伝説の湖畔の塔と三匹のエルフたち

星ふくろう

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沙雪が消えた夜

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 へーそうなんだ、と沙雪はよくわからないという顔ををする。
「まあ、これで。
 今から行く異世界で少しばかり強く、いろんな能力も借りなくて使えるようになる。ただし」
 思考。つまり知能のレベルはいまのままだ。
 これだけは変えれない」
「なんで?
 頭よくなりたいよ?」
「それをすると、性格も何もかもが変わるから。
 知性の本質が変わるから。ボクはそれは嫌なんだ」
「知能指数高くなりたいのに……」 
「IQが高いのと、性質が良いのは別だよ。
 関連もあるけど。信念はまた別。まあ、いいや。ややこしい話は終わろう」
 ほら、とブラウニーは前方を指差す。
「これから、ボクは圭祐を連れに行って、必ず、さきちゃんを迎えに行く。
 この世界がどこにあるかは、いまのボクではわからないから数千年かかるかもしれない」
「それ、さき、死ぬんじゃない?」
 不安そうに沙雪が両手を見る。
「だから、さっきのシステムを作ったんでしょ?
 時間が違う位相にいるんだから、ほぼ不死身だし寿命も取らないよ」
「あれ、神様みたいじゃない、それ?」
「だから、少しだけ沙雪TUEEEなんじゃないか」
「ふーん。わかった。
 さき、待ってるよ。でもー、ねえ、聞いていい?」
「ん?」
「なんで、ブーちゃん、神様より偉いのに力がいまはないの?」
「それはーうーん……」
「本当は、ものすごく低レベルな妖怪とか?」
「くあっ!?
 本当に失礼だなあ。違うよ。
 圭祐が同じ存在だからだよ。
 泡にもし意思があって、自分を作れる存在がいたらどう思う?」

 どうって、難しいなあ。と沙雪は考える。
 作れるということは壊せるということだろうか、とブラウニ-に言ってみた。
「そう。
 あいつはいま世界に嫌われてるんだ。
 だから、ボクが守ってる。それに使う労力が大きいんだよ。
 あいつがボクの言葉を聞かないから」
「代わりに小説で書いてたりして?」
「かもしれないな」
 ブラウニ-は言えない。
 それに沙雪が巻き込まれた結果が、今だなんてことは。
 口が裂けても言えない。
「ああ、そうだ。
 これ」
 と、どこから取り出したのか彼女の旅行バックなどの今回の度に持ち込んだ私物のカバン類は出てきた。
「これ、くれても持ち運びできないよ?」
「違う位相にいるんだから。
 そこで管理すればいいんじゃないかな?」
 うーん?
 沙雪は迷い、
「ど〇えもんの、四次元ポケットみたいなもの?」
「まあ、似たようなもの……だけど、あまり詰め込まないように。
 壁で仕切られてるわけじゃない。まあ、一応、フィールドで囲っておこうか……」
 といい、沙雪の後頭部あたりに手をやると何かを動かす動作をする。
「そうだなあ、日本の面積分くらいの間仕切りはしておいたから。
 人間の感覚だと探すの時間かかる。
 パソコンで検索するような感じで考えたら早く見つかると思うよ」
 沙雪には理解できない。
 まあ、慣れだね。 
 そう言い、ブラウニ-はさあ、そろそろだ。
 と、沙雪に言う。
 光が沙雪を覆いつくし、彼女はまた意識を失っていく。

 --必ず戻るから。必ず。待っててくれ、さきちゃん。

 金色の猫の、いつになるともしれない迎えを待たなければならないという思いとともにその声を耳に残して。
 沙雪は異世界へと移動した。 



 



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