑑定すれば、性能から効果まで全て見通せるらしい。
ただし、僕のような才能無しが鑑定をしても、名前や最低限の情報しか分からない。
□古い箱(最下級)□
開けると、中からランダムでアイテムが入手出来る。
「やっぱり最下級か」
古箱には等級が有り、その最低ランクが最下級だ。その三つ上の等級である上級であれば百万円以上で取引されているそうだが、最下級なら良くて数千円というところだろうか。
そして、最下級の古い箱から出る物は、全てが使い道の無いゴミだそうだ。
「どうせ、ゴミなんだろ……」
数千円で売っても、良くて数週間食いつなげるだけだ。そんな状態で生きても仕方がない。
——僕は古ぼけた、小さな箱の蓋を開けた。
古い箱(下級)を入手しました。
「……はっ?」
頭の中に、男とも女とも分からない、無機質な声が聞こえた。
そして、僕の手の中には一回り大きくなった古ぼけた箱。最下級は擦り切れた紙のような素材だったが新たな箱は綺麗な布のような素材になっている。
下級なら数万円はするだろうか?いやでも僕はもう、生きる事を諦めたんだ——僕はまた、古い箱を開けた。
古い箱(中級)を入手しました。
「……」
僕は夢でも見ているのだろうか?そう思い頬をつねってみるが、とても痛い。これは夢では無い。
そして、僕の手の中には木で出来た箱。
ちゅ、中級なら、二、三十万円はするんじゃ!?それなら切り詰めれば数ヶ月は暮らせる筈だ!け、けどその先はどうする!?……やっぱりダメだ。
——僕は、古い箱を開けた。
古い箱(上級)を入手しました。
「えええええええ!?」
あまりの信じられない出来事に叫んでしまう。その後僕は慌てて周囲を見渡すが、幸いな事に見える範囲には誰も居ないようだ。
僕は金属で出来た箱を抱えて、人目につかないよう死角になった橋の真下へと移動する。
と、どうする!?百万円だぞ!?
僕は生涯でこれほど高価なものを持ったことがない。その事に、今も手足は震えてるし、興奮してるせいで頭が回らない。心臓の鼓動が自分で分かるくらいに大きく脈打っている。更には身体中の穴という穴から汗が吹き出してくる。
どうしたらいいんだ!?DHギルドに持ち込めば買い取ってくれるのか!?でも、免許が無いのに取引が出来るのか!?
つるっ
「あっ……」
金属の箱を抱えていた手が自身の手汗により滑る。僕の手を離れた古い箱は、その自重で真下へと落ちてそのまま地面と衝突する。
——そして、衝撃により開かれる蓋。
「うわあああああっ!!!!」
僕がその状況に気づいて叫んだ時には、全て手遅れだった。
だが——。
古い箱(伝説級)を入手しました。
(……ホワイ?)
僕の足元には、水晶のような物で出来た小さな箱。
「えっ?伝説級って何?まさか上級の上?嘘でしょ?」
——鑑定をしてみる。
□古い箱(伝説級)□ 開けると、中からランダムでレジェンドレア以上のアイテムが入手出来る。
レジェンドレアは聞いたことが有る。世界でも数十人しか持っていないようなレア等級だ。
——レア等級は、ノーマル、マジック、レア、スーパーレア、レジェンドの筈だ。
(最高のレア等級である、レジェンドレア確定?もしかしてこれ……数千万円はするんじゃ無いか!?数千万円有れば、質素な暮らしをすれば生きていける!後はどぶさらいでも何でもすればいい!決めた!売ろう!それで生きて行こう!ありがとう神様!!)
そうと決めたら誰かに見つかる前にDHギルドへ急ごう——と古い箱を持ち上げようとする、が。
「何これ!?重たくて持てないんだけど!?」
その古い箱はとても人が持てる重さでは無く、僕の力ではずらすことさえ出来ない程だった。
(くっ……マジックバックでも有れば収納出来るんだろうけど、そんな物借りれる知り合いも居ないし、何より古い箱を放置して誰かに取られたら不味い!!)
こうなったら開けて、何か軽い物が出るのを祈るしか無い!
安い物が出る可能性もあるけどそれは仕方ない!
(神様!出来れば良いものをお願いします!)
あれだけ重かった古い箱も、蓋は簡単に開けることができた。
古い箱(神級)を入手しました。
「……?………え?」
足元に現れた箱は七色に輝き、神々しい光を放っていた。
——僕は色々と限界突破し、逆に頭が冷静になった。
「"鑑定"」
□古い箱(神級)□ 開けると、中からランダムでゴッドレア以上のアイテムが入手出来る。
「ふーん。ゴッドレアね。伝説の上となれば神か、それもそうだ」
持ち上げようと試みるが、やはり古い箱は重くこのまま持ち込むのは無理そうだ。それならやはり開けるしか無いか。
僕は顎に手を当てながら、考える仕草をする。
(ふむ。それにしても……)
「いや!!何だよゴッドレアって!?神級って何だよ!?聞いたことも無いんですけど!? レジェンドレアが最高じゃ無いのかよ!誰か偉い人教えてええぇ!?」
「はぁ……はぁ……」
大声で叫んで、少しスッキリした。
でも、冷静になってもこの箱は開けるしか無い。もしかしたら、僕は世界初のゴッドレア所持者になるかもしれない。
そこで、僕はふと思う。
——もしかして、ゴッドレアの武器が出て、それを使えば僕はDHになれるだろうか?と。
いや、武器が良くても防御面でも、戦闘技術の面でも、僕は無能のままだ。最悪誰かに殺されて武器を奪われ、死ぬ未来しか想像できない。
(よし、何が出ても売る!)
——心の中でそう決めた僕は、七色に輝く箱の蓋を開けた。
ーーーーーー
私の小説を読んで頂きありがとうございます!
作者のモチベーションに繋がりますので、良ければお気に入り登録をお願いします。
——僕はムノ 16歳。
苗字も無いような最底辺の身分の孤児で、頭も良くなければ、体格にも恵まれておらず、おまけに地味で見た目も褒められたものではない。
それでも……諦めずにダンジョンハンター(DH)を目指して努力して来た。けれど、それも今この瞬間に終わってしまった。
「そんな…ッ!教育学校に強制退学は無いって話じゃ!!」
DHとして活動するには、教育学校を卒業する事で貰えるDH免許が無ければならない。本来、一般家庭なら書類申請だけで通るような免許なのだが、僕のような孤児が免許を入手するには教育学校を卒業するしか無い。
「君ねぇ……DH教育学校は先輩の寄付と、DHギルドの支援で成り立ってるんだよ。常に予算を切り詰めて、ギリギリで成り立っているんだ。そこには、君のような無能に使える無駄なお金は無いんだよ?」
僕に退学を言い渡しているのは、DH教育学校の校長だ。本来ならばこの学校に退学はなく、誰にでも卒業出来る筈だった。
「——けど!!」
「君みたいな孤児がDHに縋るのはわかるよ?でもさー、ムノ君のような無能がDHになってどうするの?無能じゃ最弱のスライム1匹も倒せなくて死ぬのがオチだよ?どうせすぐ死ぬような奴に、お金掛けていられると思う?ねえ?」
「……」
本来、人間なら誰にでも何かしらの才能が有り、それは鑑定を受ける事で発現する。その才能は魔物と戦うのに向いた剣術だったり、或いは商売人に向いた商才や、料理の才能等様々だ。
——そして僕には、その誰にでも有るはずの才能が何一つ無い。
僕のような才能無しは、"無能"と呼ばれて侮蔑の対象だ。そしてこの無能は数十万人に一人しか生まれず、また無能は例に漏れず親に捨てられる。
……恐らく僕もそんな風に捨てられて、孤児院に預けられたのだろう。
そんな無能の僕の最後の希望がDHだった。才能が無くても知識や道具を駆使すれば、質素に生きる程度のお金は稼げるかもしれない。そんな、淡い最後の希望。
「……とにかく、君の退学は既に、DH教育機関に受理されている。それは君が何と言おうと覆ることはないぞ。さあ、分かったなら今すぐ出て行け!」
「で、でも!!僕にはこれしか…ッ!!」
「うるさい黙れ!これでもくれてやる!今すぐ出て行け無能が!!」
校長先生はそういうと、僕の足元に小さな古ぼけた箱を投げ捨てた。
——僕は何も言わずにそれを拾い、校長室を後にした。
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「はぁ……」
川沿いにあるベンチに座り、ため息をつく。
もう、何もする気が起きない。僕の人生って何だったのだろう。
物心ついた時から無能と蔑まれ、同じ孤児院の子供にも虐められた。小学校、中学校に行ってもそれは変わらないどころか、悪化していく一方で暴力にまで発展した。
それでも諦めずに努力して、やっとの思いで教育学校にはいったのに……入学して一年も経たずにこのザマだ。
「"ステータス"」
僕の前に現れる半透明の板。これは自分のステータスを確認できるスキルだ。このステータススキルには才能が必要なく、人間なら当然出来るもの。
——僕のステータスはこうだ。
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ムノ Lv.1
才能/なし
筋力 1
体力 1
敏捷 1
知力 1
スキル/なし
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中学時代の三年間、筋トレも剣術も頑張ったが、何一つステータスには反映されない。
おまけに普通の人なら一ヶ月も剣の訓練をすれば剣術スキルの初級位は芽生えるのだが、僕には剣術スキルのけの字もない。これが、才能無しという事なんだろう。
(もう無理だ……どうせ、飢えて死んでしまう未来しかないのなら…もう、いっその事……)
——悔いが残るとしたら、孤児院で良くしてくれたマキナさんの事だろうか。
僕の暮らしていた孤児院で働いていた彼女は、無能の僕にも優しくしてくれた唯一の人だ。孤児院でさえ孤立し虐められていた僕も、彼女が居たから今まで生きてこれた。
そこで、ふと手に持っていた物があることに気づく。
校長先生が投げて来た、手に収まる程の古ぼけた小さな箱だ。
「古箱か」
——聞いた事はあるが見たのは初めてだ。古い箱というのはダンジョンで稀に入手出来る箱で、その中からはランダムで様々なアイテムが出てくるらしい。
DHの間では通称"ガチャ"と呼ばれていて、主に運試しで使われるそうだ。
「とは言っても……"鑑定"」
これは鑑定スキル。地球にダンジョンが発生してから全ての人が使えるようになったスキルだ。才能がある人が鑑定すれば、性能から効果まで全て見通せるらしい。
ただし、僕のような才能無しが鑑定をしても、名前や最低限の情報しか分からない。
□古い箱(最下級)□
開けると、中からランダムでアイテムが入手出来る。
「やっぱり最下級か」
古箱には等級が有り、その最低ランクが最下級だ。その三つ上の等級である上級であれば百万円以上で取引されているそうだが、最下級なら良くて数千円というところだろうか。
そして、最下級の古い箱から出る物は、全てが使い道の無いゴミだそうだ。
「どうせ、ゴミなんだろ……」
数千円で売っても、良くて数週間食いつなげるだけだ。そんな状態で生きても仕方がない。
——僕は古ぼけた、小さな箱の蓋を開けた。
古い箱(下級)を入手しました。
「……はっ?」
頭の中に、男とも女とも分からない、無機質な声が聞こえた。
そして、僕の手の中には一回り大きくなった古ぼけた箱。最下級は擦り切れた紙のような素材だったが新たな箱は綺麗な布のような素材になっている。
下級なら数万円はするだろうか?いやでも僕はもう、生きる事を諦めたんだ——僕はまた、古い箱を開けた。
古い箱(中級)を入手しました。
「……」
僕は夢でも見ているのだろうか?そう思い頬をつねってみるが、とても痛い。これは夢では無い。
そして、僕の手の中には木で出来た箱。
ちゅ、中級なら、二、三十万円はするんじゃ!?それなら切り詰めれば数ヶ月は暮らせる筈だ!け、けどその先はどうする!?……やっぱりダメだ。
——僕は、古い箱を開けた。
古い箱(上級)を入手しました。
「えええええええ!?」
あまりの信じられない出来事に叫んでしまう。その後僕は慌てて周囲を見渡すが、幸いな事に見える範囲には誰も居ないようだ。
僕は金属で出来た箱を抱えて、人目につかないよう死角になった橋の真下へと移動する。
と、どうする!?百万円だぞ!?
僕は生涯でこれほど高価なものを持ったことがない。その事に、今も手足は震えてるし、興奮してるせいで頭が回らない。心臓の鼓動が自分で分かるくらいに大きく脈打っている。更には身体中の穴という穴から汗が吹き出してくる。
どうしたらいいんだ!?DHギルドに持ち込めば買い取ってくれるのか!?でも、免許が無いのに取引が出来るのか!?
つるっ
「あっ……」
金属の箱を抱えていた手が自身の手汗により滑る。僕の手を離れた古い箱は、その自重で真下へと落ちてそのまま地面と衝突する。
——そして、衝撃により開かれる蓋。
「うわあああああっ!!!!」
僕がその状況に気づいて叫んだ時には、全て手遅れだった。
だが——。
古い箱(伝説級)を入手しました。
(……ホワイ?)
僕の足元には、水晶のような物で出来た小さな箱。
「えっ?伝説級って何?まさか上級の上?嘘でしょ?」
——鑑定をしてみる。
□古い箱(伝説級)□ 開けると、中からランダムでレジェンドレア以上のアイテムが入手出来る。
レジェンドレアは聞いたことが有る。世界でも数十人しか持っていないようなレア等級だ。
——レア等級は、ノーマル、マジック、レア、スーパーレア、レジェンドの筈だ。
(最高のレア等級である、レジェンドレア確定?もしかしてこれ……数千万円はするんじゃ無いか!?数千万円有れば、質素な暮らしをすれば生きていける!後はどぶさらいでも何でもすればいい!決めた!売ろう!それで生きて行こう!ありがとう神様!!)
そうと決めたら誰かに見つかる前にDHギルドへ急ごう——と古い箱を持ち上げようとする、が。
「何これ!?重たくて持てないんだけど!?」
その古い箱はとても人が持てる重さでは無く、僕の力ではずらすことさえ出来ない程だった。
(くっ……マジックバックでも有れば収納出来るんだろうけど、そんな物借りれる知り合いも居ないし、何より古い箱を放置して誰かに取られたら不味い!!)
こうなったら開けて、何か軽い物が出るのを祈るしか無い!
安い物が出る可能性もあるけどそれは仕方ない!
(神様!出来れば良いものをお願いします!)
あれだけ重かった古い箱も、蓋は簡単に開けることができた。
古い箱(神級)を入手しました。
「……?………え?」
足元に現れた箱は七色に輝き、神々しい光を放っていた。
——僕は色々と限界突破し、逆に頭が冷静になった。
「"鑑定"」
□古い箱(神級)□ 開けると、中からランダムでゴッドレア以上のアイテムが入手出来る。
「ふーん。ゴッドレアね。伝説の上となれば神か、それもそうだ」
持ち上げようと試みるが、やはり古い箱は重くこのまま持ち込むのは無理そうだ。それならやはり開けるしか無いか。
僕は顎に手を当てながら、考える仕草をする。
(ふむ。それにしても……)
「いや!!何だよゴッドレアって!?神級って何だよ!?聞いたことも無いんですけど!? レジェンドレアが最高じゃ無いのかよ!誰か偉い人教えてええぇ!?」
「はぁ……はぁ……」
大声で叫んで、少しスッキリした。
でも、冷静になってもこの箱は開けるしか無い。もしかしたら、僕は世界初のゴッドレア所持者になるかもしれない。
そこで、僕はふと思う。
——もしかして、ゴッドレアの武器が出て、それを使えば僕はDHになれるだろうか?と。
いや、武器が良くても防御面でも、戦闘技術の面でも、僕は無能のままだ。最悪誰かに殺されて武器を奪われ、死ぬ未来しか想像できない。
(よし、何が出ても売る!)
——心の中でそう決めた僕は、七色に輝く箱の蓋を開けた。
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