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第一部 朔月の魔女
太陽神の聖女と宵闇の魔女 4
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「愛してはいたさ。
だが、そうしなければ‥‥‥僕は殺されていた。
あの大司教閣下にな?」
「そう、自分の命だけが大事なのですか?
それとも、その行動の先にある想いは誰に向けられていたのですか、殿下?」
「とうとう、旦那様から殿下に格下げか!?
誰だと?
決まっている‥‥‥この国の――」
「王位?
それとも、枢軸連邦への参加?
それともー‥‥‥」
「お前はこの半年間、僕のなにを見てきたんだ。
なあ、シェイラ。
まだ僕たちは夫婦なんだぞ。
仮初の、初夜を過ごす前の状態だがな?」
「大敵は二人、でしたわね、殿下?
処女でなくなった聖女は利用価値が半減する、でしたかしら?
そのエリカのお腹の子供がそれほど大事ですか‥‥‥旦那様」
「聞いて、いたのか‥‥‥」
そりゃあ、聞くでしょう。
目の前であの女は不要だの、手に入れる為にどれほど苦労しかただの。
おまけに夫が他の女に愛を語って入れば‥‥‥
「聞いておりましたよ。
あの扉を破壊したその時から。
まあ、時間を越えれるというのはなかなかに便利ですね、旦那様?
どこから来たかと言われましたが、時間と空間の裂け目をうまく利用すれば時間すら好きにできるのですからたいしたものですわ、神々というのは‥‥‥」
やれやれ、その結果がこの腕を無くした愚かな聖女ですけどね。
嫉妬に駆られたらこうなる、いい勉強になりましたわ。
そう、シェイラはさめざめとした顔でエリカの方をにらんでやる。
「その子供、さてどんな希望になるのでしょうね?
楽しみですわ、大司教閣下にはきちんと伝えておきましたから」
「なん、だと!?
お前、何を‥‥‥」
あらら、顔が真っ青ですね、王太子殿下。
救国の英雄が情けない。
そう、シェイラは侮蔑の目を向けてやる。
「何と言われましても。
さんざん、わたしを好き勝手に操って来たんですから。
その罪と罰は受けていただかなければ困りますわね、旦那様?
お二人のあの会話をそのまま、大司教閣下にお伝えしただけですわ。
まあ、生き残れるかどうかは貴方達次第かと?」
「このー‥‥‥ッ、悪魔があ!!!」
「ええ、悪魔で結構です。
それよりもそろそろ気づいてくださいよ、殿下?
遅いと思いませんか、この城の騎士たちが来るはずなのに。
誰も来ていないことに」
そう言われリクトは、ハッとなる。
確かに言われてみればー‥‥‥。
「城の者たちには全員、眠って頂きました。
そう、国王夫妻から大司教閣下、そしてー」
「まさか、来賓の各国の方々まで‥‥‥???」
「ええ、正解ですわ、殿下。
全員が人質。
そして、もし何かあれば?」
「追われるのはお前も同じだぞ、シェイラ!?」
はあ、やっぱり頭悪いわ、この王太子殿下。
なんでこんなしょうもない男を好きになったんだろ。
追われるなら、まだサク様の従者にでもなってこの世界から去った方が幸せかも‥‥‥
シェイラはそう思ってしまう。
いろいろと脅しすかして言うことを聞かせようと思っていたけど。
焼き尽くすよりも、いい方法があったことにも気づいてしまっていた。
彼等、親子三人を永遠の牢獄に入れるよりも残酷で素晴らしい復讐の方法を。
「そうね?
でも勘違いしていない、リクト様?
寝ていても、知ることは出来るんですよ?
この会話を夢で見たり、ね?」
「それこそ、魔族の御業ではないか!!
この魔女が!!」
「はあ‥‥‥リクトの相手をするのは疲れたわ。
いい、貴方のいまの話は全部、この寝ている王宮の中にいる人間以外の存在にも伝わっているの。
起きた彼等がどうするか、考えるのね‥‥‥。
それと、もう一つ。
エリカのお腹の子供だけど。
わたしが生かしていくと思ってるの?
ここまで恥をかかされて、黙っているとでも?」
リクトの顔が暗く沈んでしまう。
ここまで言われたら‥‥‥それはつまり。
「呪い、か。
いかにも魔女らしいな。
それだけは許さん、アギト神にこの身の全てを捧げても守り抜く!!」
「その言い様と態度だけは、まさしく救国の英雄ね‥‥‥。
なら守り抜いてみればいいわ。
永遠に続く闇の牢獄に二人揃って幽閉してやるつもりだったけど、そこまで言うならチャンスを上げますわ」
「チャンスだと、お前も追われるというのに‥‥‥???」
「わたしはどこにでも逃げれるのよ、リクト?
そう言ったでしょ、さっきもそうだけど。
時間と空間の狭間に生きれると。
あなたたちがきちんとこの国を大司教閣下の暗躍と諸外国の圧政から守れるなら。
そうね、あと二十年。
その間、きちんと出来ればその子供の命は助けてあげる。
二十年後、見に来るわ。
それがわたしが誰かはわからない。
親子三人、無事に生き延びたければ‥‥‥頑張ることね、英雄として」
「なんたる暴言だ。
そして、拒否すら‥‥‥許さんとはな‥‥‥魔女が!!」
救国の英雄は力なく叫んだ。
シェイラによる最悪の復讐が始まったことを理解しながら――
だが、そうしなければ‥‥‥僕は殺されていた。
あの大司教閣下にな?」
「そう、自分の命だけが大事なのですか?
それとも、その行動の先にある想いは誰に向けられていたのですか、殿下?」
「とうとう、旦那様から殿下に格下げか!?
誰だと?
決まっている‥‥‥この国の――」
「王位?
それとも、枢軸連邦への参加?
それともー‥‥‥」
「お前はこの半年間、僕のなにを見てきたんだ。
なあ、シェイラ。
まだ僕たちは夫婦なんだぞ。
仮初の、初夜を過ごす前の状態だがな?」
「大敵は二人、でしたわね、殿下?
処女でなくなった聖女は利用価値が半減する、でしたかしら?
そのエリカのお腹の子供がそれほど大事ですか‥‥‥旦那様」
「聞いて、いたのか‥‥‥」
そりゃあ、聞くでしょう。
目の前であの女は不要だの、手に入れる為にどれほど苦労しかただの。
おまけに夫が他の女に愛を語って入れば‥‥‥
「聞いておりましたよ。
あの扉を破壊したその時から。
まあ、時間を越えれるというのはなかなかに便利ですね、旦那様?
どこから来たかと言われましたが、時間と空間の裂け目をうまく利用すれば時間すら好きにできるのですからたいしたものですわ、神々というのは‥‥‥」
やれやれ、その結果がこの腕を無くした愚かな聖女ですけどね。
嫉妬に駆られたらこうなる、いい勉強になりましたわ。
そう、シェイラはさめざめとした顔でエリカの方をにらんでやる。
「その子供、さてどんな希望になるのでしょうね?
楽しみですわ、大司教閣下にはきちんと伝えておきましたから」
「なん、だと!?
お前、何を‥‥‥」
あらら、顔が真っ青ですね、王太子殿下。
救国の英雄が情けない。
そう、シェイラは侮蔑の目を向けてやる。
「何と言われましても。
さんざん、わたしを好き勝手に操って来たんですから。
その罪と罰は受けていただかなければ困りますわね、旦那様?
お二人のあの会話をそのまま、大司教閣下にお伝えしただけですわ。
まあ、生き残れるかどうかは貴方達次第かと?」
「このー‥‥‥ッ、悪魔があ!!!」
「ええ、悪魔で結構です。
それよりもそろそろ気づいてくださいよ、殿下?
遅いと思いませんか、この城の騎士たちが来るはずなのに。
誰も来ていないことに」
そう言われリクトは、ハッとなる。
確かに言われてみればー‥‥‥。
「城の者たちには全員、眠って頂きました。
そう、国王夫妻から大司教閣下、そしてー」
「まさか、来賓の各国の方々まで‥‥‥???」
「ええ、正解ですわ、殿下。
全員が人質。
そして、もし何かあれば?」
「追われるのはお前も同じだぞ、シェイラ!?」
はあ、やっぱり頭悪いわ、この王太子殿下。
なんでこんなしょうもない男を好きになったんだろ。
追われるなら、まだサク様の従者にでもなってこの世界から去った方が幸せかも‥‥‥
シェイラはそう思ってしまう。
いろいろと脅しすかして言うことを聞かせようと思っていたけど。
焼き尽くすよりも、いい方法があったことにも気づいてしまっていた。
彼等、親子三人を永遠の牢獄に入れるよりも残酷で素晴らしい復讐の方法を。
「そうね?
でも勘違いしていない、リクト様?
寝ていても、知ることは出来るんですよ?
この会話を夢で見たり、ね?」
「それこそ、魔族の御業ではないか!!
この魔女が!!」
「はあ‥‥‥リクトの相手をするのは疲れたわ。
いい、貴方のいまの話は全部、この寝ている王宮の中にいる人間以外の存在にも伝わっているの。
起きた彼等がどうするか、考えるのね‥‥‥。
それと、もう一つ。
エリカのお腹の子供だけど。
わたしが生かしていくと思ってるの?
ここまで恥をかかされて、黙っているとでも?」
リクトの顔が暗く沈んでしまう。
ここまで言われたら‥‥‥それはつまり。
「呪い、か。
いかにも魔女らしいな。
それだけは許さん、アギト神にこの身の全てを捧げても守り抜く!!」
「その言い様と態度だけは、まさしく救国の英雄ね‥‥‥。
なら守り抜いてみればいいわ。
永遠に続く闇の牢獄に二人揃って幽閉してやるつもりだったけど、そこまで言うならチャンスを上げますわ」
「チャンスだと、お前も追われるというのに‥‥‥???」
「わたしはどこにでも逃げれるのよ、リクト?
そう言ったでしょ、さっきもそうだけど。
時間と空間の狭間に生きれると。
あなたたちがきちんとこの国を大司教閣下の暗躍と諸外国の圧政から守れるなら。
そうね、あと二十年。
その間、きちんと出来ればその子供の命は助けてあげる。
二十年後、見に来るわ。
それがわたしが誰かはわからない。
親子三人、無事に生き延びたければ‥‥‥頑張ることね、英雄として」
「なんたる暴言だ。
そして、拒否すら‥‥‥許さんとはな‥‥‥魔女が!!」
救国の英雄は力なく叫んだ。
シェイラによる最悪の復讐が始まったことを理解しながら――
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