12 / 36
二人の聖女
5
しおりを挟む
「本来であれば、魔となりその身が業火に焼かれてしまうところだったのですよ、ミレイア様。
いかに女神様の加護を受けられたとはいえ、この王国の神殿ではーー
あなた様を受け入れることは出来かねます。
どうぞ、この神殿より早々に立ち退き下さい」
大神官と国王はその臣下たちに命じ、ミレイアを神殿より放逐させる。
「国王陛下、しかし、魔王討伐はいかがいたしますか?
ミレイア様もその命を受けていられますが?」
大神官が心配そうに問いかける。
「ふむ。
しかし、これほどまでに国内外の賓客が集まった中でもあの蛮行。
仕方あるまい、魔族の国境たるファイガ山脈の付近まで。
あれを囚人として送らせよう。
それで帝国にはーー」
「帝国には新たな巫女を。
大地母神の聖女をですか?
しかし、この二世紀の間、わが神殿の天敵として排除してきた過去が‥‥‥」
「ふうむ。
どうにもならんな。
しかし、あのアンダーソン侯爵家は六世紀ほどの格式のある家柄であろう?
大公国時代以前からの?」
「左様ですが、いまさら大地母神教を厚遇すればーー」
「大公国の再興を図る連中のかっこうのエサ。
神輿になるというわけか」
「左様でございます、陛下」
国王は思案する。
帝国との婚儀には適当な王族を当てれば良い。
あの第二王女はさっさと魔族にでも殺させればいい。
もし、魔王討伐をなせばそれこそ、正式な王族に迎えれる。
「では、あれでいけ」
「あれでございますか?」
「そうだ、だれだ。
この二世紀の間、大地母神の隠れ信徒を消してきた、あれだ」
「かしこまりました」
大神官はそう言うとその場を去り、国王は帝国の来賓に無作法なものをお見せした。
どうかご容赦を、そう言って場を和ませていた時だ。
例のエミリオ皇太子が国王に向かい口を開いた。
「陛下、あの大地母神の加護を受けた聖女はどなたさまですか?」
と。
国王はなにを興味をもったのだ、この若僧は?
そんな嫌に不気味な感触に襲われた。
隣にいた部下にあれは誰だ?
そう耳打ちする。
わざわざ国王が直々に答えることもないからだ。
「あれは、大公国時代以前よりの名家、アンダーソン侯爵家は第一令嬢シェリル様でございます」
そう、側近の一人がエミリオ皇太子に言う。
六世紀も歴史を持つ名家中の名家が、侍女をさせられるとは。
この王国はどうなっているのか。
その側近の地位にいるべきは、あのシェリル様の父上であるのが当たり前だろうに。
この王国が大地母神を信仰していた貴族や、王国が成立する以前の貴族にどのような仕打ちをしてきたか。
エミリオ皇太子には手に取るように分かった。
いかに女神様の加護を受けられたとはいえ、この王国の神殿ではーー
あなた様を受け入れることは出来かねます。
どうぞ、この神殿より早々に立ち退き下さい」
大神官と国王はその臣下たちに命じ、ミレイアを神殿より放逐させる。
「国王陛下、しかし、魔王討伐はいかがいたしますか?
ミレイア様もその命を受けていられますが?」
大神官が心配そうに問いかける。
「ふむ。
しかし、これほどまでに国内外の賓客が集まった中でもあの蛮行。
仕方あるまい、魔族の国境たるファイガ山脈の付近まで。
あれを囚人として送らせよう。
それで帝国にはーー」
「帝国には新たな巫女を。
大地母神の聖女をですか?
しかし、この二世紀の間、わが神殿の天敵として排除してきた過去が‥‥‥」
「ふうむ。
どうにもならんな。
しかし、あのアンダーソン侯爵家は六世紀ほどの格式のある家柄であろう?
大公国時代以前からの?」
「左様ですが、いまさら大地母神教を厚遇すればーー」
「大公国の再興を図る連中のかっこうのエサ。
神輿になるというわけか」
「左様でございます、陛下」
国王は思案する。
帝国との婚儀には適当な王族を当てれば良い。
あの第二王女はさっさと魔族にでも殺させればいい。
もし、魔王討伐をなせばそれこそ、正式な王族に迎えれる。
「では、あれでいけ」
「あれでございますか?」
「そうだ、だれだ。
この二世紀の間、大地母神の隠れ信徒を消してきた、あれだ」
「かしこまりました」
大神官はそう言うとその場を去り、国王は帝国の来賓に無作法なものをお見せした。
どうかご容赦を、そう言って場を和ませていた時だ。
例のエミリオ皇太子が国王に向かい口を開いた。
「陛下、あの大地母神の加護を受けた聖女はどなたさまですか?」
と。
国王はなにを興味をもったのだ、この若僧は?
そんな嫌に不気味な感触に襲われた。
隣にいた部下にあれは誰だ?
そう耳打ちする。
わざわざ国王が直々に答えることもないからだ。
「あれは、大公国時代以前よりの名家、アンダーソン侯爵家は第一令嬢シェリル様でございます」
そう、側近の一人がエミリオ皇太子に言う。
六世紀も歴史を持つ名家中の名家が、侍女をさせられるとは。
この王国はどうなっているのか。
その側近の地位にいるべきは、あのシェリル様の父上であるのが当たり前だろうに。
この王国が大地母神を信仰していた貴族や、王国が成立する以前の貴族にどのような仕打ちをしてきたか。
エミリオ皇太子には手に取るように分かった。
0
お気に入りに追加
101
あなたにおすすめの小説
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
王太子エンドを迎えたはずのヒロインが今更私の婚約者を攻略しようとしているけどさせません
黒木メイ
恋愛
日本人だった頃の記憶があるクロエ。
でも、この世界が乙女ゲームに似た世界だとは知らなかった。
知ったのはヒロインらしき人物が落とした『攻略ノート』のおかげ。
学園も卒業して、ヒロインは王太子エンドを無事に迎えたはずなんだけど……何故か今になってヒロインが私の婚約者に近づいてきた。
いったい、何を考えているの?!
仕方ない。現実を見せてあげましょう。
と、いうわけでクロエは婚約者であるダニエルに告げた。
「しばらくの間、実家に帰らせていただきます」
突然告げられたクロエ至上主義なダニエルは顔面蒼白。
普段使わない頭を使ってクロエに戻ってきてもらう為に奮闘する。
※わりと見切り発車です。すみません。
※小説家になろう様にも掲載。(7/21異世界転生恋愛日間1位)
蝋燭
悠十
恋愛
教会の鐘が鳴る。
それは、祝福の鐘だ。
今日、世界を救った勇者と、この国の姫が結婚したのだ。
カレンは幸せそうな二人を見て、悲し気に目を伏せた。
彼女は勇者の恋人だった。
あの日、勇者が記憶を失うまでは……
【完】婚約者に、気になる子ができたと言い渡されましたがお好きにどうぞ
さこの
恋愛
私の婚約者ユリシーズ様は、お互いの事を知らないと愛は芽生えないと言った。
そもそもあなたは私のことを何にも知らないでしょうに……。
二十話ほどのお話です。
ゆる設定の完結保証(執筆済)です( .ˬ.)"
ホットランキング入りありがとうございます
2021/08/08
【完結】どうして殺されたのですか?貴方達の愛はもう要りません
たろ
恋愛
処刑されたエリーゼ。
何もしていないのに冤罪で……
死んだと思ったら6歳に戻った。
さっき処刑されたばかりなので、悔しさも怖さも痛さも残ったまま巻き戻った。
絶対に許さない!
今更わたしに優しくしても遅い!
恨みしかない、父親と殿下!
絶対に復讐してやる!
★設定はかなりゆるめです
★あまりシリアスではありません
★よくある話を書いてみたかったんです!!
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
死んで巻き戻りましたが、婚約者の王太子が追いかけて来ます。
拓海のり
恋愛
侯爵令嬢のアリゼは夜会の時に血を吐いて死んだ。しかし、朝起きると時間が巻き戻っていた。二度目は自分に冷たかった婚約者の王太子フランソワや、王太子にべったりだった侯爵令嬢ジャニーヌのいない隣国に留学したが──。
一万字ちょいの短編です。他サイトにも投稿しています。
残酷表現がありますのでR15にいたしました。タイトル変更しました。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる