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第四話

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 しかし、天罰というのはどこかからやってくるものですから。
 我が主たる女神様が天界からそっと下した一言がこの耳に入るまで抑えようのない怒りの最中にいた私も、これから起こる結果次第では、妹を許すことにしたのです。

「そんなに言うなら、この姉を断罪してみてはどう、アテッサ」
「は? だん、ざい……? 何をせよ、と」
「簡単です。あなたが神に選ばれるかどうかを試してみればいいわ」
「はあ?」

 馬鹿なの、この姉は? 
 妹の顔にはそんな侮蔑がありありと浮かんでいました。
 普段なら我慢の限界がやってくる頃ですが、今回は別。
 やることは簡単よ、と私は妹の背後にある祭壇と、そこに設置されたある物を指さします。

「あれよ」
「あれって――神託の水晶球……」
「そう。触れてみたら?」
「はっ、なにを怪しげなことを言われますの、お姉様。わたくしのような一般の貴族が触れれば、神の怒りの罰が下る……はず?」

 はず、で小首をかしげると後ろでも何か動いた気配。
 見かえると、若い男性から老爺に至るまでその視線は妹が私の陰から出した顔を見ようとしてどよめいたのがその正体のよう。
 本当に男を惑わす悪魔のような女ぶりに姉としては呆れるしかありません。

「心配しなくても、私が一緒にいるから触ってお叱りはありませんよ」
「……ほんっとう!?」
「本当。出来ればさっさとその鬱陶しい顔を見たくないから。さっさとやりなさい」
「ひっ!?」

 ほんの少しばかり女神様の力を利用してしまったかも。
 人の身では耐え切るのには難しいかもしれない。
 それくらいの『威圧』を妹の心に叩きつけてしまいました。
 
「で、やるの、やらないの?」
「それで女神様の恩寵が頂けるなら――やるわっ!」
「あ、そう」

 誰も恩寵を与える、なんて言ってないけどね。
 ただ私の存在を悪と決めつけるアテッサにとっては、思い通りにならない姉を断罪して更なる好きな物を手に入れる絶好の機会と思い込んだ様子。

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