16 / 20
第二話 ハッシュバルの森
9
しおりを挟む案内されたのは地下にすこしばかり深く潜った場所だった。
このラハールは帝国時代から存在する。
その時代の地下遺跡を利用している、とロッソは語る。
「さあ、どうぞ」
通された部屋は守っている、とロッソが言う通り、数人の歩き方や身のこなしからそれなりに手練れとわかる獣人数人が、部屋の周りを固めていた。
「あんた」
と、ロッソと共に降りてきたリザをアリシアは見下ろす。
これは身長差があるから仕方ない。
「なんでしょう?」
「あの連中はあんたより、強いのかい?」
リザはすこしばかり考えて口を開いた。
「まともにやり合うなら、私の負けかと。
暗殺なら、私かと」
「ふうん……、男の子が女の子のフリをして。
声変わりもしてない。まだ12歳くらいかい?」
「……十三です」
「ふん。なら、暗殺の技を磨くより、あんたは槍でも深く習うべきだね」
「槍……?」
自分の暗殺の腕は未熟だと言われた気がしてリザは不機嫌な顔になる。
「さっき掴んだ限りじゃ、あんたはあたしよりもいい体格になる。
ああ、これは言い方が悪いね。あんたは短剣を得意としてるだろ?」
「そうですけど……」
「もうじき、そうだね。
身長ならあたしどころか、ロッソの旦那より低い程度にはなるはずだ。
暗殺者には不向きな体格になる。
それなら、槍の方がいい。
あんたは界が広い」
「界、ですか?」
どう言い表したものか。
「間合い、と言い換えたほうがいいかもしれないね。
剣よりは広い。かといって体術では広すぎる。
やるなら、槍や矛がいいだろうね」
「あの魔法のような技を習いたいと思いますけど、それなら……」
あの時。
手首を掴まれた後に、刃先に首筋を近づけるまで。
どれもが自分の意思ではなかった。
まるで魔法で操られているような、そんな感覚だった。
リザはそれを言いたいのだろう。
「あれは魔法じゃない。
技でもないけどねえ。
まあ、いまは見ようじゃないか。
もう一人のダークエルフとやらを」
話をしているうちに、その被害者のダークエルフが横たわる部屋の中に入る。
「おいおい……。
なんだい、これは」
アリシアは言葉を失う。
そこにいたのは、両目を金糸で縫い付けられ、しゃべろうと口を開いたらすべての歯と舌が無い。
そんなアリシアの同族だった。
「拷問を受けたにしても、だ。
おかしいんだよ」
と、ロッソは言う。
「見つけた時、手足と首に巻かれていた枷と鎖はそこそこ上物だった。
それにな」
と、首輪をしていた被害者のダークエルフの首筋を指差す。
そこには焼き印がされていた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。



好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

竜王の花嫁は番じゃない。
豆狸
恋愛
「……だから申し上げましたのに。私は貴方の番(つがい)などではないと。私はなんの衝動も感じていないと。私には……愛する婚約者がいるのだと……」
シンシアの瞳に涙はない。もう涸れ果ててしまっているのだ。
──番じゃないと叫んでも聞いてもらえなかった花嫁の話です。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる