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第三話
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「いい、アテッサ。あなたが欲しがってあげたそれら、指輪だったり服だったり、なんでもいいですが。それらは私が女神様の司祭だったり神官長になったり、神殿の持つ地位があったから叶ったものなのです」
「だって……変ですよ、それ?」
「何が変なのですか」
「お姉様が手にした物を妹のわたくしに譲ることの何がおかしいのですか?」
「あげられる物は譲りましたよ。私が身に付けていなければ効果を表さない護符などもあなたが欲しがって止まないから、特別にあげたではないですか」
「それなら!」
と、愚妹は名案を思い付いたかのように顔をぱあっと明るくさせて言いやがりました。
最高の名案だというかのように。
「お姉様が身に付けていなければ効果を成さない護符でも、わたくしにくださるのですから! 聖女の地位ですらも譲っていただけるはずです!」
……と。
ついでにふふんっ、と鼻を高くして付け加えてきやがりました。
「わたくしは眉目秀麗、どこをとっても完璧無比な美しさを誇りますが、しかし……」
「なっ。なんですか、アネット……」
「お姉様は王国でも最下層の民が持つ黒髪に黒目。幼い頃につけた左眼の焼け跡とどれ一つとっても美しさと高貴さ、とは無縁の存在ですから」
「その心の醜さを見抜くような誰かに出会った時、あなたの立場や評価はすべて失われるかもしれませんね、アテッサ。いい加減になさい」
「嫌ですわ、負け犬になるなんて――耐えられませんもの。ああ、違いましたわ。正しい評価を奪っていく泥棒猫からそれを奪い返すことは正しいことだと思いますの。お姉様はどう思われますか?」
「あなたがっ! 今すぐ滅びればいいと思っているわ」
「……まあ、怖い……」
傍らから見れば姉妹の仲良いひそひそ話。
その内側を覗けばこんなどうしようもない泥沼のような会話だと、誰が想像するでしょう。
居並ぶ諸侯や有力者たちの視線はもちろん、本日の主役たる私にではなく妹に注がれていくのは看過できないものがありましたが……。
「だって……変ですよ、それ?」
「何が変なのですか」
「お姉様が手にした物を妹のわたくしに譲ることの何がおかしいのですか?」
「あげられる物は譲りましたよ。私が身に付けていなければ効果を表さない護符などもあなたが欲しがって止まないから、特別にあげたではないですか」
「それなら!」
と、愚妹は名案を思い付いたかのように顔をぱあっと明るくさせて言いやがりました。
最高の名案だというかのように。
「お姉様が身に付けていなければ効果を成さない護符でも、わたくしにくださるのですから! 聖女の地位ですらも譲っていただけるはずです!」
……と。
ついでにふふんっ、と鼻を高くして付け加えてきやがりました。
「わたくしは眉目秀麗、どこをとっても完璧無比な美しさを誇りますが、しかし……」
「なっ。なんですか、アネット……」
「お姉様は王国でも最下層の民が持つ黒髪に黒目。幼い頃につけた左眼の焼け跡とどれ一つとっても美しさと高貴さ、とは無縁の存在ですから」
「その心の醜さを見抜くような誰かに出会った時、あなたの立場や評価はすべて失われるかもしれませんね、アテッサ。いい加減になさい」
「嫌ですわ、負け犬になるなんて――耐えられませんもの。ああ、違いましたわ。正しい評価を奪っていく泥棒猫からそれを奪い返すことは正しいことだと思いますの。お姉様はどう思われますか?」
「あなたがっ! 今すぐ滅びればいいと思っているわ」
「……まあ、怖い……」
傍らから見れば姉妹の仲良いひそひそ話。
その内側を覗けばこんなどうしようもない泥沼のような会話だと、誰が想像するでしょう。
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